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ひよこ、白虎さんとニコイチでかわいい






 私は形から入るタイプだ。


 今日は実験をする日なので、人型になって魔王にダボダボの白衣を着せてもらった。

 なんの実験かというと、もちろん白虎さんをかわいくする実験だ。

 私の体には大きすぎて袖から手が出ないし、裾は床についちゃってる。常に綺麗にされてる魔王城だから汚れることはないと思うけど。


「まおーみて。にあう?」


 ダボダボの袖に埋まっている両手を上げて魔王を見上げると、魔王は片手で口元を覆った。


「かわいい……」

「でしょ」


 ふふんとドヤ顔をする。

 実験といえば白衣ということで魔王に発注してもらったんだけど、既製品では一番小さいサイズでも私にはダボダボだったのだ。断じて、魔王がサイズを間違えたわけではない。

 魔王に向けて白衣の袖に埋もれた両腕を差し出すと、魔王がひょいっと抱き上げてくれた。そして魔王は私の黄色い頭に頬ずりをする。


「ヒヨコは何を着ても愛らしいな。もっと服を増やそうか」

「まだきてない服いっぱいあるよ」


 私のクローゼットの中は魔王や父様の買った服でパンパンだ。なんならちょっとずつ増えてる気すらする。

 ひよこの姿メインで過ごしてるからあんまり着る機会がないんだよね。


「……子どもはぬくいな」


 どうやら魔王は私の子ども体温がお気に召したらしい。

 私の背中をポンポンと叩きながら珍しく眠そうな顔をしている。

 ちょっとちょっと、背中ポンポンされたら私も眠くなっちゃうんですけど。今からやらないといけないことがあるのに。

 猫がいやいやするみたいに魔王の肩に手をかけて腕を突っ張る。


「ん? どうした? 反抗期か?」

「はんこうきじゃないよ。まおーにポンポンされるとねむくなっちゃうからダメ」

「そうか、眠くなっちゃうのか」

「うん」

「それは悪かったな」

「いいよ」


 そう言うと、魔王はゆっくりと私を床に下ろしてくれた。

 そんな私達のやり取りを白虎さんが目をぱちくりさせながら見ている。


「陛下は本当にヒヨコを溺愛してるんですねぇ。俺ぁ生きてる間に父親してる陛下を見られるとは思ってませんでしたよ」

「ヒヨコは可愛いからな。お前も庇護したいと思える存在ができれば分かる」


 そう言って魔王は私の頭を撫でる。


「変わるもんですねぇ」


 白虎さんが魔王を見て呟いた。




 ―――さて、ヒヨコはそろそろ行こうかな。


「いってきます」

「ん? どこに行くんだ?」


 白虎さんが首を傾げる。


「ヒヨコ、ちょっくらポーションをつくってきます」


 白虎さんと魔王に片手を上げて、私は部屋を出た。



 そして、私は自分の部屋へと移動する。

 以前作ったポーションが売れに売れたおかげで私はちょっとした小金持ちだ。なのでポーションの材料も自分で狩らなくても潤沢に手に入る。

 ヒヨコも成長したものです。


 よし、がんばろう。


 白衣を捲って手を出し、蛍光ピンクの液体の入ったフラスコを私は手に取った―――




***





「びゃっこさんびゃっこさん! できた!」

「お~、嫌な予感がするが一応聞いてやろう。何ができたんだ?」

「びゃっこさんをかわいくするポーション!」


 胡乱な目をしている白虎さんに私はポーションの入った小瓶を差し出した。


「のんでみて?」

「この流れでどうして飲むと思ったんだ?」

「びゃっこさんのために作ったんだけど……飲むのいや……?」


 ちょっぴり残念だけど、白虎さんが嫌なら無理強いはできない。私が勝手にやったことだし。


「ぐっ……嫌なわけでは……」

「白虎って本当、子どもには優しいよね」


 父様が生温かい視線を白虎さんに向けながら言う。


「まあ安心しなよ、我もいるし、白虎の前にいるのは元聖女だよ? 万が一何かあっても治癒はお手の物さ。ね~ヒヨコ?」

「うん!」


 ヒヨコ、治癒魔法は大得意です。


「そうだな、ヒヨコのポーション作りの腕は中々のものだと聞くし、実は一度試してみたかった」

「おお!」


 ならちょうどいいね!

 実は今回、味も大分おいしくしたからぜひ飲んでみてほしい。


「―――よっし、ヒヨコ、そのポーションよこせ!」

「え? あ、うん」


 私がポーションの入った小瓶を渡した瞬間、白虎さんは器用に蓋を開けるとその中身を飲み干した。

 まだ効果の説明もしてないのに……思い切りがいいね。


 白虎さんがポーションを最後の一滴まで飲み干した。


「ん、意外とうまいな……」


 白虎さんが自分の口の周りをペロリと舐める。

 すると次の瞬間―――


「ん? ぉお?」


 ポンッという音がして、白虎さんが白い煙に包まれた。


「おお、煙いね」


 父様がパタパタと手を団扇のようにして煙を払う。


 ややあり、煙が晴れていくと白虎さんの姿が露わになってくる。


「ああ? なんじゃこりゃ」


 そう言った白虎さんの声は、いつもよりもやや高かった。

 そして、煙の中から現れた白虎さんを見て父様が目を大きく見開く。


「び、白虎が小さくなってるー!!!!!」


 父様の視線の先には、ぬいぐるみサイズの子虎になった白虎さんがいた。

 そう、私が作ったのは子どもの姿になるポーションだ。若返り効果のあるポーションの応用だね。ただし効果は一日限り。


「うわぁ、白虎かわいい~」


 父様が成猫サイズの白虎さんを抱き上げる。


「まだ毛がぽさぽさだぁ。白虎が小さかった頃を思い出すな~」


 されるがままの白虎さんに頬ずりをした後、父様はこちらを見た。


「ヒヨコ、ヒヨコもひよこの姿になってみて」

「わかった」


 ぴよっと姿を変えると、父様によって白虎さんの頭の上に乗せられた。


「かわい~!! 最強のセットだね」


 父様、大興奮だ。


 思ったよりも父様が喜んでてヒヨコびっくり。


 そんな私は、この後大興奮の父様に小一時間は放してもらえないことをまだ知らない。


 







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