表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/192

ひよこ、神殿がほしい



「デュセルバート様への贈り物は神殿の方に捧げておきました」

「ああ、ありがとうね」


 父様がおじいちゃん達にお礼を言う。格段に偉い立場でもお礼を忘れないのはいいことだよね。


「ところで、なんでしんでん?」


 贈り物なら直接渡せばいいのに。


「ああ、ヒヨコはまだ知らなかったね。神殿に捧げられた供物は直接(俺たち)の力になるんだよ」

「そうなの?」


 魔王を見ると、コクリと頷かれた。ほんとのことみたい。


「もらったものは後で回収してありがたく使わせてもらうね」

「はい。こちらこそありがたき幸せです」


 おじいちゃん達が恭しく頭を下げる。


「そうだ、丁度いい機会だし一旦神殿に帰ろうかな。魔王とヒヨコも来る?」

「いく!」

「我も行こう」


 父様の神殿に行くのは三度目だ。なんか、神聖な空気が漂ってるいい場所だったことは覚えてる。ヒヨコ、あの雰囲気好き。

 初めて行った時、なんだか懐かしい気配を感じた気がしたけど、あれは父様の気配だったんだね。

 魔王が私の頭を撫でた。


「懐かしいな」

「そうだねぇ。あれからいろいろあったから、ずいぶんまえのことみたい」


 実際はそんなに前のことでもないのに。


「ヒヨコ頑張ったな」

「ぴ!」


 魔王がしみじみと私を褒めてくれる。魔王に褒められるのは何回でも嬉しい。

 嬉しかったから魔王の肩に飛び乗り、ぴぴぴっと頬ずりしておいた。



***




 そして私達は父様の神殿にやってきた。

 相変わらず神聖で澄んだ空気が漂っている。心なしか息が吸いやすいし、なんか浄化されてる気がする。

 駆け回りたいけど自重。


「―――お、思ったよりも供物多いな」


 父様への貢物はあまりにも量が多く、もはや祭壇に乗りきっていなかった。祭壇だって決して小さいわけじゃないのに。


「おじいちゃんたちだけじゃなくて、みんなきてくれたんだね」

「そうだね。ありがたいことだよ」


 父様はそう言って愛おしそうに供物の山を見詰めた。神様にとって信者の存在ってどういうのなんだろう。ヒヨコ、まだ神様じゃないし信者さんもいないからわかんない。

 でも―――


「とうさま、うらやましい」

「え?」

「ひよこもしんでんほしい」


 キラキラと大人二人を見上げる。


「ヒヨコにはまだ早いんじゃないか?」

「うんうん、父様も神殿を持つのはもうちょっと大きくなってからの方がいいと思うな」

「むぅ」


 魔王と父様の二人に止められ、拗ねた私は頬を膨らませる。


「ひよこ、しんでんほしい」

「だぁ~め。それはもうちょっと神様として成長してからね」


 ヒヨコにあまあまの父様が珍しく頑な。びっくりして目がまんまるになった。


「まお~」


 私はもう一人の保護者、魔王に泣きつく。


「う~ん、こればかりはデュセルバート様が駄目だと言うなら駄目だな」


 いくらかわいいヒヨコのお願いでもそれはな、と魔王。


「ぴぃ~」


 ぺしゃんと潰れる。

 でも、手に入らないとなるとますますほしくなるのがヒヨコの心理。


 ―――あ、そうだ、おねだりするから断られるんだよ。自分で用意しちゃえばいいんだ。







 魔王城に帰った後、私は二人に自分の神殿を見せた。


「ぴ! これ、ひよこのしんでん」

「これ……」


 ヒヨコの用意した神殿に心当たりたっぷりの魔王が目を見開く。そう、私が神殿に選んだのは前に魔王からもらったひよこサイズの家だ。


「これひよこのしんでんにする!」


 私は両羽を腰に当てて宣言する。

 すると、魔王と父様が同時に口元を手で押さえた。


「か、かわいい。うちの子かわいすぎ! 魔王もそう思わない?」

「思う」


「ねえとうさま、これしんでんにしてもいい?」

 

 首を傾げて父様に聞く。


「神殿ってそういうものじゃないんだけど……まあ、これくらいならいいか。ヒヨコがちゃんとした神様になったらもっと大きな神殿作ろうね」

「うん!」


 かくして、ヒヨコは神殿(暫定)を手に入れました。










お読みいただきありがとうございます!


よかったら↓の☆☆☆☆☆を押して評価していただけると嬉しいです!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミックス2巻8/1発売!
書籍3巻10/10発売!
Twitterです!更新報告とかしてます!
コミカライズはじまりました!!

「聖女だけど闇堕ちしたらひよこになりました!」の書籍3巻発売中!
「聖女だけど闇堕ちしたらひよこになりました!」
ぜひお手に取っていただけると嬉しいです!

― 新着の感想 ―
[良い点] おさな可愛い。
[気になる点] 愉しく拝読しています。 今回の話で  父様の神殿に行くのは二度目だ。 とありましたが、三度目ではないでしょうか? (核を戻す時に神殿に訪れていませんか?) 勘違いであれば、すみません…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ