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メリを中心に、三方向へ道が伸びている。私達が来たイルリスの森がある方向は宿屋が多いらしく、今進んでいる道は武器屋や薬屋などお店が並んでいる。もう一方は居住区らしく、私達のような外から来た者は出来るだけ立ち入らないようにするのだと教えられた。
「アスター、随分詳しいのね。」
「この国は一度来たことがあるからな。数日だけの滞在だが、俺も索敵が一応使えるから地図代わりにしている。その時にマッピングはしておいたんだ。」
「来たことあったんだ。しかもアスターもマッピング出来たんだね。」
「索敵は訓練が必要だが、マッピングならそれ程難しくないからな。ただし。」
ユリシアは人前で絶対やるなよ?
と、笑顔で言われた。目は笑っていなかった。
『ねぇねの索敵は精度が高すぎて、国家侵略も簡単に出来ちゃうからね。』
リラの言葉に血の気が引く。それだけで利用価値ありすぎでしょう。私そんなに恐ろしい能力身につけちゃったのか。
要は私の使い方次第な訳だけど、慣れない間はアスターとリラの言う事を聞いておこう。
「そう言えば、お店がちゃんと建物の中にあるんだね。異世界って屋台とか多いイメージあったから。」
「そうだな、一応村によって特色はあるが、店構えは殆ど変わらないだろう。一番は防犯対策だろうな。」
「成程、それは理解できるかも。向こうでも屋台とかはあったけど、似たような感じかも。」
割と見慣れている光景に少し安心した。場所によっては露店が並んでいるらしいけど、それは村の規模次第で、この村は比較的大きいのでこうして店を建てることが出来るのではないか、というアスターの見解だった。
大きなアーチを潜り抜けると空き地があった。
「よし、ここでいいか。」
「はーい。じゃあコテージ出すね。」
小さなカバンから人が住める程の大きさのものが出てくる光景ってやっぱり不思議だし、慣れないなぁ。
「ただいまぁ。」
「おかえり。ただいま。」
「おかえりー。」
皆んなで決めたルールがあって、ただいまとおかえりを言い合う事だ。コミュニケーションにもなるし、誰かと過ごす事に慣れないとだからね。
リラ達はほっぺの辺りをお互いくっつけ合うことで挨拶にしている。発案者は私だ。めちゃくちゃ可愛い。
そんな光景に癒されつつ、アスターと予定の確認をする。身分証の発行と村の中の散策だ。身分証は作成に少し時間がかかるようだけど、その日のうちに受け取れるらしい。
「今回作る身分証は、仮のやつなんだ。ユリシアの出自が複雑だからな。本物は俺の出身国に行ってからで問題ないだろう。冒険家になる者なら、自身の出身国でなくても身分証が作れるようになっている。取り敢えず冒険家として身分証を発行して、本物を作る時にまた考えれば良い。」
「そうなんだ。」
「冒険家なら、基本仕事は自由に選べる。但し、専門の職業に比べて報酬が少ないから、各地にあるクエストを受けるんだ。クエストは各地のメリにあるクエストカウンターで受けられる。」




