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第2話(独り言)

ガイエの発する言葉は、傍から見れば冬雪流の言葉。

そんな不思議な体験が始まった初日。


 家を出て、会社に向かう煌月冬雪流あかつきとゆる

 それは想像以上に大変なことであったのだ。

 玄関を出ると、現代の地球の様子に興奮したガイエが、勝手に喋り始めてしまったからだ。

 「なんだ、この動く箱は......」

 「エレベーターっていうのよ」

 この程度の会話は、まだ序の口。


 建物の外に出ると、道路を走る車や、建ち並ぶ建物を目にすると、更に興奮。

 「うわ〜。 高い建物ばかりだな〜」

 「馬が引いていないのに、動く馬車か〜。 いや、馬がいないから、車?」

 「正解」

 そんなやり取りが続くも、当人達以外から見れば、ずっと独り言を喋っているだけに過ぎないのだ。


 「とゆる。 あの細い車輪が2つあって、人が跨って動いている乗り物は、何というのだ?」

 「簡単な構造で人力で動くのは、自転車。 音がするのはエンジンっていうもので、その動力で動いている乗り物はオートバイよ」

 「みんな、一斉に同じ方向に向かって、歩いていくよな? 気の所為か」

 「ううん。 気の所為ではないわ」

 「俺達も向かっているんだよな?」

 「そうよ。 駅に向かっていて、そこから電車っていう乗り物に乗るから」

 「駅に、電車?」

 そこまではガイエの質問に答えていたものの、歩きながら社会の一般常識について、大袈裟に反応しながら、解説しつつ独り歩いている冬雪流の様子に対して、同じように歩いている人達からは、奇異の目で見られていたからだ。


 それに気付いた冬雪流は、

 「ガイエ。 見るもの全てが新鮮なのはわかるけど、少し黙っていてくれないかな?」

 「なんでだ?」

 「ほら、近くで私を指差している子供と母親の会話を聞けば、理由がわかるわよ」


 冬雪流にそこまで言われたのでガイエは黙り、耳を澄ます。

 「お母さん。 あのオバサン、ずっと一人で大きな声を出しながら、ブツブツ何か話しているよ〜」

 「シーッ。 ああいう人を指差してはいけません。 頭おかしいのよ、あの女の人は」

 「そうなの?」

 「今、こっちを見たわ。 危ないから早く行きましょう。 関わるとロクなことないから、ああいう人を見掛けたら、近付いちゃダメよ」

 母親は冬雪流の視線に気付くと、親子間の会話を聞かれたと思い、危険を感じて子供の手を引き、慌ててその場を立ち去る。



 「ああいう風に言われるから、無闇に喋らないでって言ったのよ」

 「なるほどな。 俺の言葉も冬雪流が喋っている形だから、変人だと思われているんだな」

 「漸く、私の意図をわかってくれたんだ〜」

 ガイエが状況を理解してくれたことに、一安心した冬雪流。

 しかし、それで会話が終わる筈も無かった。

 まあ、見るもの全てが新鮮だから、致し方ない面もある。


 「ところで、オバサンっていう言葉の意味は?」

 「ガイエ。 そこを質問するの?」

 「なんだ、ダメか?」

 「オバサンっていうのは、私がそこそこ年を取った女性っていう意味の言葉」

 「冬雪流は、まだ十分若いだろ? 見た目も綺麗だし、そんな風には見えないが......」

 ガイエは、国王の叔母であるローミア公爵の、小太りで顎下にブヨブヨと肉が付いた風貌を思い出し、ちょっと笑い出す。

 もちろんガイエが笑うと、それは冬雪流が笑うという反応になるのだ。


 「なんで、急に笑い出すの? まあ綺麗って言ってくれたことには一応、礼を言っておくわ。 まあ、小さい子供から見たら、アラサーの私も十分オバサンなのよ」

 「アラサーってなんのことだ?」

 「30歳前後の人のことを示す言葉ね」

 「よくわからないが、わざわざ、そんな表現を作る必要があるのか? 年齢をそのまま言えば十分だろうに」

 「そんな難しい質問、私、答えられないよ」

 「しかしまあ、少し洒落た響きの言葉だな。 アラサーか〜」

 ガイエは、数年後には自身もその範疇に入ることになる『アラサー』という表現を少し気に入ったようであった。



 駅に着くと、自動改札に向かって、非常に多くの人々が誘導も無いのに、自然と列を作り、次々としかも整然と通過していく様子を見て、ガイエはすっかり感心してしまったのであった。

 「冬雪流、これは凄いなあ〜。 アルタート王国の訓練された国王直属の近衛兵部隊でも、何の指示も無いのに、こんな動きは出来ないだろう......本当にスゴい」

 妙なところで『うんうん』と心の中で頷きながら、感動してしまうガイエの言葉に、冬雪流は何だかちょっと嬉しくなる。

 現代人として、日本の首都圏に生まれた時から住んでいると、朝の通勤ラッシュ時における人々の流れるような動きは、ごく当たり前の風景と行動であって、新鮮な心を持って感激するような出来事ではないからだ。



 しかし、直ぐに現実に引き戻される冬雪流。

 周囲に居た通勤通学客達に、じろっと睨まれたからであった。

 ガイエは声が大きいので、冬雪流の中に閉じ込められていても、冬雪流の声帯を使って喋る時の声は、かなり大きい。

 今のガイエの感想も、数メートル先の人にも、ハッキリと聞こえる内容であったし、駅の利用者は相当多いと言っても、大半の人々が黙って足早に目的地に向かって動いていて静かなので、一人が大声を出すと、案外目立つ雑音になってしまうのだ。


 「すまん、とゆる。 ちょっと声が大きかった」

 傍若無人なタイプのガイエであっても、今の周囲の反応には気付いたし、冬雪流が恥ずかしそうにしたことも分かってしまったので、素直に謝罪。

 しかも初めて、小さな声で謝ったガイエに、

 「ありがとう。 これからは今みたいに、少し気を遣ってくれると嬉しいな」

とやはり小声で口にした冬雪流。

 その表情には、ようやく心の底からの笑みが浮かんでいたのだった。

 

 

 郊外のターミナル駅から電車に乗り込んだ冬雪流。

 激混みという訳ではないものの、車内はかなり混んでいたので、ガイエはこれ以上冬雪流を変人扱いさせるのは可哀想だと気を遣い、言葉を発することは無かった。

 しかし、乗り換え駅で降り、某地下鉄線のホームに移動すると、非常に多くの乗客が電車を待っていたり、到着した電車から降りてきたりとごった返していたのだった。

 「おい、冬雪流」

 「なに、ガイエ」

 「ここは、人だらけだな〜」

 「仕方ないでしょ? 利用者の多いそういう駅と地下鉄だからね」


 ホームに降りた時、ちょうど入線してきた電車は相当混んでいたので、乗るのを見送って一本後の電車に乗ることに決める。

 とりあえず列の最後尾に並び、やがて次の電車待ちの最前列へと並び替えた冬雪流。

 その慣れた動きにも、ガイエは感心していた。


 『日◯▲線、東◯線、J◯快□線、T▲線は乗り換えです。 プーー(発車ブザー音)。 発車致します。 閉まるドアにご注意下さい。 駆け込み乗車はお止め下さい』

 駅で流れる自動放送を聞き漏らすまいと、耳を澄ませて聞いていたガイエ。

 そして冬雪流の瞳を通して、電車から降りる人々と、逆に乗り込む人々が、順序よく進んで行く流れるような動きや、満員で電車のドアがなかなか閉まらない様子等を、興味津々といった感じで、黙ったまま見詰めていたのだった。



 次の電車に乗り込む冬雪流。

 既に相当混雑しているにもかかわらず、後から乗ってきた乗客に押し込まれ、かなりのギュウギュウ詰めになってしまう。

 「冬雪流。 大丈夫か?」

 思わず声を出したガイエ。

 すると、周囲の視線が冬雪流に集中する。

 『どうしたんだ?この女性。 独り言?』

 『随分大きな声を出す人だな〜。 満員電車だぞ?』

 『もしかして、ちょっとオツムが......』

 皆、無言のままだが、その多くの視線はそんなことを語っているようであった。

 冬雪流は仕方なく、

 「すいません」

と小声で、周囲の人々に対して謝罪の言葉を呟くと、以後、人々の関心は無くなり、地下鉄の走行の揺れで、体が持っていかれそうになるのに対して、両足で踏ん張りながら、満員電車の独特の強い圧力に耐えるのであった......

 


 会社の最寄り駅で降りて、地上に出ると、ようやくホッと一息つく冬雪流。

 「ゴメンな。 つい、余計なことを喋ってしまって」

 ガイエは、改めて謝り直すと、

 「イイわよ。 満員電車での私を気遣ったことで、出てしまった言葉だから......」

 その答えを聞き、安心したガイエ。

 「しかし、この世界の朝は、どこもかしこもこんな感じなのか?」

 「そうね。 一定水準以上の生活レベルにある国は、大概、朝の通勤通学ラッシュってあるみたいね。 この国だけの現象ではないのよ」

 「そっか〜。 この世界には何カ国あるのだ?」

 「約200カ国」

 「そ、そんなにあるのか? 俺の居た世界には、十数カ国しかないらしいから......」

 相変わらず声の大きいガイエ。

 しかし、その声はあくまで冬雪流の声。

 再び、周囲の歩いている人々から注目を浴びてしまう。

 それに気づいたガイエは、再び黙ることにするのだった。



 オフィスに入ると、

 「おはようございます」

と挨拶を続ける冬雪流。

 そのまま、自席に行ってから仕事の準備を始める。

 「煌月さん、おはよう」

 「おはようございます」

 「冬雪流、おはよう〜」

 「おはよう、海夏」

 周囲の人々と朝の挨拶をしながら、淡々と仕事に取り掛かる。

 そこに、職場で比較的仲の良い位藤海夏がやって来たのだった。

 「冬雪流。 なんか、目の下にクマが張っているよ?」

 「ちょっと、寝不足気味で......」

 非常に長いガイエの夢を見た影響で、かなり眠りが浅かったのだ。

 「私達にとって、寝不足は天敵だから、気を付けてね」

 すると、ガイエが話し始めたのだ。

 「そうだったのか。 とゆる、すまん」

 「冬雪流。 何か呟いた?」

 海夏が不思議そうな表情で確認する。

 思わず誤魔化す為に、自分の頬をパンパンと叩く冬雪流。

 その行動に海夏も唖然......

 「気合い入れ直したの。 さあ〜、やるぞ〜」

 「いや......私達、ただの社畜でしょ?」

 海夏は『ははは』と苦笑い。

 普段の冬雪流は、仕事に疲れた顔をいつもしているし、職場で気合いの入った姿を見せるようなタイプではないからだ。

 その言葉に、パソコンを弄って今日の仕事内容を確認すると......

 「え〜。 これを今日じゅうに......」

 上司や先輩社員からの依頼内容を見て、思わず絶句。

 「海夏......どうしよう」

 「そういうこと。 淡々と残業してこなしましょう」

 「今日も帰りが遅くなりそう......」

 今見せた気合いは、一気に消滅し、力なく自席に座ると、仕事に手を出すのであった。



 その後も、次々と資料作りの依頼が社内メールで入ってくる。

 冬雪流は、企画関係の部署に希望通り異動出来たのだが、理想と現実が掛け離れている典型的な部署であったのだ。

 新商品の企画や既存商品の改良等々の提案とかが出来るものと思っていたが......

 実際には、そうした連日開かれる会議の資料作り等が、この部署の女性社員に求められる仕事であったのだ。

 老舗の大手企業というものはそんなもの。


 男女機会均等法なんていう法律も施行されているし、事あるごとに、ハラスメントの禁止とか、男女格差の解消、SDGsとか、聞こえの良い言葉が並べられ、この企業もそうした文言を謳っているのだが、実態は旧態然とした体制を維持したまま、伝統だけを重んじ、変化を拒み、時代から取り残されている、日本のガラパゴス企業の典型的な体質の大企業であったのだ。


 冬雪流も、もちろん自身の志望動機や事前リサーチが甘かったと非常に後悔していたが、異動希望が通った人事であったし、

 『自ら言い出した以上、当面そこで努力するしかない』

という、その日本人らしい妙な責任感から、他部署への再異動希望を出せないまま、ただ時間だけが流れ続ける社畜生活へと転落していた。

 異動して3年以上。

 ただ職場と郊外にある自宅を往復するだけの日々。

 休日は睡眠を貪るだけで過ぎ去り、ショッピングや旅行なんて皆無であったのだ。



 昼を過ぎても、昼食を摂ることも出来ない。

 昼休み返上で、この日の依頼された業務をこなしていると、

 「とゆる。 腹減った」

 それまで大人しかったガイエが騒ぎ始めた。

 「ちょっと待って。 お腹減っているのは私もよ」

 「もう耐えられない。 無理だ〜」

 突然の大声を出すガイエ。

 職場に、その冬雪流の声が響き渡り、昼休憩を取っていた同じ部署の社員達の注目を浴びてしまう。

 「ちょっと。 大声出さないでよ」

 小声で叱責する冬雪流。

 「腹減った〜。 動けない。 誰か助けてくれ〜」

 再び大声を出したガイエ。

 二度目の大声に、職場内がザワツキ始める。

 「煌月、どうしたんだ?」

 「若手は残業続きだろ、この部署は特に」

 「ちょっと、仕事を振り過ぎたか......」

 企画部署の社員達も、一部の若手社員に業務が集中して過負荷となっていることは知っていたのだ。

 ただそれは、年功序列が第一のこの企業にとって、若手社員の登竜門として当然のことだと放置され続けていた慣習であった。


 「わかったわよ。 コンビニで買って食べるから、これ以上騒がないで」

 小声でガイエにキツく言ってから、冬雪流は立ち上がって、足早に職場を出てゆく。

 その姿を同情の目で見送る、職場内に残っていた同僚や中堅社員達。

 「ちょっと可哀想だな」

 「あれでも、この部署に来るまでは、社内で人気の有った美女だったのにな......」

 「ここに来た若手は、3年で10年分老けるって言われているからさ〜」

 「とにかく、上司達が外に昼飯食べに出ていて、誰も居なくて良かったよ。 あの言葉を聞かれていたら、益々仕事を振られただろうに」

 そんな会話が為されているとは、冬雪流はつゆ知らずだったのであった。



 コンビニで食べ物を買うと、職場に戻りながら、食べ歩く。

 食べる時間すら惜しんでの行動であった。

 「とゆる。 座って食べないのか?」

 「とにかく仕事量が多くて、時間が足りないの」

 「そうなのか......随分大変そうだな?」

 「でも、自分で選んだ仕事だから、あまり文句も言えないのよ」

 「俺に出来ることは有るか?」

 「さっき、異世界から私の中に閉じ込められたばかりのガイエに出来ることなんて、無いでしょ? それぐらい、私にも分かっているわ」

 「ゴメンな。 腹減ったって騒いで」

 「酒飲み過ぎで、空きっ腹だったのかな? そういう時って、酔いが完全に醒めると妙にお腹が空いた気がするのよね」

 冬雪流はガイエに笑顔で答えると、おにぎりとパンを両手に持ちながら、交互にかぶり付く。


 しかし、傍目から見たその姿は、結構大きな声で独り言を喋りながら、表情をクルクル変え、更にはコンビニ飯を人目を気にせず食べ歩きしているだけにしか見えない。

 その姿を見ていた社員達は、

 「あの子、大丈夫か? ずっと独り言言っているぞ」

 「3年くらい前迄は、モテてた女の子だったよな?」

 「企画部門に行った子だろ? 入った頃は単純な事務仕事だったのだから、異動希望なんて出さなければ良かったんだよ」

 「うちは女子社員なんて、社内で結婚相手を求める男性社員用の見合い相手みたいな採用基準だからな。 顔重視の。 男尊女卑を正せない日本企業の典型だよ」

 口々に、少し同情するような会話をしていたのだった。


 


 夕方になり、終業時間を過ぎると、同じ職場の社員達が次々と退社してゆく。

 午後6時半を過ぎると、若手社員の4人だけとなっていた。

 「ゴメン、冬雪流。 私、帰るね」

 海夏はそういうと、片付けを始める。

 「ううん、気にしないで。 新婚だもの、お疲れ様」

 冬雪流は少し羨ましそうに答えると、そそくさと帰って行く海夏を見送ったのであった。


 やがて、午後9時。

 残業制限の為に、会社の建物の電源が落とされる時間になってしまった。

 部屋が暗くなるも、まだ残っている企画部署の若手社員達は、ノートパソコンのバッテリーで残業を続ける。

 そして、そのバッテリー容量が心許なくなった午後10時過ぎ。

 ようやくパソコンの画面を閉めて、仕事を終えるのであった。

 「お疲れ様〜」

 「煌月、気を付けて帰れよ」

 「私は駅近物件に住んでいるから大丈夫よ。 みんなも、夜道だから油断しないようにね〜」

 冬雪流はそんなことを答えながら、帰宅を急ぐ。

 この間、ガイエは一言も言葉を発しなかった。



 最寄り駅に着いたのは、午後11時前。

 郊外とはいえ、ターミナル駅なので、人は多く、飲食店も結構開いている。

 適当にチェーン店に入って、ビールとサラダと餃子定食を注文。

 先ずはビールをジョッキで受け取るとゴクリ。

 「あ~、この瞬間が至極の時よね〜」

 独り言を呟くと、満足そうな笑顔。

 素早く提供された定食をパクり。

 15分程で店を出ると、駅から5分の自宅ワンルームマンションに帰り着いたのであった。


 直ぐにスーツを脱ぐと、そのままシャワーを浴びる。

 時短グッズも使って、あっという間に髪を乾かし、寝る準備は完了。

 そして、スマホをいじり始める。

 そのまま小一時間してから、電灯を消したのであった。

 「とゆる。 いつも、こんな生活なのか?」

 「あ~っと、ガイエの存在忘れていたわ」

 「疲れているだろうと思って、ずっと黙っていたよ」

 「私がシャワーを浴びている時、裸をガイエに見られても気にしないの、分かるでしょ?」

 「こんな生活じゃあ、そこまで気を回していられないものな」

 「そういうこと」

 「俺も、なるべく見ないように気を使っていたから、今日は見ていないぞ」

 「そうなの? ありがとう」

 「まあ、興味はあるから、きっと見ちゃうけどな」

 そう答えると、ガイエは笑う。

 「興味無いって言われた方がショックだからね。 私って女として魅力ゼロなのって思っちゃうから」

 冬雪流もつられて笑い返すのであった。


 「おやすみ、とゆる」

 ガイエのこの言葉に、少し嬉しくなる。

 「ガイエもおやすみ」

 独り言とはいえ、自身の中の別人との会話なのだ。

 こういうことは、異動後全く無くなっていた時間であった。

 「家に帰ってリラックスしている中で、他人と挨拶出来るってイイね」

 その呟きに、

 「そうか?」

と答えたガイエ。

 「うん。 何だか、ホッとして嬉しいよ」

 やがて、寝息が聞こえてくる。

 『疲れていたのだな。 直ぐに寝付くぐらいだから』

 ガイエはそう思いながら、自身も眠りに就く。

 ガイエ自身も、初めて見る世界での初体験の出来事の連発に、疲れていたのであった......

 

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