ひよこ、お手紙を書く
「ぴぴぴ? (まおう、なにしてるの?)」
「ん? フェニックスに詫び……贈り物をしようと思ってな」
贈り物!
この前会ったフェニックスはとっても優しい鳥だった。まるで母鳥みたいな包容力。あったかいし。フェニックスの胸毛の下は天国みたいだった。
「ぴぴ! (わたしもふぇにっくすにおくりものする!)」
「ん? いいぞ。手紙でも書くか?」
「ぴ(ん~ん)」
魔王の質問にフルフルと首を振って答える。フェニックスはこの前お休みだったところをわたしが突撃しちゃったみたいだからもっとちゃんとしたものを贈りたい。
「ぴ! ぴぴ! (あ、そうだ! まおう、ヒヨコちょっとほうせきのとれるダンジョンにいってくる)」
「待て待て待て。わざわざダンジョンまで行かんでいい」
「ぴ?」
なに?
「薄々思ってはいたが、ヒヨコは案外血気盛んだな。ちょっとした贈り物のためにわざわざそんな難易度の高いダンジョンに行くでない。手紙くらいにしておけ」
「ぴ (は~い)」
魔王の提案でフェニックスにお手紙を書くことになった。
執務机の引き出しからきれいなお手紙用の紙を出してくれる。そしていざ手紙を書こうという時、わたしは重大なことに気付いた。
むーんと白紙の紙に向き合う。
「ぴぴ……」
「……そういえば文字、書けなかったな……」
わたしのふわふわおててでは文字など到底書けない。魔王が出してくれた綺麗な硝子ペンも無用の長物になってしまった。
「我が代筆するか?」
「ぴ……(う~ん)」
迷う……。
悩んでいると、ふとインク壺が目に入った。
「ぴ……」
***フェニックス視点***
魔王から贈り物が届いた。この前抗議の手紙を送ったから詫びの品だろう。私の休暇を邪魔したのがあの愛らしいひよこでなければ魔王城まで乗り込んでいってたわ。
風呂敷に包まれていたのは詫びにふさわしい品々だった。そして魔王からの手紙にはひよこも手紙を書いたから同封しておいた、との内容が書いてあった。ふむ、あの愛らしいひよこからの手紙は嬉しいわねぇ。
魔王の手紙を読むのもそこそこに、私はひよこちゃんの手紙を取り出した。これかしら?
愛らしい薄ピンクの便箋を取り出す。
「……」
なにかしらこれは……。
二つ折りになった紙を開くと、そこには鳥の足跡が便箋いっぱいに広がっていた。三股に分かれた小さな足跡。これはあのひよこのものかしら。足にインクを付けて描いたのね。
可愛らしい足跡に思わず頬が緩む。
ただ、何を伝えたかったのかは全く分からないけれど。
***
「……やっぱり代筆すべきだったか……?」
「ぴ?」





