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【書籍&コミックス発売記念番外編】ひよこ、ハロウィンを堪能する

書籍2巻&コミックス1巻がいよいよ明日(11/15)発売です!

書籍2巻には現時点でなろうに投稿しているものよりもほんのちょっとだけ先の内容まで収録されています!(数話分なのですぐ追いつきます!)

よかったらお手にとっていただけると嬉しいです!!




「はろうぃん?」

「そ、かわいく仮装をして大人達からお菓子をせしめるイベントさ」

「言い方」


 教育に悪い、と魔王が父様を睨む。

 元人間のヒヨコからしたら、魔族のみんなは普段から仮装をしてるようなものだけど、ヒヨコは空気の読めるひよこ。お口チャックだ。


「魔王城では長らくやってなかったんだけど、今年はおちびちゃんが二人もいるから久しぶりにやってもいいんじゃないかって話になってね。この城で働いている者の子ども達も呼んでパアッとやろう!」

「おお!」


 パアッと、のところで両手を広げた父様のまねっこをするように、ヒヨコもバンザイをする。

 すると、そのまま脇に手を差し込まれ、父様に抱き上げられた。


「とうさま、どんなかそうをするの?」

「ふっふっふ、そこは父様にお任せあれ。二人にピッタリな仮装を考えてるんだ!」





 ハロウィン当日。


「おお……」


 城内がハロウィン一色だ。行き交う人達も、普段より浮足立っているのが見て分かる。

 城内のそこかしこには、顔の形にくり抜かれたオレンジ色のカボチャが設置されている。どうりで最近カボチャ料理が多かったと……。


「すごい……」


 普段とは打って変わって賑やかな様相の城内に、白虎さんと一緒にやってきたリュウも目を丸くしている。


「さあさあ、二人も着替えようか」


 そう言って父様がパチンと指を鳴らす。


「!」


 瞬間、私とリュウの服装が変わっていた。


「わぁ」


 私はお尻部分にドラゴンのような尻尾のついた、ダークブルー色のフリフリワンピース姿に変わった。そして頭にはちっちゃなツノの付いたカチューシャが装着されている。

 対して、リュウは黄色を基調とした半ズボンのタキシード姿に変身だ。


「とうさま、これって――」

「そう! 交換コーデだよ! ヒヨコの衣装はドラゴンを、リュウの衣装はひよこをイメージしてみました!」

「おお!」


 すると、父様はさらに何かを取り出す。


「ひよこの被り物も用意してみたんだけど、リュウ君着けるかい?」

「つける」

 

 即答だった。

 そして、デフォルメされたヒヨコの被り物にスッポリと顔以外の頭部を覆われるリュウ。

 か、かわいい……!!


「リュウ、かわいい」

「ありがと。ヒヨコも、かわいい」


 自前の尻尾をゆらりと揺らすリュウ。


「二人とも激かわだよ~!!」


 大興奮の父様に二人纏めて抱きしめられる。

 すると、魔王が部屋に入ってきた。


「――ん? 着替え終わったのか?」

「うん! 見てよ魔王! このかんわいいチビちゃんズを」


 私達の背中をズイッと押し、魔王に見せつける父様。なぜか父様の方がドヤ顔だ。


「……これは、少々かわいすぎるんじゃないか……?」


 しゃがみ込んで私とリュウを抱きしめる魔王。

 そんな魔王の袖をクイクイと引く。


「まおー、おかしくれないと」

「イタズラ……する……ぞ?」


 私のセリフを引き継ぐリュウ。

 そしてお決まりらしい文句を言い終わるや否や、魔王が私達をギュッと抱きしめた。


「いくらでもイタズラするといい。今日だけは何をしても目を瞑ろう」

「魔王、そういうイベントじゃないから。お菓子をあげるんだよお菓子を。ほら、用意したでしょ?」


 グイグイと魔王の襟首を引っ張る父様。


「む、そうだったな」


 すると、魔王は近くにあった籠から、丁寧に梱包してある袋を二つ持ってきた。

 中にはひよこの形を模したクッキーが入っている。見ただけで分かる、サックリ食感のおいしいやつだ。


「まおーありがとう」

「ありがと……」

「ああ」


 微かに微笑み、私達の頭を撫でる魔王。大分父親の風格が出てきたね。


「二人とも、我には?」


 父様が自分を指差して言う。


「「とりっくおあとりーと」」

「よくできました。はい、我からもお菓子だよ~」


 父様がくれたのはドラゴンの形を模したクッキーだった。


「おれだ……」


 手のひらサイズのクッキーを見て、リュウが瞳を輝かせる。


「あ~、かわいい。寿命が延びた気がするねぇ」

「これ以上延ばしてどうする」


 長寿の魔族の中でも、神である父様の寿命の長さは抜きん出てるからね。






 父様達に一頻ひとしきり愛でられた後、私とリュウは白虎さんに引率されて魔王の部屋を出た。

 廊下を歩いていると、正面から見慣れたドラゴンさんが歩いてくる。


「あ! オルビスさん! とりっくおあとりーと!」

「おー、ヒヨコもリュウもかわいい格好してんな。かわいいちびっ子達にはちゃんとお菓子用意してんぞ~」

「やったー!」

「ありがと……」


 私とリュウがそれぞれ持っているお化けカボチャ型の手提げにオルビスさんが小包を入れてくれる。こんな小物も今日のために用意されたんだから、父様達の気合いの入れようが分かるよね。



 それから、私とリュウは手を繋いで城中を練り歩いた。

 どこへ行ってもかわいいかわいいと愛でられ、おいしそうなお菓子をもらえたので私達はホクホクだ。

 特に、騎士団は大漁だった。騎士の人数が多いのでお菓子がもらえるもらえる。

 もらったお菓子の量は、持っていった手提げだけでは到底収まりきらなかった。

 リュウに至っては、被り物の中までお菓子の包みでいっぱいになってしまった。なので、朝よりも一回り頭部が大きくなっている。


 大量のお菓子を抱えて戻ってきた私達を見て、父様がクスクスと笑っている。


「ふふ、どうやら楽しめたようだね。暫くの間は三時のおやつに困らないかな?」

「うん、おかしたべほうだい」

「お腹を壊さないように程々にするんだよ。リュウ君もね。特に君は前科があるから」


 涎を垂らしながら食べるお菓子を選んでいるリュウに父様が声を掛ける。だけど、リュウには届いていないようだ。

 まあ、食べ過ぎそうになったら白虎さんが止めるだろう。

 リュウを眺めていると、魔王にヒョイッと抱き上げられた。


「ヒヨコ、ハロウィンは楽しめたか?」

「うん!」


 イタズラは一回もできなかったけど、ヒヨコは大満足です!







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