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自作の事典をアスターに見せながら、あれが欲しいだの色々と言いながら、採取をしつつ進んで行く。
「その本は見慣れない書式で書かれているな。どうしたんだ?」
「これ?この本は私の自作の事典なの。スキルを駆使して作った力作だよ。この本は植物について書いてあって、他にも遭遇した魔物や生き物を纏めた本もあるよ。」
「成程……、ユリシアが作ったのか。とても分かり易くて見やすい。それにこんなに綺麗な絵も描けるのか。」
「ううん、絵は描いてないよ。写真……って通じる?その仕組みをスキルを使って再現したんだ。」
「写真はこの世界にもあるが、普及はしていないな。別の国で見せてもらったきりだ。」
「そうなのね……。これも秘匿すべきかな。」
「その方が良いだろうな。」
私のスキルの使い方は、そもそもそんな発想にならないので、一般的にはあり得ないそうだ。
アスター曰く、スキルの研究者なんかは喜んで研究するだろう、との事だ。私もスキルの解明は良いと思うが、自分が実験台になるのは御免だ。私は気ままな旅をご所望なのである。
アスターに色々と教えてもらいながら、のんびりと進む。こんなに平和で(たまに魔物に遭遇するけど)のんびりした時間は、地球にいた頃ではあり得なかった。毎日職場と自宅の往復に、休みの日は体力や精神力回復の為にほぼ寝て過ごしていたので、楽しみなんて殆ど無いに等しく、これが自由か、と満喫しているのである。
「にしても、ユリシアの髪と瞳は珍しい色だな。彼方の世界でもそうだったのか?」
あ、その質問はデジャヴを感じる。白虎にも聞かれたな。
「ううん、元は黒髪にダークブラウンの瞳だったんだけど、こっちに来てから変化したの。リラとソラ曰く、本来の私の姿に戻ったんだって。髪色は染色で自由に変えられるからこういう色にもできたけど、元の世界でも今の私の様な瞳の色は希少だったよ。」
「そうなのか。この世界では逆に黒髪が希少と言えるな。」
何だろう、地球にいた頃色んな異世界ものの小説とか読んでいたけど、黒髪って異世界では良くも悪くも希少扱いされていたんだよね。この世界でもそうなのか。
「国にもよるが、髪や瞳の色は得意とする属性や身分によって違いが出る事が多いんだ。俺の生まれた国では、特に魔法の属性によって髪色に違いが出ていたな。リラとソラから教わっていると思うが魔力の色と似ている。炎は赤系統、水は青系統、風は緑系統、雷は黄色系統といった具合に色が出て、特に貴族に多い。家門で代々受け継がれていたりするから、一概にこう、とは言えないけどな。最も多いのはダークブラウンだろう。」
そうなんだ。そうすると、アスターの髪色もかなり珍しいのではないかな。だから色を変えていたとか?
「成程。私からしたら生まれつきでそんなに色んな色がある方が珍しいと感じるのよね。アスターの元の髪色も、珍しい気がするのだけど。」
「そうだな。銀髪や金髪は、どこの国でも珍しいだろうな。ある国では王侯貴族にしか見られない色でもあるし、また別の国では治癒魔法が使える者に現れる色だったりと、これもまた決まっていないから何とも言えないがな。俺の場合、少々面倒な立場なので、魔法で髪色を変えている。」
「そうなんだ。やっぱり特殊な色ではあるのね。」
面倒な立場か。王侯貴族とかなのな。
「ユリシアの髪色こそ、隠しておいた方がいいだろうな。後で色の変え方を教えるから、外では変えていた方が良い。」
「分かった。」
私の場合は、何だろう?身分か全属性使える事辺りが関係していそうだし、これだけ色々髪色について詳しく話されるって、何かありそうだし。取り敢えず、アスターの言うことに従っておくべきだろう。
お知らせ
活動報告でも更新情報をアップしておりましたが、本日より更新情報は私のXに絞って配信することとなりました。
詳細は本日更新の活動報告をご覧ください。




