19
一部漢字からひらがなに変更しました。(本文の内容は変更ありません。)
ある日、日常になった探索を終えてコテージの目の前まで来ると、何かが玄関前にあった。白い、もふもふ?これは何だろう。
『わぁ、白虎の子どもだ!』
『弱っているみたいだね。』
「白虎、って確か神獣の四神の一つだったような……。でも、弱っているなら手当が先だね。」
どうやら眠っているようで、動く気配はなさそう。今のうちに何とかしてあげられないかな。
『ねぇね、治癒魔法使ってみよう。大丈夫、もう使えるよ。』
そう、探索中に採取で出来た傷を治したりするのに、試してみたら出来たのだ。治癒魔法はどうやら魔力で損傷箇所を補ったりするようなものらしい。
こちらに来て直ぐにリラとソラから説明された、「体力が削られたら魔力で回復できる」という話はどうやらこの治癒魔法もそのうちの一つだったそう。
リラがステータスの説明をしてた時、私は治癒魔法がすぐには使えないと思うと言っていた。探索の道中で練習を進めていくうちに覚えられたのだろうけど、目の前の白虎はかなりの重傷を負っているようだった。
一先ずタオルで身を包み優しく抱き上げ中に入る。
『ねぇね、慧眼で状態が見られない?』
「やってみるね。」
慧眼は使っているうちに、どんな状態か分かるようになった。悪くなっている所はその場所が黒いモヤのようなものが掛かって見えるようになったからだ。もしかしたら、それでこの子の状態が何か分かるかもしれない。
「んー、怪我をして出血が多くて意識を失った、のかな。他に何か悪い所は無さそうだよ。」
右前脚を怪我しており、それを治す。手のひらをかざして魔力を慎重に流すと、淡く輝いて傷が修復されていった。
再度慧眼で状態を確認すると、傷も状態も良くなっている。ただ、傷が塞がったとはいえまだ少し不安定なので、包帯を巻いておいた。
「これで大丈夫かな。この子はソラより少し小さいくらい?」
今のリラとソラは、リラの方が僅かに大きいけれど殆どサイズは変わらない。どちらも簡単に抱っこ出来る大きさだ。
『そうだね!』
取り敢えずこの子が入るくらいの籠を作り、クッションを敷き詰め毛布を被せる。
体力も回復してきたのか、先程よりも穏やかにスヤスヤと眠っている。
『でも、何で白虎がこんな所にいるのかな。』
リラが疑問を口にする。そう言えば、白虎の存在とかまだ何も聞いてないし、分からない。
「リラ、白虎ってどういう存在なの?向こうの世界では、海外の伝説上の神獣である四神の一角、とかそんな感じだったはずよ。あくまで架空のものなの。」
『こっちでも、そんなに変わらないかな。ただ、皆んなちゃんと存在しているよ。』
「皆んなって、白虎を含めた四神のこと?」
『そうだよ!ねぇねは他に誰が居るか知ってる?』
「確か、朱雀、青龍、玄武だよね。それで、白虎を含めて四神。」
『正解!』
ファンタジーな世界とか好きだったから、何となくだけど少しだけ知っている。
『この世界だと、魔法の属性を司る存在だよ。』
『朱雀は炎で青龍は水、白虎は風で玄武が雷だよ!』
『神獣だね。女神さまがこの世界をつくって、神獣をつくってそれぞれ力を授けたのが始まりだよ。』
「成程。」
こちらの世界に合わせた四神の神話、みたいな感じかな。
『この子どうするのー?』
「そうね、一番は親元に帰してあげたいかな。」
『私達も、白虎に会ったのはかなり昔で、今何処にいるかは分からないよ。でも、もしかしたら近くまで探しに来てるかもしれないね。』
「それなら助かるけど、取り敢えず今はこの子が起きるまで待っていようか。探索から帰ってきてそのままだから、片付けもしたいからね。」
『うん。』
『今日はおにくー!』
「リラはお家の中で、この子の側に居てあげて。もし目を覚ましたら呼んで欲しいな。ソラは私と一緒にお外で作業しようね。」
『うん、分かった。』
『はーい!』