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異世界に適応する少年  作者: Yuukiaway
新興宗教 編
185/422

#185 Shelling Ford The FINAL

「そうでしょう?

この屋敷で事件を起こした犯人の、


ヴィン・スモーキンさん。」 「!!!!!」


哲郎の目の前に座っているヴィンこそが哲郎が推理によって導き出したこの事件の犯人なのだ。


「…………アハハハ

一体何を言ってるのか分からんね 君。

レオル氏から話を聞いてるなら君も知ってる筈じゃろ?

犯人はあの部屋の天井にあった通気口を通って出たんじゃよ。そんな芸当、わしみたいな腰の曲がった老人にはとてもとても……………」

「それはヴィンさん、あなたの作戦の一つでしょう?

そう。あれは偽装(フェイク)です。

あなたはあの通気口の真下に椅子を倒して、まるで犯人がその椅子を踏み台にして部屋から脱出したように見せ掛けたのです。」

「それは君の憶測だろう?一体何を根拠に……」

「根拠はありますよ。扉の鍵です。

おかしいじゃないですか。犯人が本当に通気口から出たなら、どうして扉に鍵を掛けなかったんだと思いますか?

それは犯人が通気口以外の場所から出たからですよ。だから僕はあの椅子が偽装だと考えたんです。」

「……………………」


ヴィンはしばらく険しい表情を浮かべていたが、軽くため息をついた後で更に言葉を連ねる。


「………いいじゃろう。仮に君の言う通りだったとして、わしに一体なんの動機があるというのだね?

この閉鎖的な宗教団体の信者の娘を殺す(・・)動機が。」

「!」


哲郎は心の中で軽く口を緩めた。

ようやくヴィンを追い詰める材料が出てきた。


「いいえ。彼女を殺したのはあなたじゃありませんよ。」

「何!!?」

「あなたが今日ここでやったのは殺人なんかじゃありません。

あなたが今日ここでやったのは、、この屋敷のどこかにあった遺体をあの部屋に置いた。ただそれだけですよ。

そもそもあの遺体は胸を酷くやられて心臓は喪失していました。そんな派手な殺し方を何の痕跡も残さずにあの短時間で実行するのはまず不可能ですからね。」

「…………………

馬鹿馬鹿しい。何の為にそんなことをしなければならんのだね。」

「…………………。」


哲郎はあえて答えなかった。

先程の間で完全に確信した。


「………第一、君がさっきから言ってるのは単なる憶測で何一つ証拠はない。私があの遺体をあの部屋に置いたという証拠なんてね。」

「………ですが、あなたが以前ここに来た事があるという証拠なら、さっきあなたの口から出ましたよ。」 「!?」

「さっき 大広間であなたはこう言ってましたよね?

『まったく酷い事をする()も居たもんじゃ。あんなに優しい(・・・)娘子の胸を よもや抉ろうとは……………………。』

とね。」 「!!!!!」


ヴィンはようやく自分の失言に気付き、その顔がどんどん青ざめていく。


「被害者の女性を殺した人物の性別や彼女の人柄を、どうしてあなたが知ってるんですか?」

「そ、それは…………………………

ち、直感じゃよ。彼女の顔や哀しんで泣く姿を見て なんとなくそう思ったんじゃ。」

「…………(もう限界か。)

それなら普通、『優しそうだった(・・・・・)』とでも言うんじゃないですか?」 「!!!!」


ヴィンの目が見開き、汗が滝のように流れる。

哲郎はギルドの操作の邪魔をした責任、そして自分の目的を果たす為に容赦はしないと決めていた。


「あなたがそれを知っていたのはおそらく以前、そう、パルナさんが卒業した日にここへ忍び込んだんです。何かの目的があって、ここを家捜ししに来たんでしょう。」

「…………………!!!!」

「まぁ、決定的な証拠なら、この部屋にちゃんとありますけどね。」

「ギルドの人達は真っ先にあなたを容疑者から外し、まだこの部屋は調べていない。ですから犯行に使った道具はまだこの部屋にあるはずです。

もしこの部屋を調べられても簡単に見つからないように そう、小さく(・・・)したんじゃありませんか?」「!!!!」

「実は僕の友達に魔法に詳しい人が居ましてね、その人に聞いたら教えてくれましたよ。

『ものを小さくしてしまうような簡易的な魔法具は金を出せば誰でも買える』ってね。

ですからこの部屋にある筈ですよ。あの遺体を乗せて部屋まで運んだ 彼女の血と魔素がたくさん付いた台車がね!!!」

「………………………………!!!!!」


しばらく唸った後、ヴィンは遂に項垂れた。

心の中で犯行を認めたのだ。


「………君の探してる物ならわしの鞄の中に入っている。君の言う通り、あの遺体を載せて運んだ台車を魔法具に入れてしまってある。

……だがその前に一つ教えてくれないか?どうしてあの通気口が偽装だと分かった?君は根拠を言ったが、扉の鍵とてそう見せ掛ける為の偽装かもしれないではないか。」

「確かにそうですが、僕は最初からあの通気口は使われなかったと分かっていたんですよ。

僕は事件当時、あの空き部屋の真上にいたんですから。」「!!!?」


「……僕はレオルさんの従者では無く、哲郎という駆け出しの冒険者なんです。

それで、友人の友達から依頼を受けてこの宗教団体から妹さんを連れ戻す為にここに来たんです。

………そしてもう一つ、調べていくうちにここには何か裏があると分かったんです。あなたがこんな事をした動機もそこにあるんじゃないですか?」

「そんな事まで気付いていたのか。

分かった。全てを話そう。わしがこんな事をした動機も、以前ここに来た時に見た物も全てを。」

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