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第1章 1

長い、長い夢を見ていた気がする。

でもどんな夢かはハッキリ覚えておらず朧げで。


意識が覚醒してきて目を開けると、柔らかな日差しが飛び込んでくる。澄んだ空気と匂いは、祖父母宅の近くにある山の中の、お気に入りの場所を彷彿とさせていた。

……え、あれ?


「あれ、私、自宅に居なかったっけ?山にでも入った?何それどんな状況?」


いや、そんな筈はない。平日のど真ん中で、確か出社して、寄り道せず帰宅したはず。

それって昨日……?


いや、待て。日付と時間の感覚がハッキリしない。何がどうなっているの?


というか、さっきから物理的に何か重い。


目も覚めたし意識もハッキリして一応頭は正常に動いているし、そろそろ状況把握をしたいと思い、体を起こそうとしたが、何かが身体の上に乗っているようだ。


首だけ起こして見てみると、黒い塊が見えた。見覚えある、なんてものじゃない。

実家にいる筈のちいさな可愛い家族、パグたちがいた。


ただ、その身体の大きさに違和感があり、直近で会った時よりかなり小さく、成犬ではないが生まれたばかりの赤ちゃんでもない、という大きさになっている。うちの子達はみんな成犬でもっと大きかったのだが、目の前にいる二匹は推定7ヶ月程の大きさだ。


起こさないようにそっと起き上がり、ポケットの中に入れていたであろうスマホ……は、無い。


周りを見渡すと、恐らく山と言うか森の中だと分かったが、どうやら祖父母宅近くの山の中に似ていたのは、本当に空気感だけだったらしい。周囲は見たことの無い植物だらけで、何よりまるで絵本の中に迷い込んだような、ファンタジー感が凄かった。


頭も覚醒し大体状況が分かってきた。明らかに現実とは違う景色といきなり訳の分からない状態から、ここ何年かの間にハマっていた異世界転生とか転移の類いの物語が、現実的に自分に起こったのだろう。


この子達は何か分かるかなと淡い期待を抱きつつ、気持ち良さそうに寝ているところを申し訳ないが、そっと起こした。


少し撫でただけで、二匹ともスッと起きた。

まさか、起きて欲しいっていう私の願いが通じた?意思疎通出来るとか?


「おはよう。ねえ、ここは何処か分かる?」


流石に分からないかな、と諦めかけたその時。

二匹がクゥ、と一鳴きすると、頭の中に言葉が流れ込んできた。


『ここはイルリスの森だよ。』


『ねぇね、すてーたすおーぷんっていってみて!』


……はい?

もしかして、意思疎通出来てる?


心の声が聞こえたのか、二匹が元気よく『うん!』と答えた。

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