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一部ルビを追加しました。(本文の内容は変更ありません。)
明け方。
『ねぇね、起きて。誰か近くにいる。』
「ん……。誰だろう?」
『ソラが今玄関で確認してる。ドアを開けて。』
「分かった。リラは此処でフローラを見てて。」
リラに起こされて目が覚める。まだ陽が登り始めたばかりで、普段はまだ夢の中にいる時間だった。
取り敢えずサッと着替えて念の為ローブを羽織り、下へ降りるとソラと白虎が玄関前に居た。
「遅くなってごめんね。」
『構わぬよ。娘はまだ眠っているようだな。』
「ええ。リラに託して来た。」
『ねぇね、人間の気配だよ。悪い感じはしないけど気を付けて。』
「分かった。」
この世界で初めて会う事になる人間だ。実はかなり怖い。
「リラの結界も抜けられたのね。」
窓から少し見えたが、馬に乗っているようだ。
人間自体は足元しか見えないが、武装はそこそこしっかりしているように感じた。
コンコンッ
玄関をノックされる。
ソラと白虎に下がるよう念話で伝えて、ドアを開けた。
「……はい。」
「こんな所に人が住んでいるとは思わなかったな。」
私からしたらとても長身の男性だ。180近くはありそう。更に大剣を背負っており、体格も良いと伺える。
フードの隙間から見えた髪色はダークブラウンで、深海のような綺麗な青い瞳だった。
「あの、何か御用でしょうか?」
久しぶりの人間との会話なので、めちゃくちゃ緊張している。怖い、逃げ出したい……。
精一杯の笑顔で対応するも、考えが伝わったのか、苦笑いされた。
「すまない、怖がらせるつもりはなかったんだ。ただ、この森は誰も居ない筈なのに家があった事に驚いてな。」
「そうですか。」
今度は穏やかに微笑み、頭を下げられる。
何だろう。
「すまないが、馬をここで暫く休ませたい。君は何もしなくて良いのだが、構わないだろうか?」
長時間の乗馬だったのかな。それくらいなら大丈夫だろう。ソラやリラが特に警戒もせず大丈夫と言っている。
「それくらいでしたら大丈夫ですよ。こちらへどうぞ。」
外へ案内し、馬を繋いでもらう。その間に水とおやつ代わりに果物と野菜を数種類用意した。馬もかなりの大きさで、地球に居た頃には見た事が無い気がする。体格良い人が乗るから馬も大きいんだろうね。
「宜しければ、こちらもどうぞ。この子が食べられそうな物があるといいのだけど。」
「ああ、ありがとう。とても助かる。何でも食べられるから、ここへ置いてもらえるか?」
「分かりました。」
示された場所に置き、馬に声をかける。もしかしたら通じるかもしれないからね。
「どうぞ、ゆっくり休んでいってね。」
『ありがとうございます。』
とても丁寧で、落ち着いた声色でお礼を念話で返してくれた。通じるんだね。
「……此奴がこんなに落ち着いて、しかも懐いているようなそぶりを見せるとは珍しいな。」
「そうなのですか?とても良い子ですよ。」
「……そうか。」
何やら難しそうな表情をしている男性の奥で、ソラと白虎も同じような顔をしている。
……何かまずいことをしちゃったかな。
一先ずどうぞ、と男性をコテージに案内する。何か目的があってこの辺りに来たのかもしれないけど、どうなんだろう。