ひよこ、帰還する
転移で魔界に戻れば、ソワソワした魔王が待ち構えていた。
魔王が私に気付く。
「!」
「まおー!!」
たたたっと駆けて行き、私は魔王に飛び付く。
魔王は危なげなく私を受け止めて、ギュッと抱きしめてくれた。
「おかえりヒヨコ。無事でなによりだ」
「ただいまー!」
私も魔王をギュッと抱きしめ返し、ひよこの姿に戻った。
「ぴ」
既に見慣れたふわふわの毛並み。うん、もうこっちの方が落ち着くね。
魔王の手のひらの上にぴよっと着地する。
「ひ、ヒヨコ……早くこれを受け取ってくれ」
「あ、そうだね」
ダラダラと冷や汗を流すニックさんが回収してきた核を差し出してくる。
そりゃあ自分達の信仰してる神様の命みたいなもの預かってたら緊張するよね。
「まおー、これかいしゅうしてきたよ」
今の私のちっこいボディでは核は受け取れないので、ニックさんから魔王に直接核を渡してもらう。
魔王はしっかりと核を受け取ると、重々しくうむ、と一つ頷いた。
「確かに受け取った。四人とも、大儀であったな。後で褒美を取らせよう」
魔王の言葉に、三つ子は顔を見合わせた。
「いや、俺らは……なぁ」
「ああ」
「なにもしてないので褒美とかは……」
せっかくご褒美をもらえるのに、三人は辞退しようとしてる。よくないぞ。三人は何もしてなくないのに。
「まおー、さんにんはちゃんとはたらいてたよ。さりげなくひとばらいしてくれたりとか、もろもろ」
たぶん、私が気付いてないところで色々サポートしてくれてたんだと思う。
私の言葉に魔王は頷いた。
「そうか。お前達、ヒヨコが役に立ったと言うのだ。褒美を辞退することは許さぬ」
「「「は、はい……!」」」
感激したように三つ子が頷く。
「あ、そうだ陛下、よかったらこれ使ってください」
そう言ってディックさんが差し出したのは紙の束。
「これはなんだ?」
「神殿内にあった機密文書です。やつらを脅す時に使ってください」
「……脅す時があるかどうかは分からんが受け取っておこう」
成果を魔王に受け取ってもらえると、ディックさんはパァっと顔を輝かせた。
そして、ニックさんもおずおずとどこからか紙の束を取り出す。
「あ、あの、陛下、俺も影渡ってちょろっと王宮に行って、魔界の侵攻に関する決議書を盗んで来ました。よかったらお使いください」
「うむ。受け取っておこう」
魔王に書類を受け取ってもらえたニックさんはパァっと顔を輝かせた。
そして次にリックさんが前に歩み出る。
「陛下! 俺も二度と魔界を侵攻しようだなんて考えないように教皇を脅しておきました! ついでにあやつの髭を毟り取ってきたのでお受け取りください!」
「それはいらぬ」
「!!」
リックさんはあからさまにショックを受けた顔をした。
ガーンという効果音が聞こえてきそう。
「―――だが、教皇を脅したのはよくやった」
「!!!」
リックさんがパァッと以下略。
魔王優しいね。
帰る前にちょっと時間をくれって言われて三人を待ってたんだけど、みんなそんなことしてたんだね。
私は魔王の手のひらから肩にぴよっと飛び乗った。
「まおー、核もどしにいく?」
「そうだな」
何年も待ってたデュセルバート様にとっては数分とか数時間遅くても変わらないかもしれないけど、早く戻してあげたい。
「じゃあ飛ぶぞ」
「ぴ!」
魔王が転移を発動した。
瞬き一つの間に場所は変わり。目の前には見覚えのある真っ黒な祭壇。
私を肩に乗せた魔王は祭壇に歩み寄り、その上に核を乗せる。
―――次の瞬間、真っ黒な光で視界が埋め尽くされた。
「ぴっ!!」
眩しくて反射的に目を瞑る。真っ黒なのに眩しいなんて変なの。
その光は、一分間ほどかけてゆっくりと納まっていった。
そしてゆっくり目を開くと、そこには黒髪黒目の絶世の美形。街を歩いてたら比喩抜きで誰もが振り返りそうな男の人が空中に佇んでいた。
腰の辺りまである漆黒の髪もふよふよと宙に浮いている。
まず間違いなく、デュセルバート様だろう。
吸い込まれそうな真っ黒な瞳が私を捉える。
「―――ようやく会えたな、我が子よ」
「……ぴ?」
あ、そうか、私はこの神の核と聖神の力で生み出されたんだもんね。
聖神が母なら、この神は私のパパってことになるのかな……?
そこまで考えたところで視線を上げると、ひよことは似ても似つかない超絶美形が微笑んでこちらを見ていた。





