#74 SCARY ~The latter part~
「う、腕です!!!!!
に、人間の腕が三本、 動いています!!!!」
『何、腕だと!? どういうことだ!!?』
「わ、分かりません!!
とにかく腕があるということしか!!!」
『落ち着け!! 冷静さを失うな!!!
慎重に行動しろ!!!』
エクスは侵入した男たちに指示を飛ばした。
彼の言葉だけで そこがどれほど切迫しているか理解でき、それを抑えなければならないとはっきり分かっていた。
「…………はい。 すみません。落ち着きました。」
『よし、それで良い。
まずはその腕がどういう状態なのか報告しろ。』
「は、はい。
数は三本 色は………… 赤褐色のようです。
………長さや細さは、不釣り合いのように思われます。」
『待て。その三本はどれも赤褐色なのか?』
「はい。 間違いありません。」
〘……長さや細さがバラバラなのに、色は同じだと…………?〙
エクスは思考を巡らせながら部下たちに指示を続ける。
「………ではこれより、接近します。」
『分かった。 繰り返すようだが慎重に行け。』
「はい。」
***
「こちらエクスだ。 そっちの状況はどうだ?」
『はい。 ただいま 件の腕のあった曲がり角の直前に居ます。』
「そうか。 俺の指示で突入しろ。 いいな?」
『はっ!
━━━━━━━━━━━━ウグァッ!!!!!』
「!!!!? おいどうした!? 何が起こってる!!?
応答しろ!!! 応答しろ!!!!」
『ガッ…………!!! ギッ……………!!!!
や、止め……………!! 止め………………!!!』
「応答しろ!!!! 応答しろ!!!!!」
『あ゛ あ゛がッ………………!!!!
ラ、ラド━━━━━━━━━━━━』
ブツッ
通信はそこで途絶えた。
後にエクスの耳に入ったのは砂嵐の音だけだった。
***
後に、ラドラの地下通路に突入した3人組の内の2名がこう証言する。
当時の状況は、彼が前衛に立ち、2人はその後ろで待機していた。
そしてエクスの指示を待っていたその一瞬の間に、件の三本の腕が前衛にいた男を掴み、そして曲がり角に引きずり込んだ。
もちろんすぐに2人は後を追ったが、そこには何も無かったのだと言う。
その後、2人はエクスの撤退命令を受け、今に至るのだ。
そして2人は口を揃えて、『『その時、カタカタと乾いた木と木がぶつかり合うような音が聞こえていた』』と証言していた。
***
「…………と、言うのがその時の状況だ。分かってくれたか?」
「……………………………………!!!!」
哲郎は半ば呆然としていた。
まるで本やテレビで怪談話を1つ聞き終えた後のような気分になっていた。
「……すると、あなたはその男の『ラド』という証言、そして色が同じで長さ細さがバラバラの腕とその木と木がぶつかったみたいな音 から推理してそのような結論に至ったと言うわけですね?」
「………そういう事だ。」
エクスは躊躇いながら返答した。
それは自分自身の失態を自分でさらけ出して、認めるような行動だったからだ。
「……それで、その推理は本当に当たっていると思いますか?」
「……どういう意味だ?」
「いえ、 ただ可能性を一つに絞ってしまうのは危険だと思っただけでして。
確かに僕も彼の懐に人形が抱えられてるのを見ましたが、それだけで結論づけてしまってそれが外れていたら勝てるものも勝てなくなってしまうのでは と考えたんです。」
「………そんなに疑うのならその証言をした2人に掛け合ってみれば良い。
嫌でもそれが本当だと分かるだろうさ。」
「いや別に疑ってる訳じゃないですが分かりました。 案内して下さい。」
***
「……ラドラ様、報告致します。
ハンマーを無事に保護致しました。今は医務室にて待機させております。」
「ご苦労だった。 部屋に入ってくれ。」
「失礼致します。」
フードを被った男がラドラの部屋に入った。
「………その人形、ひょっとして………。」
「そうだ。あの時のエクスの手先共だ。本当は3人とも戦力にしたかったのだが、まんまと逃げられてしまった。
おそらく奴らに私の能力も割れている事だろう。」
ラドラは人間程の大きさのある人形を磨きながら悲観的にそう呟いた。
「一応聞いておこう。
あれから戦力はどれくらい増えた?」
「はい。 少なく見積もっても250人は戦力にできたかと。 なお、やはり表では行方不明者の多発で随分と騒いでいるようですが。」
「そんなものは捨ておけ。
予定は変えずに今まで通り戦力拡大に尽力しろ。 私の目的さえ完了すれば、誰も何も言わなくなるんだから。」




