16
『わあ、ねぇねすごい!僕が言いたかった事はこう言う事だよ!』
「本当?良かった。」
そう言えば、ブレスレットをはめてから、確かに魔力のコントロールがし易くなった。こんなに繊細に水の魔法を使えるとは思わなかったからブレスレットが作用している事はすぐに分かった。
『ねぇね、ブレスレットの調子も良さそうだね。』
「うん。魔法が使い易くなったよ。」
『女神さまが直接魔力を込めて作ったんだよ!』
「え、……コレそんなに凄いものだったの?」
女神さまが直接って、本当に私が持っていて大丈夫……か。私に手渡したのはリラだし、もし何かあればリラは渡さないだろうし。
そんな考えが伝わったのか、リラが「大丈夫」と言いそうな表情で見つめていた。
うん、それなら有り難く使わせて貰おう。
『ねぇね、やってみよう!』
「うん、分かった。」
先程のソラの言うイメージのように自分の魔力を広げていくと、二匹の魔力を捉える。暖かく力強い魔力だ。そこから更に広げていく。
索敵で出したマップと照らし合わせていると、リラとソラとは違う、少しモヤっとした魔力が引っ掛かり、マップ上で示されている魔物の位置だと分かった。
「ソラ、魔物が居たよ。マップと多分同じ位置だね。」
『ねぇねすごい!完ぺき!』
「そう?良かった、ありがとう。」
『ねぇね、これで私達と逸れちゃっても、気配が分かれば大丈夫。私達もねぇねの気配分かるから。』
「確かに、リラとソラの魔力かな?感知できるようになっているね。」
『これでねぇねが迷子になっても大丈夫だね!』
「迷子……。」
確かに、私がリラとソラから離れちゃったら、私はこの世界で生きていけないものね。
気を付けよう。
『ねぇね、何か来る……。』
グルル、と唸ってリラがそう言うと同時に、ソラも警戒体勢に入る。サーチを唱えると魔物が来ており、ダガーを構えた。
『ソラは攻撃、私は防御、ねぇねはダガーを投げるか魔法で攻撃してみて。』
「分かった。」
現れたのは、猪型の魔物だ。
『いくよっ!』
ソラの合図でリラが結界を張り、ソラが勢い良く飛び出す。そのまま雷魔法で作った矢を繰り出し、動きが止まった。
その隙を見て、私もダガーを投げようとしたが、狙いが定めづらい。一度投げてみたものの急所には当たらず、リラが横から『魔法で攻撃しよう』と助言をくれたので、風魔法で攻撃した。
ゲームとか物語の世界だけだった。生き物をこの手で殺した事なんて無かった。
それでも、生きていく為にやらないといけない。
せめて苦しませないようにと、スパッと勢い良く切った。
「……ごめんね、ありがとう。」
今まで生きてきた世界が、いかに狭いか、平和で快適だったか、改めて実感した。
特に、私は人生の大半を推し活に捧げていた。祖父母や母は趣味で野菜を育てたりしていたけれど、自給自足やサバイバルなんかも殆どした事が無い。
それでも、私はこの世界で生きていくのだ。
『ねぇね、大丈夫?』
「うん。大丈夫、覚悟はできたから。」