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「服や装備も、どんなものがあるか一通り見ておくと良いだろう。村人達に馴染むことも時には必要だからな。」
「うん、分かった。」
この世界のファッションも気になるし、装備の勉強にもなるからね。
辺りを見ながら歩いていると、アスターが教えてくれた。
「この村はイルリスの森や国境が近いから、他の村に比べて冒険家や商人の出入りが多いんだ。だから色んな服装の人が多いのだが、大半は俺達の様に旅装だな。」
「そうなんだ。……確かに、そうだね。」
私達の様にローブを羽織っている人や、装備がしっかりしている人が多く、その中に混じって軽装の人が子連れだったりローブの集団に話しかけて談笑していたりと、村人であろう人達は区別がしやすかった。
「ここが服屋だ。入ってみようか。」
中に入ると、それなりに人が居た。店内は女性向け、男性向け、子供向けと分かれており、奥の方にフィッティングルームがあるようだ。見たところ村人達が利用する店舗だろうと見当がついた。ただ、気になったことがある。
外で見渡していた時にも思っていたけれど、女性はワンピースかブラウスにジャンパースカートで、男性はシャツにサスペンダーもしくはベルトにチノパン、という格好が殆どだった。店内に置いてある商品もそれは変わらない。しかも基本の形は全て同じで、細かいディテールが異なっているだけだ。この村がそういう特徴があるのか、それともこの世界全体でこういうものなのかは分からないけど。
元々地球にいた頃、クラシカル系のファッションを好んでいた。だから嫌いではないけれどあまりにも形が同じすぎてデザイン性に欠けている。機能性重視だ村の特徴だと言われてしまえばそれまでなのだが、もう少し違いがあっても良いと思う。
アスターの言う色んな服装は、村人達の事ではなく、外部から来た者達を指していることがよく分かった。
「……こういう感じなのね。」
「村人達向けの店だな。外部からの訪問者は求めるものが違うから別の店で買っている。」
「成程。」
「この村は訪問者向けの商売に力を入れているようだ。村人との区別もつきやすいだろう?」
「そうね。新参者の私もそれはすぐに分かったよ。」
どうやら私の見解は間違っていなかったらしい。
ブラウスを手に取ると、布はそこそこ厚手だけど程よく伸縮性があり動きやすそうで、縫製もしっかりしている。ワンピースやジャンパースカートも、確かにデザイン性には欠けるが使い勝手は抜群に良さそうだ。
参考までに男性ものも見てみたが、感想はほぼ同じである。
物流があり素材が豊富だからなのか、全体的にデザイン性を除けばかなり質が高いと思った。
「うん、勉強になった。」
「それは良かった。」
特に買うものはなく店を出たが、私は満足していた。