ひよこ、もふもふを堪能して満足
小さくなった白虎さんの頭の上でぬくぬくしていた私は、ふとあることを閃いた。
今なら、白虎さんを抱っこできるのでは?
ヒヨコってば、我ながら天才的な閃きだ。
思い立ったが吉日、私は白虎さんの頭の上から下りた。その拍子に、少しうとうとしていた白虎さんが目を見開く。
「ん? ヒヨコどうしたんだ?」
「ヒヨコ、いいことを思いつきました」
白虎さんの頭から下りた私は、素早く人型になる。そして、ぬいぐるみサイズの白虎さんを抱き上げた。
「おお、思ったよりもおもい……」
「おっとっと」
予想外の重みによろけた私を、父様が支えてくれる。
「ありがとうとうさま」
「いいえ。でも、急に白虎を抱き上げてどうしたの?」
「ヒヨコ、いつもだっこされるがわだから、たまにはだっこしてみたくなった」
「な~にそれかわいいかよ」
父様は白虎さんごと私を抱きしめ、頭頂部にウリウリと頬ずりをしてきた。ついでにスンスンと吸われる。ひよこ吸いだね。
「ミルクの匂い」
「ヒヨコみるくのんでない」
「じゃあ赤ちゃんの匂いだ。……」
そこで、父様が白虎さんをロックオンした。
「……白虎、ちょっと吸ってみてもいい?」
「………………それはちょっと」
「だよねぇ」
随分葛藤したね白虎さん。
今、白虎さんの頭の中では自分よりも上の人には恭順しなければという心と、中身は大人なので吸われるのは……という心が戦っていたのだろう。
結果的には大人のプライドの方が勝ったようだ。まあ、父様も本気ではなかっただろうしね。
そこで、視界の端になんだかプルプルと震える存在が見えた。
「……まおー?」
「小さい白虎を抱くヒヨコ……かわいすぎる。今すぐ絵姿を残さねば……」
「え、なにそれ我もほし~」
「何パターンか描かせよう」
静かだと思ったら、魔王は親バカを拗らせていただけだった。
うむ、ここはヒヨコちゃんサービスをしてあげましょう。
私は白虎さんを抱っこしたまま、テテテッと魔王の足元に歩み寄った。そして、そのまま魔王を見上げる。
「まおー、まおーもヒヨコたちのことだっこしてもいいよ」
そう言うと、魔王は分かりやすく相好を崩した。ここまで分かりやすく表情が動くのは珍しい。
そして魔王は、私と目線を合わせるように床に膝をつく。
「我にもヒヨコ達を抱っこさせてくれるのか?」
「うん、いいよ」
白虎さんを腕に抱いたままなので、心の中で魔王に向けて両手を広げる。
すると、次の瞬間には魔王の懐の中に包まれていた。
魔王もいい匂いするよね。高貴そうな、でも安心する匂い。ヒヨコ、この匂い好き。
魔王の肩口にスリスリと頭を擦り付ける。
「何だこのかわいい生物は」
「気持ちはよく分かるよ魔王」
低く唸った魔王に父様が同意する。
魔王の匂いに包まれ、頭を撫でられると、なんだか眠くなってきてしまった。
こくりこくりと首を上下させる私に、白虎さんが気付く。
「お二方、どうやらヒヨコが眠たそうですよ」
「ん?」
「え? ……あはは、子どもって本当に眠たくなるのが唐突だなぁ」
眠くて手に力が入らず、取り落としそうになった白虎さんを父様が回収してくれた。そして、お休み三秒前の私は魔王が回収してくれる。
だけど、おねむな私は白虎さんの温もりを手放したくなかった。
「ん~」
父様が抱いている白虎さんに向けて手を伸ばす。
「なんだヒヨコ、我よりも白虎がいいのか」
「安心毛布みたいに思ってるのかもね。白虎、悪いけど……」
「はい、ヒヨコの寝かしつけは任せてください。これでも年少者の面倒をみてきた経験はあるんです」
「頼もしいね」
魔王が既に目を瞑っている私をソファーの上に横たえると、顔の隣に白虎さんが置かれた気配がした。
ふわふわ。あったかい。
そのまま、私は夢の世界へと旅立った。
次の日には、白虎さんは元の巨体に戻ってしまった。だけど、私の手元には魔王がいつの間にか呼んでいた絵師による、白虎さんとのツーショットが残っていた。
その絵の中では、人型の私とチビ白虎さんが寄り添ってお昼寝をしている。
ただ、白虎さんの威厳のためにこれは大っぴらに飾れない。だから、思い出として大事に保管することにした。
大事なもの入れの中に仕舞う前に、私はもう一度手元の紙を眺める。
―――うん、我ながらほのぼのするいい絵だ。





