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「魔石の状態も良いですね。そしたらクエストの報酬に上乗せしてお支払いします。一度ブロッサムをお預かりしますね。」
ブロッサムをチェーンごと預けると、小瓶と砂時計を外されて……何だろう、ブロッサム本体を箱のようなものの上に置いたら光った。
「手続きが終わりました。これにて本クエストが完了となります。報酬は隣の受け取りカウンターでお受け取りいただけます。」
ブロッサムが返される。さっきのあれは何だろう。人も居ないので、思い切って尋ねてみた。
「あの、さっきブロッサムに何かされていましたが……?」
「こちらはブロッサムにクエスト成績や査定状況など、ブロッサムに関する情報を記録する魔道具です。受付担当者が魔力を込め、お預かりしたブロッサムに記録ができます。書類のやり取りを介さなくても、その人のブロッサムに関する情報がどこのメリでも照会、記録ができるのです。こちらのカウンターはブロッサムに関する為のものですが、他のカウンターにも置かれていますよ。」
「そうなんですね。すごく便利!」
こちらの世界のネットワークシステムといったところかな。世界の理が違うって面白い。
思っていた以上にはしゃいだ声になってしまい、微笑ましい、と温かい目で見られた。事情を知っている人ではあるけど恥ずかしいな。気をつけよう。
アスターからは、次のクエストは受けずに帰るよう言われているので、報酬を受け取ってメリを出た。
『お帰りなさい。』
「ただいま。何もなさそうで良かった。」
フローラは寝ているみたい。それならそっとしておこう。
ふと視線を感じて辺りを見回すと、少し離れた所にアスターとリラソラを見つけた。ルルーと一緒に近づくと、どうやら私を待っていてくれたみたいだった。
「ただいまー。ちゃんと完了しました!」
『ねぇねお疲れさま。』
『ねぇね頑張ったね!』
「お疲れ様。初めてとは言え、ちゃんと出来たな。よく頑張った。」
「ありがと。」
アスター抱っこ!と甘えるソラをアスターが抱き上げ、私はリラを抱っこした。
「想定より早く終わったな。空が明るいうちには終わると思っていたが、まさか昼前に終わるとはな。」
『ねぇねすごいね!』
リラが無言で前脚を私の頭にもってきて、てしてしとしたのを見てソラも真似をした。もしかして、頭撫でてくれた……?
『ねぇねいいこー。』
うぐぅっ!
危ない、あまりの可愛さに叫ぶところだった。喉まで出かかった叫びを何とかやり過ごした。
「リラソラ可愛い!生きてて良かった!」
「ユリシア、声に出てるぞ。」
『ねぇね叫ばないで。』
「ごめん。」
どうやら心の声はダダ漏れでした。




