ひよこ、招待状を書く
「ひよこはおちゃかいをひらきます」
「いいですね。いつにしますか?」
「そのまえにしょうたいじょうをかいて、みんなのつごうのいいときをきこうとおもう」
「おお、意外ですね。招待状なんて知ってたんですか」
「もちろんだよ!」
自分で出したことはないけど。
「しょうたいじょうのかみちょーだい?」
「すぐに用意しますね。内容は自分で書きますか? 私の代筆もできますけど」
「シュヴァルツ、もじかけるの?」
「ひよこの中で私はどれだけ低スペックなんですか。文字くらいかけますよ。インク瓶はよく倒しますけど」
「だよね」
シュヴァルツがインク瓶を倒してる様子が目に浮かぶ。しかも中身がたっぷりある時に限って倒しそうだ。
「でもヒヨコが招待状を書いた方がみなさん喜びそうですね。まずは自分で挑戦してみますか?」
「うん」
こう見えても私は一回フェニックスにお手紙を書いたことがあるのだ。招待状だって書けるはず。私はできるひよこ!
シュヴァルツが持ってきてくれた招待状用の紙に向き合う。
「ぴ!」
ふんぬと気合を入れるために一鳴きした。そして黒いインクが入った瓶にジャボッと片足を突っ込む。
「え゛」
「ぴ!」
シュヴァルツから変な声が出たのも気にせず、紙にインクの付いた足を走らせる。
―――よし、一枚目終わりだ。
「シュヴァルツふうとうにいれて~」
「……分かりました。えっと、これは誰宛てですか?」
「まおうだよ」
見れば分かるよね? と私は首をかしげる。
「……なるほど」
「なるほど?」
「いえ、なんでもありません」
微妙な顔をしたシュヴァルツは大人しく招待状を封筒に入れてくれた。
そして封をする―――。
「なにそれ!」
「シーリングスタンプですよ」
シュヴァルツが赤い蝋を溶かし始めたのが気になって、ズイっと近付いた。
「これを紙に垂らして、その上から模様の入ったスタンプを押すんですよ」
「へ~、そうやってたんだぁ」
聖女時代に何回かもらったことはあったけど、こうやって封をしてるとは知らなかった。
私の呟きにシュヴァルツが反応する。
「ひよこはシーリングスタンプを使った招待状かなにかをもらったことがあるんですか?」
「え!? ううん、みたことがあるだけだよ!!」
「そうですか」
「うん! ねえそれ、ひよこもやってみたい!!」
かっこいいし、とってもおしゃれだ。なによりぽんってやるのが楽しそう。
「ちょっと危ないからダメですよ。火も使いますし、そのふわふわの羽に蝋が付きそうなので」
「ぷぅ!」
頬を膨らませて不服さをアピールする。
「そんなかわいい顔してもダメです。さっさと次の招待状を書いてください」
「は~い」
しょうがない。人型になれた時にやらせてもらおう。シーリングスタンプはその時までのお楽しみだ。
聞き分けのいいひよこはその後、黙々と足を動かし、招待状を完成させた。
***〈シュヴァルツ視点〉***
陛下にひよこが書いた招待状を手渡す。そしてその中身を確認すると陛下は首を傾げた。
「これは……なんて書いてあるんだ?」
「ひよこに確認したところ、『いっしゅうかんごにおちゃかいをひらくから、よていがなかったらきてください』と書いたそうです」
「そなた有能だな。どうせ他の者も読めないだろうから、招待状を渡すついでに内容を伝えてきてくれぬか? 折角招待状まで書いたのに誰も来ないのではヒヨコが可哀想だからな」
「承知しました」
陛下に言われずとも、はなからそのつもりだった。ひよこの足文字なんて誰が読めるんだって話ですからね。
にしても、魔王陛下は本当にひよこを可愛がっているようですね。もはやただの親バカに見えます。
人界にいた頃の抱いていた魔王のイメージと実物との温度差で風邪をひきそうだ。





