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ひよこ、疲れる





「ひよこでろ~ん」


 式典が終わり、疲れ切った私は今、ソファーでゴロゴロ転がっている。


「つかれた~。もうドレスぬいでいい?」

「ああ、いいぞ」

「やった~」


 魔王の許可を得て私はひよこの姿に戻る。するとあら不思議、一瞬でドレスが脱げちゃう。


「お、ヒヨコ頭いいね」


 俺もマネしよ、と言って父様がニワトリの姿になる。そしてサイズが合わなくなった洋服の下からペタペタと這い出てきた。


「魔王、この後も何かあるの?」

「あるにはあるが、もうヒヨコは限界だろう。寝かせてやってくれ」

「分かった」


 魔王に返事をして、父様は私を背中に乗せた。もこもこの羽毛が極上の寝心地。


「まおーはどこいくの?」

「諸侯が集まっているから食事会だ」

「おいしーものたべるの? ひよこもいこっかな」


 そう言うと、魔王が微笑んで私の頭を撫でた。


「ふ、疲れたのだろう。今行ったら確実に揉みくちゃにされるぞ。暇な老人が多いからな」

「そーそー、おいしいものは後でも食べられるからヒヨコは父様と休んでようね」


 私をあやすように父様がゆっさゆっさと揺れる。


「でも、ひよこごあいさつしなくていいの?」

「ふふ、ヒヨコはいい子だね。神に挨拶を強要する者なんて魔界にはいないよ。まだしばらくはいるだろうから、気が向いたらご挨拶してあげなさい」

「……は~い」


 なるほど、魔界でも神様はちゃんと偉いんだ。 

 ヒヨコ、まだ神様見習いだけど父様とおんなじ扱いでいいのかな……?

 首を傾げていると、魔王はいつの間にかいなくなってた。お食事会に行っちゃったんだろう。


「は~い、ヒヨコは父様とお昼寝だよ」


 ベッドに連れて行かれ、お腹の下に敷かれる。敷かれるって言っても全然重くないけど。


「ひよこねなきゃダメ?」

「おや? 眠かったんじゃないの?」

「う~ん、なんかめがさめてきちゃった」

「あらら、こりゃとんだ天邪鬼さんだね」


 寝られない時は無性に眠くなっちゃうけどいざ寝ろってなると急に眠気が覚めることあるよね。ヒヨコ、今それ。


「う~ん、別にいいけど、この時間より後に寝たら朝までいっちゃうでしょ? そしたら夕飯食べ損ねちゃうから、父様は今のうちに寝ちゃった方がいいと思うなぁ」


 意外と私の栄養管理には厳しい父様。寝ろねろと私を腹毛の下にしまってくる。


「父様が毛繕いをしてあげるから寝な」

「ぴ~」


 父様が嘴で私の毛をついばみ、毛繕いをしてくる。

 うぅ……極上の腹毛と毛繕いのダブルパンチはずるいよ……。ひよこ、ねちゃう……。


 ヒヨコが父様の寝かしつけに勝てるはずもなく、あっという間に眠りについてしまった。



***



 ヒヨコが眠りについた後、にわかに廊下が騒がしくなる。

 そして、どこかくたびれた様子の魔王が部屋に入ってきた。


「魔王、何事?」

「……すまない。どうしてもヒヨコの顔が拝みたいと諸侯が聞かなくてな」


 魔王も抵抗はしたのだろう、口にはせずとも顔が疲れている。


「目が悪いから顔が見えなかっただの、呑気に待ってたらいつ寿命が来るかわからないだのうるさくて……」


 実際、力のある魔族ならばテラスにいたヒヨコの顔を見ることなど造作もないし、歳よりとはいえ、あと500年は軽く生きる。

 要は、意外にも子どもや年寄りに優しい魔王に付け込んでいるのだ。 

 そんな魔王の性格を知っているデュセルバートは軽く溜息を吐く。


「はぁ、しょうがないな。見てもいいけど絶対に起こさないでよね。やっと寝たところなんだから」

「「「承知」」」


 デュセルバートが言い終わるや否や、老人達が部屋の中に入ってきた。


『おお、すぴすぴ寝ておるわ』

『かわいいお子様ですのう』

『人型もひよこ姿もかわいいとは、将来有望ですなぁ』


 ヒヨコを起こさないよう、ここまでの会話は全て念話で行われている。


『かわいいのう。あのゼビスがかわいがるわけだ』

『デュセルバート様、ぜひヒヨコ様にご挨拶させてください』

『ヒヨコがいいって言ったらいいよ』


 デュセルバートはそう言うと、ヒヨコを見せるのはここまでと言わんばかりにすっぽりとヒヨコを腹毛の下にしまった。









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