ひよこ、手合わせしてくれる兄貴をゲットする
勝負に勝ち、白虎さんの毛皮に埋もれてスピスピと眠ったヒヨコ。
ちょっぴりそのシマシマの毛皮に涎を垂らしちゃったのは内緒だ。ひよこの涎なんて一滴くらいだし。
パチっと目を覚ますと、白虎さんはとても嬉しそうな、ホッとした顔をした。
「やっと起きたか! ヒヨコを起こさないようにジッとしてたから肩がこったぜ!!」
何時間も寝ていたからか、周りには誰もいなくなっていた。みんな暇じゃないもんね。
ふわふわの毛皮の上をコロコロと転がって白虎さんから下りる。すると、白虎さんは四本の足をぐぃ~っと伸ばして伸びをしていた。
かなりの巨体だけど仕草が猫みたいでかわいい。
ヒヨコも真似しようとしたけどそもそも四本脚じゃなかったや。
さっきも思ったけど、やっぱり近くで見ると白虎さんの迫力はすごいなぁ。白虎さんの耳とヒヨコの大きさが同じくらいだもんね。
白虎さんの真似はできなかったので両羽を上に伸ばして伸びをすると白虎さんにベロンと舐められた。
白虎さんは毛繕いをしてくれたんだろうけど、ザラザラした舌がヒヨコの毛に引っかかって危うく白虎さんの口に入っちゃうところだった。逃げたけど。
「びゃっこさん、ヒヨコのことたべようとした……?」
「おいおい、とんだ濡れ衣だな。今のは事故だろ。ヒヨコなんて食べても腹の足しになんかならねぇしな」
「ぴぴ」
ごもっともで。
ヒヨコなんか食べても白虎さんにとってはおやつにもならないだろう。
だけど白虎さんも危うくヒヨコを食べそうになったことに罪悪感を覚えたのか、今度は舌先でチロチロと毛繕いをしてくれた。
「ぴぃ」
ヒヨコ、子猫になった気分。
うっとりと毛繕いをされていると、城の方から魔王と父様がやってきた。
「デュセルバート様! 陛下!」
二人の姿が見えると、白虎さんはパァっと明るい顔になった。
「久しぶりだね白虎。うちの子の昼寝に付き合ってくれてありがとう」
「いえ、勝負の対価だったので礼には及びませんよ、デュセルバート様」
ふよふよと浮かぶ父様を見上げる白虎さん。
「おや、そうだったの? じゃあ勝負はヒヨコが勝ったのかな?」
「はい、完敗でした」
「ぴっ!」
ヒヨコが勝ちました!
私は父様に向けてどやぁと胸を張る。
「ふふ、我の子はかわいいなぁ」
そう言って父様は私を抱き上げた。
「白虎にも勝っちゃうなんて流石だねぇヒヨコ。向かうところ敵なしだ」
「まあ、白虎に勝てるならばそうでしょうね」
父様の親バカ発言を魔王が肯定する。
白虎さんってそんなに強さに定評があるのかな。
首を傾げていると魔王が教えてくれた。
「白虎もフェニックスと同じく四天王の一員だからな」
「そーなんだ」
「ああ。フェニックスがまたヒヨコに会いたいと言っていたから、もしかしたらあいつもそのうち訪ねてくるかもな」
「! ヒヨコも、フェニックスあいたい!!」
「はは、じゃあヒヨコも会いたいと言っていたとあいつに伝えておいてやろう。フェニックスのやつも喜ぶぞ」
白虎さんの言葉にコクコクと頷く。
ヒヨコも嬉しいです。
そこで、魔王が白虎さんに問いかけた。
「ところで、白虎は何をしに来たんだ?」
「久々にデュセルバート様と陛下の顔を見に。ついでにフェニックスを下したというヒヨコと手合わせをしに」
「ああ、白虎は強い者との手合わせが好きだからな」
「そういうことです」
ほうほう、やっぱり白虎さんはバトルジャンキーなのか。
そんなことを考えながらぽへっと白虎さんを見ていると、白虎さんがこちらを見た。
「自分は全く関係ないみたいな顔してるが、ヒヨコも俺と同じ穴の狢だろう。戦ってる時のヒヨコは生き生きしてたぞ」
「そう?」
「ああ、俺も久々にいい刺激になった。鍛錬になるからヒヨコが手合わせしたい時はいつでも付き合うぞ」
「ほんと!?」
ヒヨコのつぶらな瞳がパァッと輝くのが分かる。
「じゃあ、たたかいたくなったらびゃっこさんのところにいくね。まいにちでもいい?」
そう言うと、白虎さんの表情がスンッとなった。
「あ、いや、毎日はちょっと……ヒヨコの実力だと俺の体がもたないから……。ほどほどの頻度で頼む」
「りょーかい」
ヒヨコ、気のいい兄貴をゲットしました。





