ひよこ、ペットが飼いたい
「ねぇねぇあおかみ」
「だから! 僕の名前は青髪じゃなくて―――」
「あおかみ」
「はい」
しゅんとする青髪。
青髪達は今日もヒヨコにボコされて、ついさっき目が覚めたところだ。そしてヒヨコは今日も青髪達からお菓子を巻き上げた。
やっほ~い。
地べたに座り込んでいた青髪達もよいしょっと立ち上がり、ヒヨコと同じ席に着いてくる。最近では自分達の分のおやつも持参するようになったのだ。
この人達、ヒヨコのこと排除しようとしてたよね?
魔王達に抗議文を送った三人が、今やヒヨコと仲良くお茶してるんだけど。いつの間に懐かれたのか不思議。これが物語とかでよくある敵が味方になるってやつかな? にしては強敵感が足りないけど。
どこに何があるかも心得たもので、今はカップに紅茶を注いでいる。お茶っ葉も青髪達が持参したものだ。
みんなが席に着いて落ち着いたところで私はもう一度話を切り出した。
「ねぇねぇあおかみ」
「なんだ?」
「ヒヨコ、ペットがほしい」
「ペット? なんで急に……」
「……」
なんどでも立ち向かってくる青髪達がわんちゃんみたいだからとは、流石のヒヨコでも言えない。
「ヒヨコ、もくひする」
「なんとなくいい理由でないのは察した」
三人の目がスッと死んだ。ヒヨコに何回もボコされたからかみんな自衛が上手くなったよね。ちょっと前の三人だったら嬉々として墓穴を掘ってたもん。
「魔王様やデュセルバート様ならいくらでも用意してくれるんじゃないのか?」
青髪の手下の緑髪が言う。
「う~ん、とうさまにいったら『え!? ペット!? 父様じゃダメなの!?』って」
「えぇ……」
「ね、とうさま」
「うん」
「「「うわっ!!!」」」
突如現れた父様に三人がビックリして仰け反る。
今日はニワトリ姿の父様だ。私は人型で椅子に座っているので、父様を膝の上に抱える。もさふわっとしてていい感じだ。
崇拝する父様の登場に三人の瞳がキラキラする。
「でもとうさまはペットじゃないじゃん」
「そうだけど。ヒヨコに動物のお世話はまだ早いでしょ」
「シュヴァルツがおせわする」
「最初っから人任せにする気だったのね。流石我の子。でもシュヴァルツにお世話を任せるのはどうなの? あの子結構なおっちょこちょいじゃない」
「たしかに」
うっかりミスが多いというか、不器用なんだよね。あんまり弱い動物だとシュヴァルツのうっかりミスで死んじゃいそう……。
最悪の事態が思い浮かんでぶるりと震える。
……自分でお世話した方がマシかもしれない。
「ヒヨコ、やっぱりじぶんでおせわしようかな……」
「それがいいと思うよ。ちゃんとしたペットのお世話はまだ無理だろうからまずは昆虫とか飼ってみたら? 魔王も昆虫とかならいいって言ってたよ」
「うん! そうする!」
ヒヨコ、虫も大丈夫だもん。
早速森に虫を採りに行くためにシュヴァルツを呼びに行く。
丸っとした父様を頭に乗せてテテテッとシュヴァルツに駆け寄った。
「ヒヨコ様どうしましたか?」
「シュヴァルツ! むしとりにいこ!!」
「虫……ですか……?」
シュヴァルツの顔がサァっと青くなった。
あ、ヒヨコわかる。これ虫が苦手な人の反応だ。
「わ、分かりました! ヒヨコ様のためとあらば!!」
「やっぱいいや。シュヴァルツはおるすばんしてて」
声が上ずってるし全身がプルプルと震えている。こんなシュヴァルツを連れて行くほどヒヨコは鬼じゃないよ。
来なくていいよと言うと、シュヴァルツはあからさまにホッとしてた。
「―――仕方ない、君達、荷物持ちとしてついて来たまえ」
「「「は、はい!!!」」」
父様が声を掛けたのは青髪達だった。
父様の事が大好きな青髪達は良いお返事をした後、嬉々として森に行く準備を始める。
よし、かっこいい虫を捕まえるぞ!!!
―――あ、そういえばヒヨコ、部屋で虫を飼うつもりだけどシュヴァルツ大丈夫かな? ……まあいっか。
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