ひよこ、物申される
最近、なんか父様ズとシュヴァルツの表情が暗い。
でも落ち込んでるんじゃなくて、なんか静かに怒ってる感じ。
「みんなどうしたの?」
「「「……」」」
え? 無視された? ヒヨコないちゃう。ぴぃ。
まあ、それは冗談で、きっとヒヨコには言いにくいことなのだろう。なにかは分からないけど。適当に誤魔化してくれたらヒヨコも大人しく引き下がるけど、優しいみんなはそんなことはしたくないんだろう。気まずそうな表情でただこちらを見ている。
う~ん、これは一旦退散しようかな。みんな話しづらそうだし、ヒヨコがいるとそのことについても話せないだろうし。
よし、私は空気の読めるひよこだ。
「ひよこ、オルビスさんのところにあそびにいってくるね。シュヴァルツはおいてく」
「ん? あ、ああ、気を付けて行くんだよ」
「行ってらっしゃいませ」
いつもはついてくるシュヴァルツだけど、今日はついてこないようだ。
……なんとなく面白くない。
「―――オルビスさん!」
「お~ヒヨコ、今日は人型なのか? かわいいな~」
抱っこされて高い高いされる。
「えへへ」
―――ハッ! ちがう、和んでる場合じゃなかった。
「オルビスさんオルビスさん」
「ん?」
「さいきんまおーたちのごきげんがわるいんだけど、なにかしってる?」
そう聞くとオルビスさんはスッと私から視線を逸らした。絶対知ってるね。
ジトリした目をするとオルビスさんは私を抱っこしたまま顔ごとそっぽ向いた。
「ひよこにいえないこと?」
「ん~、言えなくはないけどあんまり言いたくないことだな」
「でもひよこきになる」
「え~? 困ったなぁ」
みんなの様子からして、多分ヒヨコにとってはよくない情報なんだろう。でも子どもの好奇心を甘く見ないでほしい。
オルビスさんの顔をジッと見つめる。
「ひよこ、きになる」
「う……でもなぁ……」
「おしえてくれなかったら……どうしよ。ボコす?」
「物騒だな!」
でも、オルビスさんよりヒヨコの方が強いし。
「……はぁ、デュセルバート様達には俺が教えたって言わないでくれよ?」
「うん」
父様達にはオルビスさんのところに遊びに行くって言ってきちゃったけど。まあいっか。
「一部の魔族……ほんとに一部なんだが、ヒヨコの存在が気に食わないやつがいるらしく、この前陛下宛に抗議文が送られてきたんだ」
「なんて?」
「かいつまむと、半分は聖神の力から生まれたヒヨコのことが気に食わないみたいだな。あとは……いや、なんでもない」
「……」
気になる。でもこの先はほんとに言いたくなさそうだから聞かないでおく。
でも、まあ魔族のみんなは聖神のこと大嫌いだからね。気持ちは分からんでもない。父様は今はかわいがってくれるけど、別に父様が私を生み出したいと思って私が生まれたわけでもないしね。もしかしたらそんな感じの事も書いてあったのかもしれない。
「―――つまり、ひよこのそんざいがきにくわないひとがいるってこと?」
「……」
無言は肯定だよね。
まあ、でも魔族は実力主義。
ヒヨコ、文句を言う人はぶちのめすだけ。





