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「居たね。今度はどうしようかな。」
距離を保ち、気付かれないようどうやって攻撃するか考える。
炎を飛ばしたり、雷を直撃させて魔物を狩る事は簡単だけど、クエストの内容には素材回収がある。つまり、綺麗な状態を保ったまま倒さなければ意味が無いのだ。これが単に討伐だけなら、その倒し方の方が楽なのだけど。
因みに、今回回収する素材は尻尾である。
「フローラ、私と同じ魔法使ってみよっか。」
『シアねぇとおなじ魔法?』
「そう。私が風魔法で球を作るから、同じように作ってみて。フローラは魔力を抑えてね。これも大事な訓練だよ。」
『はーい!』
風属性の魔力で塊を作り、投げやすいようにボール状に生成する。フローラも真似をして、自分の頭と同じくらいの球を作った。
「うん、上手!そしたらこれを投げるよ。魔物の頭を狙ってね。」
『はーい!』
ここから魔物の居る地点まではそこそこな距離がある。私は更に風魔法でコントロールした方が良さそう。
魔物の頭に照準を合わせて、風魔法で飛ばした。
「お、当たった。」
どうやら一撃で仕留められたよう。
フローラは私の様子を見つめており、可愛らしく『えいっ!』という掛け声と共にもふもふの尻尾で球を飛ばした。
……私の倍以上速度があったけど。
こちらも命中し、無事2体とも仕留められた。
「フローラ、よくできました!」
『わーい!』
フローラを抱っこして魔物に近づくと、綺麗な状態で倒れていた。やったね。
「そしたら素材と魔石を回収して、メリで報告してクエスト終了だね。」
フローラは人目につかないようにしないといけないので、ルルーを呼んで籠の中に入ってもらった。抱っこしていた時ははしゃいでいたけど、疲れたのか直ぐにうとうとしだした。
「ルルー、お外でフローラと一緒に待っててね。何かあったら呼んで。」
『分かりました。いってらっしゃい。』
ルルーに見送られメリに入る。人は殆どおらず、クエストカウンターには昨日と同じスタッフさんが居たので、迷わずそこに向かった。
「あら、ユリシア様、お疲れ様です。お早かったですね。」
「ありがとうございます。やってみたらそんなに難しくなかったのが幸いでした。」
「ただの討伐より、素材回収がある方が難しいのですよ。」
柔らかな笑みを浮かべながらそう言われる。やっぱり倒すだけの方が簡単なんだ。
回収してきた魔物の尻尾を出して確認してもらうと、少し驚かれた。
「とっても綺麗な状態ですね……。こう言った素材回収が初めての方は、傷があったり欠けていたりするのです。クエストとしては問題無いですが価値が下がるので、報酬が中々上がらないのですよ。そうするとブロッサムの査定にも響きます。」
「そうなんですね……。素材回収の時は綺麗な状態で回収した方が良いのですね。」
「その通りです。そういえば、魔石は回収されていますか?」
「はい。」
魔石はきちんと5体分回収しておいた。クエスト中に魔石も回収した場合、わざわざ買取カウンターまで行かなくても、クエスト報告時に提示すればその分報酬に上乗せされ、ブロッサム査定に入れてもらえるそうだ。