ひよこ、諸侯にご挨拶
「ぴぴ」
「おはようひよこ」
「おはよう」
起きると、既に起きていた父様と魔王に挨拶される。
「よく寝てたな。もうすぐ昼だぞ」
「なぬ」
父様のお腹の下から這いずり出す。
すると、ヒヨコのお腹がぐぅ~と鳴った。
「ヒヨコ、おなかすいた」
「それはいけない! 早くごはんにしよう!」
「そうだな」
父様と魔王が慌ただしく動き始める。
魔王が私をつまんで父様の背中に乗せる。すると、父様はバサバサと翼をはためかせて飛び立った。
ニワトリは飛べないはずだけど、それ以前に父様は神様なのでそんなことは関係ない。
「魔王先いってるよ~」
「分かった」
いつの間にか父様と魔王の連携がとれててヒヨコびっくり。
父様はスーッと飛び、あっという間に食堂に辿り着いた。食堂からは既にいい香りが漂ってきている。もうごはんができてるみたい。待たせちゃったかな。
父様は食堂に着くや否や人型になり、私をぴよっと机に置いた。
「はいヒヨコ、ごはん食べようね。ちゃんとお水も飲むんだよ」
「は~い」
父様に介助されてごはんを食べる。すると、後から魔王がやって来た。後ろにずらずらとおじいちゃん達を携えて。
「え? もう来たの? じじい達我慢ができなさすぎない?」
父様がうげっというような顔になる。
誰だろう。父様の知り合い?
ぴよっと首を傾げる。
「とうさま、あのひとたちだれ?」
「暇をもてあましてるじじぃだよ~」
そういって父様が私の口にハッシュドポテトをつっこんでくる。おいしい。
もっもっとハッシュドポテトを食べているとおじいちゃん達が近付いてきた。なんか、普通の魔族からは感じない圧を感じる。ゼビスさんが目の前にいる時みたいな感じ。
一番先頭にいたおじいちゃんがうやうやしく跪く。
「ヒヨコ様、我らにご挨拶をさせてください」
「ぴ?」
予想外に丁寧な対応をされたから動揺して父様を見上げる。すると、父様は微笑んで言った。
「彼らはヒヨコに挨拶をしたいらしい。よければいいよって言ってあげな?」
魔王を見ると、父様の言葉に同意するようにコクリと頷かれた。
おじいちゃん達に向き直る。
「いいよ」
「ありがとうございます。我らはもう残り少ない原種の種族、その長です。まあ、ただ長生きしているだけの爺ですな」
「ヒヨコです」
やけに鋭い牙を持っているおじいちゃんが指を差し出してきた。
握手かな?
そう思って私も右羽を差し出す。そしてちょこんと指先と羽を触れ合わせた。
「ホッホッホ、かわいいのう」
「おいズルいぞ。儂とも握手をしてくれ」
「我もじゃ」
ヒヨコの前におじいちゃん達の列ができる。
なんか、人気者になった気分。
嬉しくなってみんなと握手しようとした。食べかけのごはんのことも忘れて。
「「こらヒヨコ、握手はごはんを食べ終わってからにしなさい」」
魔王と父様の声が被る。
「……は~い」
二人の顔が怖かったので、ヒヨコは大人しくごはんに戻りました。
料理長が作ってくれたごはんはとてもおいしかったです。
食後、来てくれたおじいちゃん達みんなと握手をした。
「デュセルバート様にお子様ができたことはとても喜ばしいことですからな、我ら一同で贈り物を持って参りました」
そう言ったおじいちゃんの背後に何かの山が現れる。
「ぴ?」
目を凝らすと、なんだかカラフルで可愛らしい箱の山。
おじいちゃんがにこやかに言う。
「ヒヨコ様にはおいしいお菓子やかわいらしい洋服、おもちゃなどをもって参りました」
おじいちゃんからもう一度箱の山に視線を戻す。背の高い魔王を超えるほどの箱の山。
これ、全部ヒヨコの……?
―――それは、子どもにとって夢のような光景で……。
「ピィィィィィィィィィ!!!!!」
喜びのあまり、ヒヨコは後ろにひっくり返った。





