ひよこ、天才発明家になる
素材は集まったので、あとはブツを作るだけだ。
作るのは初めてだけどきっとできるでしょ。私はやればできるひよこだ。
本格的な物作りは初めてで、作ってる途中に爆発しないとも限らないから一応外で作業する。爆発しても大丈夫そうな所を探しながら魔王城のお庭を彷徨っていたら、結局騎士団の訓練場に辿り着いた。
訓練場の一角を陣取り、シュヴァルツから材料を受け取る。周りは何やらザワザワしてるけど無視だ。
私が今から作ろうとしているのは口にするものなので、できたものをいきなり渡すわけにはいかない。一回はしっかりと自分で試さないとね。
とりあえず一個作ってみよう。材料はかなり採ってきたから余裕があるし。
ガチャン、ガコン、ドッカーンと音を立てながら、試作品一号はなんとか完成した。
「まさかそれ、ポーションですか?」
「うん!」
その辺にあった適当な瓶の中には水色の液体が入っている。とりあえず色は問題なさそうだ。あとは味と効果だけど―――。
「「あ」」
ぱしゃん
やっちゃった。瓶のふたを開けるのにひよこの手は不向きで、誤ってポーションの入った瓶を倒してしまったのだ。倒れたのが丁度蓋が開いた後だったのがよくなかった。
しょうがない、もう一回作り直そう。
ほとんど中身の出てしまった瓶を起こそうとした時、異音が耳に飛び込んできた。
ジュワァァァァ
「?」
変な音だな、と思って音の発生源を探していると、こぼれたポーションが芝生を溶かしていた。
「ひぇぇぇぇぇぇ! なんか溶けてるじゃないですか!!」
「なんでだろ。でもあんがいのむぶんにはだいじょうぶかもよ? ひよこちょっとのんでみる」
「ダメですよ!」
瓶にちょっとだけ残っていたポーションを飲もうとしたら、シュヴァルツに取り上げられた。
「ひよこにポーション作りはまだ早かったんじゃないですか? 赤ちゃんは何でも口に入れたがるんですから」
「ひよこあかちゃんじゃないよ」
「赤ちゃんはみんなそう言うんです」
いや赤ちゃんは普通喋らないよ。
記念すべき試作品第一号はシュヴァルツの手で葬られた。ひどい。
その後、いくらシュヴァルツに止められても私はポーション作りを諦めなかった。
作っては爆発し、作っては物を溶かし、作っては煙を上げたけど、私は諦めなかった。
そうやって試行錯誤しているうちに、ついに一つも完成品を作れないまま夕方になってしまった。
「……ひよこ、そろそろ戻りましょう。すぐに日が暮れちゃいますよ」
「ぴぃ……」
爆発に巻き込まれ、煙を浴びまくった私の毛皮はボロボロだった。黄色かった毛は灰色にくすんでしまっている。そして心もボロボロだ。だって赤ちゃんだもん。打たれ弱いの。
せっかくいいこと思いついたと思ったのに……。
じんわりと目頭が熱くなる。
「ぴぃっ、ぴぃっ」
「ああひよこ、泣かないでください。仕方ないですよ、ポーション作りは難しいんですから。一握りの職人しか作れないんですよ」
シュヴァルツにすくい上げられて頭をなでなでされる。周りの騎士さん達も私が泣いちゃったことでにわかにざわつきが大きくなり始めた。
「―――何事だ。なぜヒヨコが泣いている」
「まおー」
いつの間にか現れた魔王に受け渡される私。
「工作が上手くいかなかったので泣いちゃいました」
「工作……?」
シュヴァルツの説明に魔王が首を傾げる。そして未だに煙を出し続けるポーションに目を向けた。
「ああ、ポーションを作っていたのか」
「ん」
ぴよぴよと泣きべそをかきながら頷く。
魔王は私を乗せていない方の手でもくもくと煙を出し続けるポーションを手に取った。
眼前に瓶を持ってきて観察する魔王。
「……なんだ、よくできているではないか。余分な効果はついているが」
「ぴ?」
次の瞬間、魔王がグイっと一気にポーションを飲み干した。
「「「!?」」」
ポーションを最後の一滴まで飲み干した瞬間、魔王の体が発光する。
「―――お、なんか若返ったな」
発光が収まると、そこには少し顔が若くなった魔王。
「「「え、ええ~~~!!!」」」
ポーションの効果に、その場にいた魔王以外の全員の声が揃った。





