ひよこ、迷子を見つける
「シュヴァルツ~! シュヴァルツどこ~!!」
大声で呼んでみてもシュヴァルツからの返事はない。
依然として姿も見当たらない。
「シュヴァルツ、まいご……?」
「……そうみたいだねぇ」
まさか、ヒヨコじゃなくてシュヴァルツの方が迷子になるなんて。予想外だ。
私は父様の手をギュッと握り直した。自分まで迷子になるわけにはいかないからね。父様も同じ危機を感じたのか、つないだ手を離してスッと私を抱き上げた。
父様の首元の服をギュッと掴む。
「さて、じゃあシュヴァルツを探してあげようか」
「うん。あ、ヒヨコさっきいいとこみつけたよ」
「いいとこ?」
「うん」
首を傾げる父様を誘導し、私達は目的地にたどり着いた。
その建物の看板には『迷子預かり所』と書いてある。
「よびだしもしてますってかいてたから、シュヴァルツをよびだしてもらおう!」
「おお、ヒヨコは天才だね」
「ふふふん」
そして父様は私を抱っこしたまま人混みをかき分け、迷子預かり所へと向かった。
迷子預かり所は広くはないけど、中は子どもの気がまぎれるようにか明るい色の家具や壁紙が多く、おもちゃもたくさん置かれている。
中には子ども用の小さな椅子がいくつか置かれていて、迷子になったのか何人かの子どもなどが座っていた。などというのは、子どもじゃない人も混ざっていたからだ。
小さな椅子に似つかわしくない、すらりとした背の高い男と目が合う。
「ヒヨコ様!」
「シュヴァルツ~!!」
「ちょっとちょっと、我もいるんだけど」
シュヴァルツがパァッと嬉しそうな顔になり、こちらに駆けよってきた。若干涙目になってる気がするのは指摘しないであげた方がいいんだよね?
シュヴァルツが父様ごと私にひしと抱き着いてくる。不安だったんだね。そういえばシュヴァルツも魔界に来てからほとんど出歩いてなかったし、街慣れしてないもんね。
手を伸ばしてシュヴァルツの頭をよしよし撫でてあげる。
「お~、よしよし、まいごこわかったね~」
「いえ別に。冷静にここまできました」
「……」
後ろにいる係の人達の生温かい目を見る限り、ウロウロしてるのを連行されたんだろうけど、ヒヨコは気遣いのできるひよこだから触れないであげる。
シュヴァルツが落ち着いた後、父様が口を開いた。
「二人ともどうする? もう帰る? それともせっかくだからごはん食べる?」
「ごはんたべる!」
「ごはん食べます!」
「お、元気だね。じゃあ行こうか」
そうして、父様に連れてこられたのは屋台が出ている一角だった。やっぱりとても混んでるけど、いい匂いがそこかしこから漂ってきて食欲をそそる。
「高級料理は城でも食べられるからね、たまにはこういうとこの方がいいでしょ。二人ともなに食べたい? せっかくだし並んで買おう」
父様レベルだと並ばなくてもみんなが通してくれるのかもしれないけど、今日はお忍びだし、ちゃんと並ぶようだ。並ぶのも屋台の醍醐味ってことだよね。
幸い、魔法を駆使して料理をしてるからかそれほど待たずに品物を買うことができた。
私達が買ったのはポテトと唐揚げだ。
唐揚げをつまみ、一口食べる。
「ん! おいひい!!」
あつあつで、味付けもしっかりしてておいしい。それに、こういう賑わった場所で食べるからより一層おいしく感じるのかもしれない。
シュヴァルツも瞳を輝かせてポテトを齧っていた。
「とうさま! つぎはあれたべたい!!」
「じゃあ並びながら食べようか」
屋台飯はすごく楽しくて、いつもの倍くらい食べちゃった。
案外食べれちゃうもんだね。





