ひよこ、ハッピーセットになる
小さくなった白虎さんは最強にかわいかった。そーきゅーとだ。
元々の白虎さんの精悍さは鳴りを潜め、きゅるんとした瞳が愛らしさを醸し出している。この白虎さんのビジュアルなら、お花畑を駆けずり回っていたって何の違和感もない。
だけど、その口から飛び出す言葉はかわいくなかった。
「視線が低くて違和感がすげーな」
「かわいい外見でその口調もいわかんがすごいよ」
ぬいぐるみみたいな見た目なのに、言葉遣いが随分と荒々しい。新ジャンルだね。これはこれで需要があるかもしれない。
そんな風に会話をする私達を、父様がきゅるんとした瞳で見守っていた。気のせいかもしれないけど、その体はぷるぷると小刻みに震えている。
「~~っ! ち、ちっちゃくてかわいいの同士がしゃべってる……! 見てよ魔王!」
「しっかり見ている」
声だけ聞くと冷静な魔王だけど、実際は目をかっぴらいてこちらを見ていた。ガン見だ。
そろそろ瞬きした方がいいんじゃない?
「まおー、パチパチして。まばたきだよ」
「ああ……」
私に言われた通り、魔王は素直に目をパチパチさせた。
「ヒヨコ、我はヒヨコの願い事をきいたのだから、ヒヨコも我の頼みをきいてくれるか?」
「え? べつにいいけど……」
瞬きしてがヒヨコのお願いごとに入るのは不思議だったけど、魔王なら変な頼みごとはしないと思って引き受けた。ヒヨコのパパへの信頼は絶大なのです。
「では、白虎の上に乗っている姿を見せてくれ」
「ぴ?」
首を傾げる私をヒョイっと拾い上げ、白虎さんの上に乗せる魔王。子猫がごとくぽさぽさな毛の上にポスンと、私は乗せられた。
なんだなんだ。
白虎さんの小さな体をよじよじと上り、ヒヨコより一回り程大きい白虎さんの頭の上に乗った。すると、私の頭上で魔王がバッと自分の口元を押さえた。
「ぐっ……! やっぱりかわいい……!」
「……」
どうやら、魔王は私が白虎さんの頭の上にいる光景が気に入ったようだ。それで魔王が喜んでくれるならいくらでもいるけどね。
でも、心配なのは私を乗せている白虎さんの方だ。こんな小さい体で頭の上に私を乗せていて大丈夫だろうか。
「びゃっこさんだいじょうぶ? おもくない?」
「ん? ああ、全然重たくないぞ。埃が乗ってるくらいの感覚だ」
「だれがほこりだ」
白虎さんに負担がかかってないのはよかったけど、埃に例えられたのは不服である。
不満を表すようにむぅっと頬を膨らませたけど、私を頭に乗せている白虎さんには見えなかった。代わりに父様と魔王がかわいいかわいい言ってくる。
「こんな幸せなコンビ他にないよ。みんなにも見せてあげたいけど……」
「デュセルバート様、それはちょっと……」
「だよねぇ」
四天王の一角である白虎さんの面子があるからね。食べちゃいたいくらいかわいいこの姿を晒すのは、白虎さんの威厳的によろしくないんだろう。
「ふふ、じゃあかわいい白虎は我らだけで楽しも~っと」
そう言うと、父様はうりうりと白虎さんの背中を撫でくりまわした。魔王も父様に続いて白虎さんを撫でる。
白虎さんもこの二人に可愛がられる分にはいいらしい。目を細めてされるがままになっている。
ゴロゴロ。
少しすると、地響きに似た低い音が白虎さんの喉元から聞こえてきた。
これは……! 猫さんが気持ちいい時に鳴らす音では……!?
白虎さんと密着している私には、その音が鮮明に聞こえた。そして、白虎さんのゴロゴロ音は父様と魔王の耳にも届いたらしい。二人は一層、白虎さんを撫でくり回した。特に喉の辺りを重点的に。
二人がチビ白虎さんを愛でている間、私は放置されていたかというと、そうではない。二人は片手で白虎さんを撫で、空いている方の手で私をもみもみふわふわしていた。
「一度で二度かわいい状態だね。あ~、幸せ」
「だな」
うん、二人が幸せそうなら何よりだ。





