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異世界に適応する少年  作者: Yuukiaway
新興宗教 編
166/422

#166 Bloody Party 3 (PAST and FATE)

哲郎は尚も水晶を耳に付けて会場から聞こえてくる音を聞いている。

依然として彩奈は厨房と会場を行ったり来たりしているのが聞いて取れる。


(…………えっと、もうすぐだよな………)


自分の体内時計の中ではもうすぐ11時を迎えようとしている。その時間になれば偲ぶ会は一旦の休憩を挟む手筈になっていて、参列者たちは割り当てられた部屋で各々休む事になっている。レオルと接触する機会があるとするならその時間しか無い。

ちなみに彩奈は休憩時間はミアーナことアリナと二人一組で厨房の掃除の仕事を宛てがわれている。


『では皆様、ただ今より二時間の休憩時間を取ります。』

(! 来た!)


本来の会場であるホテルから派遣されたであろう職員の声が聞こえた。それからしばらくして無数の足音が水晶から聞こえて来る。


(確かマリナさんはこの時間は参列者達と話をする筈だったよな。順番は…………)


彩奈からの話を思い出して順番を整理すると、最初はレオルで次はエティの番になる手筈だ。

残りは問題にならないと思って覚えずにいた。


(えーっと、確かレオルさんの客室は確か…………)


彩奈から貰った見取り図を見て、レオルの部屋がこの空き部屋の隣にある事を確認する。今いる下の空き部屋は廊下の突き当たりにあり、そこから並ぶように客室が宛てがわれている。



コンコンっ 「!」


哲郎が今いる所の右隣から扉を軽く叩く音が聞こえた。その後に扉を開ける音が聞こえた。




***




レオルとマリナの話は物の数分で終わった。休憩時間が終わった後の別れの挨拶をどうするかを確認するという内容だった。

その後に再び扉が閉まる音を聞いて話が終わった事を確認する。


(よし、今だ!)


哲郎は通気口の中を這ってレオルの部屋の上に移動する。既に客室の天井には通気口が空いているのは確認済みだ。

穴から覗くとコロシアムで戦った長い黒髪の男が椅子に座って紅茶を飲んでいる。


「レオルさん!」

「!!!?? なっ…………!!!?

お、お前は!!! なんでここに!!!」

「驚かないでください。今から話します。

とりあえずそこに降りても良いですか?」


急に天井から声を掛けられて紅茶を零しそうになるレオルをなだめ、哲郎は通気口から彼の客室に降り立った。




***



「………なるほど。ここの信者を説得に来たというわけか。いじめといい今回といい、地味な依頼ばかりこなしてるんだな お前は。」

「まだ始めて少ししか経ってないんですから良いんですよ それで。」


哲郎はレオルの前に座り、出された紅茶に口をつけた。


「それにしてもだ、いきなり天井から声を掛けてくるとはどういう了見だ?あれで驚かない人がいると思うか?」

「しょうがないでしょ。まさかあんなに人が通ってる廊下からノックする訳にもいきませんし。」

「……まぁいい。それで私に何の用だ?

まさか潜入してる事を報告しに来ただけという事もあるまい。」

「………はい。前々から確認したかった事があるんです。

パリム学園の寮長の一件は知ってますか?」

「!!!」


寮長という言葉を聞いた瞬間、レオルの表情が一気に険しくなった。哲郎が次にする話の内容を察したのだ。


「……なるほど。その事を聞きに来たのか。」

「はい。あなた達の公爵家の根源魔法が奪われた事についてです。」

「それは私も王国経由の新聞で見たさ。その時は自分の目を疑ったな。」

「それついて聞きたいんですが、ラドラ(扮する里香)があなた達を訪ねたという事はありますか?

あるいはラドラから根源魔法の話を聞かれたという事は」

「どちらも無い。だから酷く驚いたんだ。

パリム学園は私にとっても母校だが積極して関わるという事は無かった。もちろん根源魔法の情報が漏れたなどという事も有り得ない。」


「………という事は考えられる可能性は一つですね。」

「あぁ。 ラドラに扮していたあの女は魔界コロシアムのあの試合を見ていた という可能性がな。」


話が終わったちょうどその時に哲郎は出された紅茶を飲み干した。この部屋に誰も来ないという保証は無いのですぐに席を立つ。


「それじゃあ僕は元の場所に戻ります。

この会の邪魔はしませんので気にしないで下さい。」

「もちろん誰にも言う気は無い。お互いに昔の事は水に流すとしよう。」

「あ、それと」 「?」


「これから《妹》を説得するにあたって聞いておきたいんですが、もし弟さんが胡散臭い宗教に入ったら、レオルさんはどうしますか?」

「………昔の私なら放っておいただろうが今はそうとはいかない。誰かのおかげでな。

今は別々に特訓を積んでいる。二度と初戦敗退なんて無様な結果を残さないようにな。」

「………そうですか。」


命を軽んじる人間では無くなったと信じ、哲郎は元の通気口へと戻って行った。

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