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一部ルビを追加しました。(本文の内容は変更ありません。)
リラとソラは、地球にいた頃人間の年齢に換算すると五十歳前後だった。今はもう年齢換算は難しくて出来ないだろう。なにせ女神の御使いって言われているみたいだし。ただ、向こうよりは若くなっている気がする。
子猫と子犬の戯れはただひたすら可愛く、急遽作ったボールを投げてやると必死に追いかけている。
『時にユリシアよ、これからどうするのだ?』
「そうね、今はリラとソラから色々と教わっているけれど、その先は何も決まっていないかな。このまま此処で暮らせるならそれでも良いけど、折角ならこの世界を巡ってみるのも良いかもね。」
『其方にとっては帰って来たとは言え、未知の世界だからな。旅するのも良かろう。』
「貴方もそう思う?未知の世界って、怖いけど憧れがあったの。折角なら楽しみたいもの。」
『ねぇねには、私たちが生きてきたこの世界をたくさん知ってほしいな。』
あら、リラはお話聞いていたのね。
『もう地球に戻ることはできないけど、ねぇねはこの世界、きっと気にいるよ。』
何故だろう、リラがそう言うなら、きっとそうだって確信が持てる。
……うん、決めた。
暫くはこの辺りでトレーニングを兼ねて探索をして、頃合いを見て世界中を旅してみよう。
「そっか、それは楽しみだね。」
ソラにも伝わったのか、私に飛びつき『ねぇねと色んなところに行きたいと思ってた!』と言った。
そう言えば、この子達と出掛けるなんて、地球じゃ出来なかったもんね。近所の散歩くらいだったから。
『ユリシア、旅に出ると決めたのか。』
「うん。」
『そうか。ならば旅に出る時は娘も共に行かせてはくれぬか?』
「え?良いの?」
『娘はまだ何も知らぬ。これも何かの縁であろう。我も時折会いに行くのでな。』
何かの縁、確かにその通りだ。
元々この世界で暮らしていたら、白虎に出逢う、なんて中々無いんじゃないかな。あくまでも推測でしかないけど。
「分かった。ただ、私はまだこの世界に来たばかりでもう暫くはこの森で過ごすから、旅に出るのはもう少し先だよ。」
『構わぬよ。我等も暫くは娘の教育があるのでな。』
白虎はそう言うと、ポンッと一つの耳飾りを出した。白虎の瞳と同じ神秘的な色の石が嵌め込まれ、ブレスレットと良く似た装飾が施されている。
『我の加護を込めてある。これでいつでも我と連絡が取れるから、身につけておくとよかろう。無論助けが欲しい時も応えよう。』
「ありがとう。」
また凄い物貰ったなあ。
さて、今後の予定も決まったので、先ずはこの森をしっかり探索して、魔法の使い方をマスターして、色々スキルアップしよう。
自分の身は自分で守れるくらいにはなりたい。
白虎も時折来てこの世界のことを色々教えてくれるらしいので、お言葉に甘えてお願いした。
地球に居た頃なんて、旅してみようって考えたことなかった。
同じ事の繰り返しで何も無い、つまらない日々に訪れた、突然の非日常は、まだこの世界に来て数日の私に、久々に「楽しい」って思わせてくれた。
多少の不安はあるけれど、心強い味方もいるし、この世界で過ごすこれからが益々楽しみになった。