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ひよこ、おかしな展開に巻き込まれる




 その辺にあった花壇の中に気絶した勇者を隠す。

 まあバレないでしょ。花弁に隠れた地面部分を注視する人がいるとは思えないし。


 よ~し、気を取り直していってみよ~!

 そう思って踵を返した時、後ろにいた人と目が合った。それはもう、ぱっちりバッチリと。

 なんなら、私が勇者を花壇に隠すところを見ていた人はこの神殿の教皇だったりする。


「……きょうこうもボコすか」

『物騒だな……』


 ボソリと呟くと、影の中から小さな声でツッコまれた。

 いつからいたのかは分からないけど、勇者を花壇にインするところは確実に見られてるだろう。

 まあ、このじじいにも散々煮え湯を飲まされたし、勇者と同じ対応をするのはアリかな。……人界に来てから思考が物騒になってる気がする。早く帰って魔王とおねんねしよ。荒んだ気持ちを切り替えるには寝るのが一番だ。


 てっきりいきなり攻撃を仕掛けられるかと思ったけど、意外にも教皇は穏やかな声で語り掛けてきた。


「そなたが勇者を下したのか?」

「……うん」


 誤魔化しても無駄そうだから素直に答えた。


「そうか、実はな、その勇者は素行が悪くて困っていたのだ。どうやって勇者を気絶させたのかは知らぬが、勇者を花壇に埋めようとしたことは不問にしよう」

「……」


 とりあえず、勇者との会話や、私が聖剣を粉にしたところは見られてないらしい。

 ていうか、やっぱり近くにいる人間には勇者の本質はバレてたわけね。勇者がいなくなると困るから何も言わなかっただけで。


「先の聖女を殺したのは勇者だったのではないかと囁かれているくらいでな。あ、そういえばそなたは先の聖女に面差しが似ているな。どうだ? 聖女の座につかぬか? 中々後継者が見つからなくて未だに空席だからな」

「……」


 この狸じじい、勇者より使い勝手が良さそうなのを見つけるや否や、すぐに問題児の勇者を切り捨てにかかったな。こうやって最初は優しいフリをするのがこのじじいのやり口だ。

 勇者では魔族に敵わないと察したから、私を勇者の代わりに魔界に送り込むつもりなんだろう。


 咄嗟に口をついて出そうになった拒絶の言葉を、私はすんでのところで押しとどめた。

 そういえば、聖女を継ぐ時、本殿の地下に行った気がする。そこで祈りを捧げることで正式に拝命するのだ。

 ただ、その場所への行き方は教皇だけしか知らない。だから私も一度しか行ったことないし、その時は目隠しをされていたのだ。


 ここで聖女になるって言ったらデュセルバート様の核がある所まで連れてってくれそうだよね。多分、あるとしたらあの場所だろうし。

 あ、そう言えば祭壇の下に棺みたいなのがあった気がする。随分前のことだから曖昧だけど、中に何が入ってるんだろうって気になった記憶があるもん。

 うん、聖女になる気はないけど一先ずこの話に乗ったフリをするのはありかもしれない。


「いいよ。せいじょになる」


 私がそう答えると、影の中がざわつく気配がした。あれかな? 私が聖女に戻れるからって魔王達を裏切ったって思われてる? 

 なんか、一気に不愉快な気持ち。

 むぅっとしつつも影の中に「だいじょうぶ」と小声で言う。


 私の返事に教皇はパァっと明るい表情になった。

 魔王が喜んでくれたらあんなに嬉しいのに、このじじいが嬉しそうにしてても微塵も嬉しくない。


「では、今日からそなたは聖女だ! 早速継承の儀をしようぞ」

「……」

 

 教皇の言葉に無言で頷く。


 ……なんか、妙な展開になったなぁ。










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