表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/4

皇太子からのアプローチ

その夜。


フェリスは、皇帝陛下に連れられ、隣国へと慌ただしく旅立った。


エリザベスと話をしなければ。


「エリザベス、どういうことなの? フェリスが、隣国の皇太子だと知っていたの?」


「少し前にね。隣国の者が、首元にフルール・ド・リスの痣のある青年を長年探しているって、噂を耳にしたの。だから調べたのよ。フェリスで間違いないと確信を得たわ。だから、隣国に手紙を送ったの」


「なぜ私に教えてくれなかったの?」


「驚かせようと思って」


エリザベスは、ふふっと微笑んだ。


私は、心に燻る心配事を口にした。


「エリザベス、大丈夫かしら? 私、皇太子殿下を執事として働かせていたなんて……」


「心配しないで。お姉さまは、皇太子殿下の命の恩人よ。七年前のあの雨の日、お姉さまがフェリスを助けなかったら、フェリスの命はなかったわ。陛下もそれは良く分かっているはずよ」


「そうね。お咎めはないかも知れない。でも、心苦しいわ」


「気にすることないわ。知らなかったんだから。まさか皇太子が傷だらけで路上に倒れてるなんて、誰も思わないわ」


「でも、おかしいわよね。皇太子がなぜあんな場所に?」


「当時、陛下はフェリスを連れて、この国に視察に訪れていたそうよ。ここからは私の推測だけど。フェリスは護衛の目を盗んで街へ一人で出たのでしょう。子供だもの。一人で冒険したかったのかも。その時に、何者かに誘拐された。でもフェリスはあの通り有能よ。何とか自力で脱出したのよ。でも、馬車に轢かれて傷を負い、記憶を失った」


エリザベスの推測は、納得できるものだった。細部は違っていても、概ね間違っていない気がする。


フェリスは私と同じ歳だという。十一歳まで皇太子としての教育を受けていたのね。


剣術も幼い頃から訓練されていたはずだわ。文字をすぐ覚えたのも、隣国の言葉として習っていたのかも知れない。上品な身のこなしも皇太子として育ったのなら、全て説明がつく。




フェリスが隣国へと旅立ってから二週間が過ぎた。


エリザベスの言う通り、隣国からのお咎めはない。けれど、同時にフェリスからも何の音沙汰もなかった。


もう帰って来ないわよね……。だって、皇太子なんだもの。


「フェリスは、きっと隣国のお嬢様と結婚するのよね。もうここへは……」


思わず零れた言葉と共に、涙が溢れそう。


フェリスに会いたい。こんなことなら、自分の気持ちをキチンと伝えておけば良かった。


目の前のエリザベスは、庭園に設けられた席で、芳香な紅茶を口に運んでいる。エリザベスが、周囲を気にしながら呟いた。


「そろそろだと思うのだけど」


私の話を聞いていないのね。そろそろって何?


その時、執事長が手紙を持ってやって来た。


「マリアンヌお嬢様、フェリス、いえ、皇太子殿下から婚約のお申し込みです」


「え?」


私は、一瞬、自分の耳を疑った。


フェリスが、私との婚約を望んでる?


エリザベスが、勢い良く立ち上がった。執事長から手紙を奪うと、目を通している。


「やっぱりね! 間違いないわ。婚約の申し込みよ! これでお姉さまの望みは、全て叶ったわ!」


エリザベスが、私の目の前に、手紙をバッと見せつけた。


私は、震える手で手紙を受け取った。


そこには、私を妃として迎えたいと、本当に記されていた。


「こんなことってあるのかしら……全て貴女のおかげよ、エリザベス……。ありがとう!」


私は、立ち上がるとエリザベスを抱き締めた。


「夢みたいだわ」


「お姉さま、幸せになってね」


その時、背後で声がした。


「エリザベス様ではなく、私を抱き締めてもらえませんか? マリアンヌお嬢様」


振り返ると、フェリスが立っていた。


皇太子らしく、品格のある衣装に身を包んだフェリスは、柔らかな微笑みを浮かべている。


「フェリス……。いえ、皇太子殿下」


「フェリスという名も好きだけど、これからは、ルーカスと呼んで欲しい」


フェリスは、私をエリザベスの腕から、そっと自分の元へと引き寄せた。


顔が近い! イケメン過ぎて眩しいわ。目眩がする。


私は、何とか声を絞り出した。


「ルーカス……様」


「マリアンヌと呼んでも良いかな?」


耳元で囁かれた甘い声に、私は、自分の体温が一気に上がるのを感じた。顔が熱い。気絶しそうだわ。けれど、ちゃんと答えなければ。


「はい。ルーカス様」


ルーカスが私の顔を覗き込む。近い! エメラルド色の瞳が今まで以上に輝いて見える。


「私はずっと、マリアンヌを好きでした。けれど、身分が違うと我慢してきた。自分が何者かが分かった今、もう我慢するつもりはない。返事を待ちきれず、来てしまった。返事をもらえるかな?」


フェリスが私をずっと? まさかの両想いだったの?


夢のような展開に、クラクラする。早く答えなきゃ。


「もちろん。喜んでお受けしますわ。ルーカス様」


私が答えると、ルーカスは少しハニカミながら微笑んだ。


「ありがとう、マリアンヌ」


私は、ルーカスに腰を引き寄せられた。ギュっと抱き締められる。


ルーカスの温もりが伝わってくる。これからも、ルーカスとずっと一緒にいられるのね。


私の唇に、ルーカスの唇がそっと重なった。


もう死んでも良いわ!


最後にエリザベスの真実が明かされます!

真実って何?と思った方は、★★★★★とブクマをお願いします! 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ