ひよこ、父様が帰宅する
父様は、ほんとうに数日で帰ってきた。
手を広げた父様が満面の笑みで駆け寄って来る。
「ヒヨコただいま~!」
「とうさまおかえりなさい!!」
私の目の前に来ると父様がしゃがんでくれたので、人型になっていた私はその首に手を回し、ぎゅむっと抱き着いた。
「ヒヨコ寂しくなかった?」
「ん~、ちょっとだけ」
「おや」
私が素直にそう言ったことを父様は不思議に思ったようだ。ちらりと私の後に立っている魔王に視線を向けた。
そして、背後にいる魔王が苦笑する気配を感じる。
「父様がいない間になにかあったみたいだね?」
「うん。でもちょっとだけよ?」
「そうなの」
ヒヨコは上手く誤魔化せたつもりでいたけど、父様は後で魔王に自分のいなかった数日の出来事を聞いたらしい。そういえば魔王に口止めしてなかったね。別に父様にバレてもそこまで困らないし。……ちょっと恥ずかしいだけで。
父様から向けられる生温かい視線にひよこ姿に戻った私は頰を膨らませた。
「ふふ、ヒヨコはまだ赤ちゃんなんだから一人で寝られないことはそんなに恥ずかしいことじゃないよ。精神年齢というのは体に引っ張られるものだからね。だから我もいつまでもこんな感じなんだし」
「たしかに」
すごい説得力だ。
確かに何百年、何千年と生きてる父様ならヨボヨボのお爺ちゃんみたいな話し方してても無理ないもんね。だけど実際は見た目に見合った若々しい話し方をしている。中身もそれに比例して若々しいし。
なんだ、じゃあヒヨコが甘えん坊なのもしょうがないんだね。このぴよぴよの赤ちゃんボディに精神が引っ張られてるんだ。
そう思ったら一人寝ができなかったことも、次の日魔王に甘えたこともそんなに恥ずかしいことじゃない気がしてくる。みんなの対応も赤ちゃんならこんなもんだよなって感じだったし。
「ふふ、安心した?」
「うん」
父様に両頬をぷにぷにされる。
「ところでデュセルバート様、人界の方はどのように?」
魔王が父様に聞く。
「ああ、問題なく掌握してきたよ。でもヒヨコへのお土産はいいのがなくて持ってこれなかったんだ。ごめんね?」
「ううん、とうさまがぶじにかえってきたならそれでいい」
「ぎゃんかわ」
ひょいっと両手で掬われ、頬同士をスリスリされる。
「はぁ、うちの子はなんてかわいいんだろう。魔王もそう思わない?」
「ああ、ヒヨコはかわいい」
「えへへ」
ヒヨコうれぴっぴ。
「もうかんわい~んだから。今日は父様も一緒に寝てあげるからね、もう怖くないよ」
「ありがととうさま」
その日は、魔王の枕元で数日振りにニワトリになった父様の胸毛に埋もれて寝た。
父様の胸毛の下はとても心地良い温かさで、とてもしっくりきた。ここが帰って来るべき場所みたいな、そんな感じ。
その日の夜は、一つも怖い思いをすることなく眠りについた。
やっぱり睡眠って大事だよね。
ヒヨコもう父様の胸毛と魔王がいないと寝られないや。
新作、「お飾りの皇妃? なにそれ天職です!」を投稿しました! 読んでいただけると幸いです!
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