ひよこ、甘えん坊になる
見事、一人ねんねに失敗したヒヨコです。
次の日の朝、出勤してきたシュヴァルツが私を見てぽかんと口を開く。
「ひ、ヒヨコ様? どうしたんですか?」
「ひよこ、まおーにあまえてるの」
私は人型になり、魔王の膝の上にちんまり座っていた。人型の私も大分小さいので魔王の仕事の邪魔になるようなことはない。
むっつりとした顔で甘えていると言ったヒヨコにシュヴァルツは混乱したようだ。視線で魔王に助けを求める。すると、魔王は苦笑いしてシュヴァルツに返した。
「昨日一人寝に失敗してからずっとこうなんだ。怖い思いをしたんだろうからそっとしておいてやってくれ」
「は、はい……!」
魔王の配慮が心に沁みわたる。
一人ぼっちの暗闇が怖かったのもあるけど、一人寝ができなかったことに対してもちょこっとショックを受けているのだ。
ヒヨコ、しょぼ~ん。
そして朝から情緒が不安定な私はより魔王にしがみつきやすい人の姿になっているというわけだ。
ヒヨコ姿と同じ黄色い髪の毛を梳いてくれる魔王の手が優しくて、また涙が出そうになる。
「ぴぃ……」
「ああヒヨコ様! おいたわしい……」
ヒヨコ信者のシュヴァルツはこんなヒヨコを見ても不甲斐ないとは思わなかったようだ。うぅ、ありがとねぇ。
メンタルが中々回復しないので、今日はセミの抜け殻のごとく魔王に引っ付いていようと思う。魔王も好きなだけ甘えなって言ってくれたし。
無理して一人で過ごそうとした結果が昨日の体たらくだから、もうヒヨコは同じ轍は踏まないよ! 今日は魔王にべったり引っ付いてるんだ!!
謎の決意をし、私は魔王のお腹部分のシャツをギュッと握りしめた。
その後も、魔王はさすがのベビーシッター力だった。
ヒヨコがあくびをしたらデフォルメされたひよこが沢山描かれたブランケットで私を包み、背中をぽんぽんして寝かしつけてくれ、起きたらしっかり水分補給をさせてくれる。
魔王の膝の寝心地もばっちりだ。高級布団のように上質な眠りを提供してくれる。
私が来る前は子守りなんてしたことなかっただろうけど、すっかり手慣れている魔王だった。
そんな魔王は抱っこも上手だ。
ヒヨコは魔王の腕に座る形の抱っこが一番好き。安定するし、魔王の首にぎゅっとしがみつくとあったかい。移動は全部これでいい気分。
魔王に出会ってからの私はほとんどひよこの姿で過ごしてたはずだけど、いつの間にこんな抱っこを習得したんだろう。陰でこっそり育児書でも読んだりしているんだろうか。ちょっと気になる。
シュヴァルツから連絡がいったのか、この日はみんなが優しくしてくれた。いつもヒヨコに挑んでくるあの三人までもが優しかった。
みんながみんな自分のことを気遣ってくれるのが伝わってくると、嬉しいのと同時にちょっと申し訳なくなる。
まっててね! ヒヨコすぐに回復するから!!
そう決めた私はその後、ことさらに魔王にべったりし、その日のうちにメンタルを回復させた。
ハグがストレスを解消するってほんとなんだね。
短編、「王子の婚約者だけど冤罪をかけられました。彼らを嘘つきにしないように冤罪内容を全部ほんとにしてあげようと思います!」を投稿しました!
是非読んでいただけると幸いです!!
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