ひよこ、大儲けの予感
ポーションを飲んだ魔王が若返った。
「若返りのポーションだったのか……? そんなの聞いたことないが……」
団長さんが呟く。
若返り? ヒヨコは回復ポーションを作ってたはずだけどな。
「いや、これは回復ポーションだぞ」
少し若返ってお肌がツヤツヤしてる魔王があっさりと言った。
「ただ、治癒力を高めるタイプじゃなくて細胞を若返らせるタイプだな。その効果が強すぎて軽く数十年は若返ったようだ」
それに疲労もとれて頭もスッキリしてる、と魔王が続けた。
つまりポーション作りは成功したってことかな? ヒヨコうれしっ。
魔王が私を自分の眼前に持ってくる。
「ヒヨコすごいぞ。ヒヨコはポーション作りの天才だな」
「ぴぴぴぴぴぴ!!」
手放しで褒められちゃった。喜びの鳴き声が口を突いて出る。
「……すごいです! こんなに効果のあるポーション初めて見ました! ひよこにこんな才能があるなんて!!」
シュヴァルツも大はしゃぎだ。ヒヨコも内心大はしゃぎ。
どうやらポーションは最初から成功してたらしい。余計な効果が付いちゃってただけで。半分冗談で「のむぶんにはだいじょうぶかもよ?」って言ったけど本当にそうだったらしい。いや、でもさすがに地面が溶けるポーションを飲むのは危険だよね。多分飲んだら怪我しちゃっても跡形もなく治るんだろうけど、そんなの誰も飲みたくないよね。
「ヒヨコ、これは売ったら大儲けできるぞ。世の中には外見を若く保つのに命を懸けている者が大勢いるからな」
「ぴ~!」
おお、ヒヨコってば大金持ちになれちゃう予感。
「おかねもちになったら、まおーにおうちかってあげるね」
「ははは、期待しているぞ。そうしたら魔王を引退後にはそこに住ませてもらおう」
もちろんヒヨコも付いてくよ。―――はっ! ちがうちがう、ポーションはお金稼ぎのためじゃなくて魔王達に疲れを癒すために作ったんだった。いけないいけない、本来の目的を見失うところだったよ。
「ひよこ、ぽーしょんうらない」
「? なぜだ?」
「ひよこ、まおーたちのためにつくったの。だからただでぷれぜんと」
ぴぴっと鳴くと、魔王が片手で目元を覆った。
「ヒヨコがいい子過ぎて胸が痛い。我は汚れていたのだな……」
「いえ、陛下は普通の思考だと思いますよ。ヒヨコ、それじゃあ仲のいい人にはタダであげてそれ以外の人には有料で売ったらどうですか?」
「! そーする!」
なんて名案。シュヴァルツは天才かもしれない。
「それじゃあ、騎士団からも依頼を出していいか? こんな強力なポーション願ったり叶ったりだ」
さっそく団長さんから注文が入った。団長さんなら無料で上げるよ? と言ったけど、ちゃんと騎士団で使うものだからそうはいかないらしい。だから仲良し価格でちょっとだけ割引することで話がついた。
騎士団以外にも、このポーションの話が広がったら富豪のおばさま方からの注文が殺到するだろうとのことだった。ヒヨコ、大富豪になっちゃったらどうしよう。
空気に触れると爆発したりとか、溶けちゃったりする回復ポーションはさすがに本来の目的では使えないけどそれはそれで使えるから少し安くはなっちゃうけど買い取ってくれるって。よかったよかった。
あれから何回か試してみた結果、色によってポーションについてる余計な効果が判別できることが分かった。これならヒヨコが頑張って余計な効果を付けないように練習する必要もないね、と言ったら魔王に苦笑いで「それは頑張ってくれ」って言われちゃった。
あ、できたポーションをゼビスさんとかオルビスさんに配り歩いたらとっても喜ばれたよ。みんないざという時に使うって。魔王曰く「どんな怪我でも瞬時に治せる」らしい。
確かに、なんでもない時に使っちゃうのはもったいないね。





