ひよこ、家をゲットする
昼食の時、オルビスさんとゼビスさんから財宝洞窟をもらったことを報告すると、魔王が拗ねた。
「我が一番最初にプレゼントをするはずだったのに。やつらどうしてくれようか……」
「まおーのぷれぜんともうれしいよ。なにくれるの?」
ちょーだいちょーだい、と両手を差し出す。
「クッ、ヒヨコが可愛すぎる……!」
「ぴぃ……」
急に興奮した魔王に撫でくり回された。
「コホン、我からはヒヨコの新しい寝床だ。今までのは急ごしらえのものだったし、ちょうどいいだろう」
「おお!」
今使ってる籠ベッドも寝心地がいいけど、新しいのがもらえるならそれはそれで嬉しい。
「これだ」
「ぴ?」
魔王が取り出してたのはひよこサイズの家だった。洋風で、かなりオシャレな外観。
まさか―――!!
「ひよこの家だ」
「ぴ!!!」
衝撃で思わず普通のひよこに戻りかけた。
「ちゃんとひよこサイズの皿とかコップも作って、住めるようになってるんだ。寝床というか、普通にヒヨコの家だな」
「ふおおおおおお!!」
嬉し過ぎてその場でぴっぴっぴっ♪と足踏みしてしまう。
魔王が絨毯の上に家を置いてくれる。
「まおう! はいってもいい?」
「うむ、よいぞ」
そう言って魔王が玄関の扉を開けてくれたので、そこから中を覗き込む。
「わぁ!」
すごい!
内装、すごい細かい!!
玄関から家の中に入ると、そこには本当にひよこサイズの部屋が広がっていた。テーブルも椅子もお皿もあるし、キッチンやお風呂までついてる。しかも、ちゃんとひよこでも使いやすい造りだ。
すごい……魔王、力入れ過ぎだよ……。
感動した私は、家から出て魔王に飛び付いた。
「まおーありがとう!!」
「ああ、ヒヨコが喜んでくれてよかった」
「ぴ!」
ヒヨコはとっても嬉しいです。
一通り家の中を探検した後、誰かに自慢したくなった。魔王はお仕事に行っちゃったので、シュヴァルツを呼んで自慢してみた。興味ないかな? とも思ったけど、まじまじとヒヨコの家を観察している。
「みてみて!」
「うわ~、すごいですね……小物まで揃ってる。一体この家全部でいくらするんでしょう……」
「そういうぶすいなことはかんがえないの!!」
人からの贈り物の値段は調べないものなんだよ!
「あ、すみません」
「わかればいーの」
私はぴぴっと家の中に入る。この家、ちゃんと窓も付いていればバルコニーまであるのだ。
家の中の階段を上ってバルコニーに出る。すると、上から家を覗き込んでいたシュヴァルツと目が合った。
「おお、ちゃんと窓とかも開くんですね」
「そーだよ! キッチンとかカップもあるからじぶんでこうちゃものめちゃうの!」
「お~。優雅に紅茶を嗜むひよこっていうのもまたシュールですね。じゃあ今度お茶会しましょうか」
「! おちゃかいする!!」
お茶会……なんて素敵な響き……。とっても楽しみだ。
それまでにおいしい紅茶を淹れられるようになっていなければ!!
「私と二人だけのお茶会ではちょっと寂しいので、他にも招待しましょうか。ヒヨコが呼びたい人を招待していいですよ。きっとヒヨコが来て欲しいって言えばみんな来てくれます」
「わかった!」
おいしい紅茶をみんなに淹れてあげよう。お茶っ葉とかも自分で作ったほうがいいのかな……。とりあえず試しに紅茶を淹れてみよう。
そうして、早速キッチンを使って紅茶を淹れ始めた私をシュヴァルツは楽しそうでなにより、と微笑ましそうに見守っていた。