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異世界に適応する少年  作者: Yuukiaway
魔界コロシアム 編
29/393

#29 Champion and MVP



━━━━━━━━━━━━━━━静まり帰っていた。


場内を包み込んだ轟音はとうに止み、そして場内もまたこの迫力に圧倒されていた。



しかし、それも終わりを告げる。



『アッ!!!


ご、ご覧下さい!!!

あれは━━━━━━━━━━━━━』



アナウンサーが指さした位置から、哲郎とノアのいた煙の場所から、何かが降ってきた。


それは地面に、まるでたんぽぽの綿毛が落ちたかのような静かさで地面に落ちた。


それは煙に包まれていたが、それもすぐに晴れた。

そして、場内に衝撃が走ることになる。



『テ、テツロウ選手!!!!

落ちたのはテツロウ選手です!!!!!』


哲郎は完全に力尽きて地面に落ちたのだ。

《リベンジ・ザ・アダプト》を打った右腕は赤黒く焼け焦げ、服も右上が完全に吹き飛んでいた。


『と、ということは━━━━━━━━━』


場内が次に注目したのは空中、哲郎とノアが激突した場所だった。

答えは明確に、そしてすぐに出された。


『ノ、ノア・シェヘラザードが立っているーーーーーー!!!!!

空中で堂々 仁王立ちだァ!!!!!』


仁王立ち


確かに事実はそうだが、ノアのダメージも深刻だった。

腹から右半身が赤黒く焼け焦げ、右目も潰れているかどうかという状態だった。



「ガハッ」


遂にノアも血を吐いた。そしてたまらず地面に降り立ち、息を切らしながら膝を着いた。



「しょ、勝負ありィーーーーー!!!!!


勝負あり!!!! 勝負ありィーーーーー!!!!!」


レフリーの宣言に誘発されたかのように観客席はこれまでにないほど大熱狂した。


そして、膝を着くノアにレフリーの1人が駆け寄った。その手にはトロフィーが握られている。


「おめでとうございます!!!!

ノア選手!!!!」


ノアはよろけながらも立ち上がり、その手でトロフィーを受け取った。そして次に向かったのは哲郎の所だ。


「ノ………………ノア…………さん」


哲郎はかろうじて起き上がった。既に自分が敗れたことは理解しており、悔恨の念は微塵も無かった。


「……互いに胸を張ろう。」 「!?」


ノアは哲郎の腕を支え、立ち上がらせた。


「……このラグナロクでたった2人の転生者。

俺はチャンピオン、そして━━━━━━」



ノアは哲郎の腕を掴んだまま両手を上げた。

哲郎の腕も同時に上がる。


それが意味していたのは、



「お前がMVPだ!!!!!」


2人の武士(もののふ)が同時に手を上げた。それを包み込んで惜しみない拍手が場内を埋め尽くす。



『き、き、き、決まったァーーーーーー!!!!!

魔人族 ノア・シェヘラザードが魔界コロシアム チャンピオン、そして、人間族 テツロウ・タナカがMVPに輝いたァーーーーーーー!!!!!



参加選手 32名!! 試合数 31!!!


ラグナロク全土から集められた選手の全員がボロボロになり、そして誇り高く散っていった今大会!!! その頂点が今、決定しました!!!!


二度と、二度とこんな大会は見られないでしょう!!!!


突如としてこの大会に名乗りを上げ、そして数々の名勝負を繰り広げてくれた2人、そして選手の全員の名は、必ずこのラグナロクの歴史に深く刻まれる事でしょう!!!!!


感動をありがとう!!! 熱狂をありがとう!!!

そう言って送り出したくなるような、素晴らしい終幕でした!!!!!


ただ今をもって、この魔界コロシアム、閉幕の運びとしたいと思います!!!!

選手の皆様、本当にありがとうございましたァ!!!!!』



アナウンサーのスピーチがさらに観客を、そしてこのラグナロク全土をも震わせた。



そして、その大歓声を背に2人の英雄は去っていった。



***




魔界コロシアムは完全に終わりを告げた。

大会を見終わった観客達の足取りはただひたすらに軽く、そして弾んでいた。



しかし、そのコロシアムの会場に未だに残っている者がいた。



「フゥー


あそこまで来たなら勝ちたかったなぁー」


哲郎は未だに会場の医務室のベッドで横になっていた。まだ傷が完全には癒えていない。


「何だ。まだ帰ってなかったのか。」

「まだ歩けないんでね。」


医務室にノアが入って来た。


「ところでお前は昨日までどこで寝泊まりしてたんだ?」

「その辺の宿を転々としてました。

ここに来てまだ数日も経っていなかったのでね。」


「……そうか。 それからこれを」


そう言ってノアは哲郎の前に袋を置いた。


「なんですかこれは?」

「賞金の1割だ。俺からの礼として受け取れ。」


「…………」


哲郎は躊躇したが、それでも受け取ることにした。


「ところで、明日は何か予定はあるのか?」

「ありませんけど、それが何か?」


「うちの両親が優勝を祝ってパーティーを開くと言うんだ。

お前も来てみないか?」

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