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異世界に適応する少年  作者: Yuukiaway
学園潜入 編
61/449

#61 The Execution

公式戦の3日前

哲郎はエクスに呼ばれて彼の自室に来ていた。


「テツロウ、お前をわざわざここに呼んだのは他でもない。

お前が戦うであろうアイズンについての事だ。」

「はい。 アイズン・ゴールディの事ですよね。それなら僕も独自に調べてあります。」



以下に記載するのは、パリム学園の生徒の一人アイズン・ゴールディ

彼のいじめの被害者達の証言である。


・『偽善ぶったやつの心をへし折るのが好きだ』と言っていた。

・鉄柱で腹を何度も打たれ、危うく内臓破裂寸前まで追い込まれた。

・下級生がひざまつかされて、降参しても殴られていた。



そして、この証言をした生徒全員が 一刻も早く何とかして欲しい と懇願していた。


「……あの男共がどれほど下劣な人間であるかはしっかりと分かりました。」

「一応 聞いておくが、どんな方法で【裁く】つもりだ?」

「あの公衆の面前で赤恥をかかせた後、二度と誰もいじめる気など起こさないよう徹底的にいたぶる。


それしかあの男を止める方法は無いでしょう。」


哲郎の中には静かに怒りが煮えたぎっていた。その決意を持って、公式戦の場に立つことになる。



***



「ハァッ ハァッ ハァッ…………………」

(い、息切れ………!!!?

この俺が あんな下級生のクソガキにビビってるのか……………!!!!? 冗談じゃねぇ!!!!)


己を虚勢で鼓舞しても、自分自身の恐怖心を拭うことは出来なかった。

右腕に走っている激痛がそれを遥かに凌駕していた。


「……アイズン・ゴールディ。

言うまでもないでしょうが、あなたのやってきた事は到底 許されるものでは無い。それはあなたが一番分かっているでしょう。」

「……ふっ ふざけんな!!!

俺が何をした!!? あのクソの役にも立たねぇ下級生のクズ共を俺のストレス解消として使ってやった(・・・・・・)!!!!

感謝して欲しいくらいだ!!!!」

「………………………………………!!!!!」


これはアイズンが恐怖に飲まれんとして口から出した虚勢だが、彼は後にこの発言を強く後悔する事になる。


「……………全く持って残念です。

あなたがここで自分の非を認めてその頭を下げてくれたなら、少しでも寛大な処置をしてあげようと思っていたのですが、そのつもりは無いようですね。」

「……………………何…………………!!!?」

「どうせあなた達の事だ。

僕たちのことを侮って、この公式戦を他の生徒たちへの見せしめの公開処刑だとでも思っていたんでしょう?」


「………………!!!!

だ、 だったらどうだってんだ!!!?」


哲郎は少しの間 目を閉じて、アイズンに一瞥した。その目からは怒りは消え、ただ憐れみだけが残っていた。


「…………僕もそうさせて貰います。

これから 神、校則、倫理観、道徳、そして 天。

これら全てを代行してアイズン・ゴールディ 貴様に刑を執行する!!!!!」


哲郎はその指を堂々とアイズンへと向け、宣戦を布告した。

その頼もしさに誘発され、観客席、特に下級生の席が大いに湧いた。

そしてあれよあれよという間に、会場はマキム・ナーダを支持する声で埋め尽くされた。


「……………………!!!!!

調子こいてんじゃあ ねえェェエエ工!!!!!」

「!!!」


アイズンは 駄々っ子のように怒鳴りをあげた。



「俺を裁くだと!!? 刑を執行するだと!!!?

やれるもんならやってみやがれ!!!!!」


アイズンは胸の魔法陣に手をかけ、そのまま力任せに鎧と服を引きちぎった。

彼の 事実上 鍛えられた身体が晒された。


『な、なんとアイズン選手、己の鎧を自ら捨てた!!!』

「………お前に出来ることは全部 分かってんだよ!!!! お前はただ魔力に衝撃を流すだけ!!!! つまり!! こうしちまえば お前は俺に手も足も出せねぇ!!!!

悔しかったら この俺を膝まつかせて見せろ!!!!!」


アイズンの言葉に 全く反応せず、哲郎は口を開いた。


「…………この期に及んでまだ油断するとは。 馬鹿は死なないと治らないとはよく言ったものです。」

「……………!!!!

くだくだ ほざいてねぇでさっさと掛かって来やがれ!!!!」


「僕は待っていたんだ。

あなたが魚人波掌(・・・・)を対策してくれる(・・・・・・・・)のを。

その鎧を脱いでくれるのを。」


そして、哲郎がとった行動に場内は唖然とした。


哲郎はその身体を弛緩させ、姿勢をゆらりと崩したのだ。

身体はくねくねとだらしなく揺れ動き、まるで骨が抜けてしまったかのような動きをとっていた。


到底 戦いには不向きな動きだと そう思われた。


(………アイズン・ゴールディ。

執行するのは、《鞭打ちの刑》だ。

この激痛をもって、罪を償え!!!!!)


哲郎は豹変したように急速にアイズンとの距離を詰め、その腕を振るった。


ビタァン!!!!! 「!!!!!」


掌が彼の剥き出しになった背中を捕らえ、けたたましい音が響く。


場内が戸惑いに包まれる中、エクスの口が綻んでいた。


(………テツロウ・タナカ。

まさかそれ(・・)までも使うとはな。

あの時の言葉、嘘では無かったのか。


せめて自分の無事を祈るんだな。 アイズン・ゴールディ。

ここからは地獄。 それが貴様に下される天罰だ。)

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