プロローグ
―――どうして。
好かれてないのは分かってた。
でも、殺したいほど憎まれてるなんて思わなかった。
今、背中が熱いのは勇者に後ろから切りかかられたからだ。背中から血が噴き出すのが分かる。もう傷を治癒する力も残ってない。
……まさか、魔王じゃなくて仲間に殺されるなんて思ってもみなかったなぁ。
『聖女、奴らが憎いか?』
ああ、いつもの声だ。きっと、惹かれてはいけない声。
『憎いか?』
―――うん、憎いよ。すっごく憎い。この世界の全部が憎い。叶うことなら復讐したい。
『だがお前はもう死ぬ』
―――わかってる。
『望みはないのか? 我の眷属になるなら、我がその願いを叶えてやろう。奴らへの復讐でもなんでも言うがよい』
……私の願い……。なんだろう……。意識が朦朧として頭が働かない。
でも、もし、もし本当に願いが叶うなら、もっと早くこの声に耳を傾けていればよかったなぁ。今さら後悔してももう遅いけど。
―――ほんとうはね、もっと自由に生きたかった。聖女の役目なんかに縛られないで、勇者達なんかの言うことなんか聞かずに生きる人生が欲しかった。
ああ、もう限界みたいだ。
そして、聖女だった私はあっさりと息を引き取った。
『……その願い、確かに聞き届けた―――』
***
「……ぴよ?」