ひよこ、ぼこした
『おもてでろやこらぁ!!!』
ヒヨコがそう言うと、お屋敷の中がにわかに騒がしくなった。
そのまま暫く待っていると中から三人の青年が出てきた。いいところのお坊ちゃんらしく三人が三人小綺麗な格好をしている。
「お、ヒヨコ運がいいな。この後カチコミ入れようとしてたとこの坊ちゃんたちも揃ってんぞ。行く手間が省けたな」
「いっせきにちょうだね」
日頃の行いがいいからかもしれない。
私の姿を認めた三人はクワッと目を見開いた。そしてダダダッとこちらに向かってくる。それを見てオルビスさんが「逃げないのか。度胸だけはあるな……」と呟いた。
先頭の青髪がヒヨコのことを指さして言う。
「お前! あの腐れ神の子か!!!」
「くされがみ……」
もしかしなくても聖神のことだよね……。
母(認めてない)がそんな風に呼ばれてるのはなんだか奇妙な気持ちだ。別に、あの神に情なんて特にはないけど。
「お前あの女の手先だろ! デュセルバート様の傍から排除してやる!」
「「そうだそうだ!」」
先頭の青髪の言葉に背後の二人が同調する。まさに取り巻きって感じの反応だ。
そこで、青髪達の視線がヒヨコの背後の人物に移る。ていうか、ヒヨコよりも遥かに大きいのによく今まで気付かなかったよね。
「―――ヒッ! お、オルビス様!?」
「よお」
片手を上げるオルビスさん。
それには気付いたのか気付かなかったのかは分からないけど青髪がギョロッとこちらを向く。
「おいお前! オルビス様を連れてくるなんて卑怯だぞ!!」
「ぴ?」
素で疑問の鳴き声が漏れる。
何が卑怯なんだろう。むしろ唯一の思いやりと言っても過言じゃないのに。
オルビスさんも疑問符を頭の上に浮かべていたけど、すぐ何かに気付いたようで納得した顔になる。
「ああ。俺は別にお前らに何かをしに来たわけじゃないから安心しろ。陛下やデュセルバート様に命令された時はそりゃあ別だがな」
ああ、私がオルビスさんに泣きついたと思われたのか。ヒヨコに頼まれてオルビスさんが自分達を懲らしめに来たと思ったんだね。
でも、なんでそんな勘違いするんだろう?
すると、オルビスさんがボソリと呟いた。
「……そういえば、末端は聖女と交戦させるのは避けてたな。弱いから。それでヒヨコの実力を甘く見ているのか」
「なるほど」
結局みんな生きて帰ってるから噂程強くないと思われたのかもしれない。
青髪が再度オルビスさんに確認する。
「―――じゃあ、オルビス様は手出しされないんですね!?」
「ああ、俺は手出ししない。やばそうになったら止めには入るけどな」
その言葉を聞いて青髪達の顔が不満そうな表情に変わった。今そんな顔をしたこと、後で地に額をつけてオルビスさんに謝りたくなるよ。
だって、「お前達がやばそうだったら止めに入ってやるからな」ってことだもん。
「よし、じゃあやるぞお前達!」
「「ああ!」」
そうして三人が一斉に魔法を放ってきた
―――ので、羽の一振りで全部消した。
「……へ?」
ポカンとする青髪達。
次の魔法を放つのも忘れちゃってるけど、ヒヨコはそんなのを待つほど優しくない。
「ひよこきーっく!!!」
呆けた顔の青髪達に魔法を乗せて威力たっぷりのひよこキックをお見舞いする。
「「「ぐはぁっ!!!」」」
三人が綺麗に吹っ飛んだところで、オルビスさんストップが入った。
「むぅ、まだ一発しかおみまいしてない」
「もう戦闘不能だから諦めてくれ。ほら、あんな遠くまで飛んで行っちゃっただろ」
見てみると、三人はかろうじて見えるくらいの距離でのびていた。
確かに、気絶してるのでこれ以上はオーバーキルだ。
「ひよこ、しょうり!!」