ひよこ、騎士団で職場体験開始!
こと楽しいイベントに関しては異様に仕事の早い父様のおかげで、翌日には私とリュウの騎士団制服が出来上がっていた。
朝起きたら枕元に子どもサイズの制服が置いてあったものだから、ヒヨコってばビックリしちゃった。
しかも人型用の制服とは別に、ミニミニサイズの制服まで用意されている。これってまさか――
「ひよこ用の制服も作ったからね! どっちの姿にも対応できるよ!」
グッとサムズアップする父様。
そんな父様を、魔王が呆れた目で見遣る。
「デュセルバート様が見たかっただけだろ」
「そうとも言うね」
この分だと、リュウの制服もキッチリ二種類作ったんだろうな。父様、洋服とか揃えるの好きだもんね。私のクローゼットの中身も気付いたら増えてるし。まあ、それは魔王の仕業でもあるけど。
ただ魔族の子どもは成長がゆっくりなので、すぐに着られなくなることがないのが救いだ。
「じゃあ、きょうからしょくばたいけんかいし?」
「それでもいいけど、あまりにも急だから明日からとか来週からでもいいよ。リュウや白虎と話して決めよう」
「わかった」
確かにリュウ達と話さないと決められないなと思いながらのんびり朝の支度を調えた後、扉を開けて廊下に出る。
すると、予想もしていなかった光景がそこにはあった。
「――ぴ?」
「……ヒヨコ、おはよう」
そこには、騎士団の制服を着たリュウと気まずそうな顔の白虎さんがいた。
見慣れた格好だけど、リュウが着るとなんだか新鮮だね。デザインが少しアレンジされてるからかな。
白いシャツの上に騎士団の上着を着込んだリュウのズボンは、膝の辺りまでの半ズボンになっている。騎士団で半ズボンの人は見たことがないので、リュウ専用のデザインだろう。
リュウが自分でネクタイを結べるとも思わないので、執事さんあたりにやってもらったのかな?
見慣れない姿のリュウをまじまじと眺めていると、どこか居心地が悪そうな白虎さんが口を開いた。
「こんな朝早くにすいません。制服が届いてたもんですから、こいつが行くって聞かなくて」
どうやら、制服が届いているのを見たリュウが白虎さんを引っ張ってきたらしい。こんなに意欲旺盛なリュウ、初めて見るかもしれない。
「……いつからとは、いわれなかったから」
「ああ、それもそうだね。開始日を擦り合わせていなかったから、焦っちゃったのか。ごめんね」
「ううん、おれが、はやいほうがいいとおもっただけだから……」
表情は変わらないものの、シュンと尻尾を垂らすリュウ。なんか見てるだけで可哀想で胸が痛むなぁ。それは白虎さんと父様も同じようで、二人ともあわあわとしていた。
普段のリュウならしないだろう行動だけど、それだけ本気ということなんだろう。
「じゃあ、きょうからしょくばたいけんしよう! ヒヨコ、きがえてくるね!」
「! うん」
そして、私は着替えるために部屋に戻った。リュウ達は朝食も食べずに飛び出してきたそうなので、一旦屋敷に戻って食べてくるそうだ。転移で一瞬だもんね。魔法って便利だ。
人型用の騎士団服に着替えた私は、魔王と父様の前でクルンと一回転して見せた。
「どう?」
「か、かわいい~!!!」
「よく似合ってるぞ」
「ふふふん」
リュウが半ズボンになっていたのに対して、私のはキュロットスカートタイプの制服になっていた。そして、みんなのはネクタイだけど私のはリボンになっている。父様のこだわりを感じるね。
褒められてにまにましていると、魔王の視線を感じた。
「どうしたの?」
「……ヒヨコ、もう一回転してくれ」
「! おやすいごようだよ!!」
そんなに新衣装の私が見たいんだね! ヒヨコ、いくらでもサービスしちゃうよ!
一回転と言わず何回転でもしてあげましょう。そう思ってジャンプで空中で四回転を披露すると、魔王には微妙な顔をされた。
その道のプロも驚くような綺麗なジャンプができたと思ったんだけど、そういうことではなかったみたい。
その後は大人しくゆっくりと一回転しました。





