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ひよこ、意外な真実を知る

感想、評価、ブクマ等ありがとうございます!

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「今日の訓練は終了だ」

「「「お疲れさまでした!!」」」


 訓練が終わり、騎士さん達が各々解散していく。


 私が話せるようになったことで意思の疎通がしやすくなり、訓練の幅もさらに広がった。騎士さん達の実力が上がっているのも感じるし、もう勇者達なんか楽勝で倒せるんじゃないかな。

 あ、そういえば、最近勇者達大人しいな。魔界騎士団のみんなも出動せず、こうして毎日訓練をしてるだけだし。なんでだろ。後で魔王に聞いてみよ。


「ヒヨコ、お疲れ」

「だんちょーさん! おつかれさま!」

「これからどこか行くのか?」

「うん! ちょっとおさんぽにいってくる!」

「元気だな」


 まだ散歩する元気があるのか……と、団長さんは苦笑する。

 そんな団長さんに手を振り、シュヴァルツを伴って私は散歩に出かけた。






***





「ぴ……」

「ヒヨコ、お疲れだな」


 お散歩から帰ってきて、机の上にべちゃっと潰れた私を魔王は手のひらの上に乗せた。


「随分魔力が減ってるな。散歩ついでに四天王とでも戦ってきたのか? ……いや、それは世話係が止めるか」

「ぴ……」

「どれ、お疲れのヒヨコには我がマッサージをしてやろう」


 そう言って魔王は指先で私の背中を揉み始めた。ついでに魔力を流し込んで補給をしてくれる。

 ぴぃ~、ごくらく。

 気持ちよさそうに全身の力を抜いた私に魔王は気をよくしたようだ、さらに揉み解してくれる。今の私はただの脱力ひよこだ。


「そうだまおう、ひよこききたいことあるよ」

「なんだ」

「さいきんゆうしゃはなにしてるの? だんちょうさんたちひまそうだけど」


 昼間に疑問に思ったことを魔王に聞いてみる。


「結構今更な質問だな。勇者は今までと変わらず我らと戦っているぞ」

「そうなの? でもだんちょうさんたち、ひまそうだよ?」

「それはそうだろう。聖女のいない勇者パーティなど騎士団長が相手をするまでもない」


 おお……ヒヨコ、とっても評価されてる……。


「ていうか、魔界まかい人界じんかいはどうしてたたかってるの?」


 これこそ本当に今さらな質問だけど、せっかくの機会なので聞いてみた。

 私の生まれる前から魔界と人界は戦ってたし、私は神殿から強制的に派遣されてたから戦うようになった理由は知らないんだよね。


「ふむ、少し長い話になるぞ?」

「いーよ!」


 途中で寝ないようにしなければ。


「ヒヨコの疑問に端的に答えるとすれば、我らが人界に侵攻しているのは、奪われたものを取り返したいだけだからだ」

「うばわれた……?」


 そんな話、聞いたことない。


「ヒヨコは聞いたことないだろう。都合の悪いことは国民には隠すものだからな。我らが奪われたのは、我らが神の核だ。それを聖神に奪われた」

「!?」


 核っていうのは神様の力の源だ。それがなければ神様は力を行使できない。


「でも、なんでかくをうばったの? いっこもってればじゅうぶんじゃない?」

「普通はそうなんだがな。聖神にとって一つでは十分じゃなくなった事態が発生したんだ。なにか分かるか?」

「ん~?」


 わかんない。

 お手上げ、というように私は仰向けにコロンと寝転がった。別に眠かったからじゃないよ。


「聖神がな、人間の男に恋をしたんだ」

「ぴ?」


 こい……恋? 急にふわふわした単語が出てきたからヒヨコびっくりしちゃったよ。


「にんげんにこいをしたら、どうしてかくがひつようになるの?」

「聖神は愚かなことに人間になろうとしたんだ。人間になるには、聖神だけの力ではどうしたって足りない。それに、人間の神が空席になるから次代の神を作る必要があったんだ」

「へ~」

「まあ、当然のように我らが神、デュセルバート様は反対した」


 邪神の名前ってでゅせるばーと様っていうんだ。違うところに気を取られちゃった。


「愚かな聖神はさらなる愚行を犯した。デュセルバート様を騙し、核を奪ったのだ。核を失ったデュセルバート様は僅かな意識だけを残し休眠についた。それで、我ら魔族は核を取り戻すために人界に攻め入るようになったんだ。核は人界の中心、神殿にあるはずだからな」


 魔王はさらに語りを続けた。


「我らから核を守るため、聖神の力の一部を分け与えられたのが勇者だ。つまり勇者は聖神の便利な駒だ」

「なんと」


 新事実ばっかりでヒヨコの頭はパンクしそうだよ。

 ……ん? あれ? でも、勇者って何人かいるよね……?


「まおう、せいじんがこいしたおとこのひとって……」

「ああ、もう寿命で死んでる。が、また聖神がやらかしてくれた」

「……まだなんかしたの?」


 ほんとに神様なのかな。今までほんの少しでもそんな神様を信仰してたのが恥ずかしいよ。明日この話をシュヴァルツにもしてあげよ。この気持ちを共有したい。


「男は確かに寿命で死んだ。だが、こともあろうに聖神はデュセルバート様の核を使ってその男を生き返らせようとしたのだ」

「そんなことできるの?」

「できない。聖神は男に無理矢理核を取り込ませたが、死んで魂を失った男の体をそのままに保つだけになった」

「わお……」


 聖神って、なんかズレてるね。自我だけが強い世間知らずの香りがプンプンするよ。


「そのおとこのひとがしんじゃうまえにさっさとにんげんになっちゃえばよかったのに」

「次代の神がいなければ人間になることはできない。だが、神がそんな数年やそこらで創れるわけないだろう。神を創り出してから、その神が世界を管理できるほどに成長するまで数百年はかかる」

「それもそっか」


 新しい神様がほいほい生まれてきちゃうと、それはそれで問題かもね。ありがたみもないし。


「まあそんな感じで、デュセルバート様の核は男の体と共に人界の神殿に保管されてるから、俺達はそれを返してほしいだけなんだ」

「そうだったんだ」


 これ、一方的に人間……というか聖神が悪いよね? 神託があったら人間は従っちゃうし。


 初めて知る新事実が多すぎてヒヨコの頭はパンクしそうだよ。




 


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― 新着の感想 ―
漫画から来ました 聖神の好きになった相手は生きているのかな? 相手を神にしたいけど死んじゃったのなら 意味ないよね?
[良い点] シンプルな世界対立の原因。 聖神の横暴と傲慢と低能さが、諸々の元凶だったかぁ。なるほどなぁ。 人間と魔族は、神々の争いの代行をしてるに過ぎないと。 [気になる点] あれ? なら、聖女の役…
[良い点] なるほど!!! [一言] 心配して忠告してくれたあいての核をだまして奪うとは……なんという卑劣系邪悪!! 邪神とはこういう設定で作るんですね!! 他の作品というか古参の漫画というかRPG…
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