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異世界に適応する少年  作者: Yuukiaway
新興宗教 編
162/422

#162 Parasite the filone 7 (RENAMED 2)

ジェイルフィローネ

ただのしがない宗教団体であるはずのその場所に《転生者》が居る

その事実を哲郎とエクスは同時に聞いたがそれを早く処理したのはエクスだった。


「エクス様 一体どういう事なんですか!!!?

教えてくださいよ!!!!!」

『落ち着け アヤナ!! 一度冷静になれ!!!』

『「!!」』


エクスの一喝で哲郎と彩奈ははっとして 冷静さを取り戻した。


『良いか 一度落ち着くんだ。

冷静にあの地下で何があったのか 順を追って話せ。 オーバー。』

「……………はい。」




***



転生者における決まり事の一つに転生者は転生者に出会うとその人物が転生者だと気付く事が出来るというものがある。不完全な転生者である哲郎は例外的にそれが機能しないが彩奈は機能する。

初めて二人が会った時に彩奈が哲郎に反応したのがその証拠だ。そしてそれが再び 宗教団体の地下室という場所で機能したのだ。


『まずは具体的にどういう物を感じたのか教えろ。そいつについて何か分かった事はあるのか?』

「……いえ ただ地下室に降りた時に『何かが居る』と何となく(・・・・)感じただけで、どこの誰なのかは分かりませんでした。」

『………という事はそいつ(・・・)はかなり遠くに居るようだな。少なくともあのマリナが案内したあの扉の奥に居る可能性は無い。

アヤナ、一先ずは儀式を受けろ。これ以上燻ってたら不審に思われる。

転生者が居たとしてもそいつは入信者が転生者だと分かっただけで俺達の存在はまだバレてはいない。

落ち着いて事にあたれよ。まだこっちの有利は揺らいでいないんだ。』

「………………はい。」




***



エクスの屋敷の一室で通話が終わった。


「おいエクス、そっちで何があった?

かなりヒステリックに話していたぞ。」

「ノア。 かなり状況が変わりそうだ。

たった今アヤナから報告があって、 どうやらこの一件、転生者が絡んでいるようだ。」

「何っ!?」


ノアの表情が驚きで少し歪んだ。


「それならまずいんじゃないか!?

今からでも俺が行けばそんなやつ魔王(おれ)の敵じゃないが」

「それはダメだ 危険すぎる。

まだそいつの情報が何ひとつ手に入っていない。それに信者の女達に危害が及んだらどうやって転生者の事をを隠す!? 国王の時とは訳が違うぞ!!」

「! おう。」


かつての魔王も親友の言うことには素直に耳を傾ける。


「苦しいが予定は変えない。テツロウとアヤナに頑張ってもらう!!」



***



彩奈は呼吸を整えて地下室に戻った。

幸いにもマリナには不審に思っている様子は無い。


「アヤナさん、大丈夫なの?」

「は、はい。 もう落ち着きました。

心配掛けてすみません。」

「そう。 なら始めるわね。」


マリナが扉を開けると、そこには花壇に囲まれた一つの玉座があり、そこに女性が座っていた。彼女こそが教祖 マリアージュなのだ。

エクスの言葉を思い起こし少なくとも彼女が転生者である可能性は無いと心を落ち着かせる。


「………アヤナ・アサクラさん こちらへ。」

「は、はいっ!」


不意に名前を呼ばれて一瞬たじろぐが冷静さを取り戻して教祖に近付く。緊張で固くなっている彩奈に対し教祖は表情一つ変えずに手近の花壇から花を一つ摘んだ。


「……………?」

「………《リネン》

今日からこれ(・・)が貴方の名前よ。」

「………………………あ!

はいっ!」


教祖の言葉を聞いてから儀式が終了した事を理解するまで三秒ほど掛かった。




***



儀式を終えて彩奈は礼拝堂の地下通路を進む。


「………あの、これで良かったんでしょうか?」

「え? 何が?」

「上手くは言えないんですけど何か、失礼な事をしちゃったかもって思っちゃって」

「……()の影響が出てるのね。

それなら大丈夫よ。マリアージュ様は滅多な事で怒ったりはしないから。

少しづつ慣れていけばいいわ。これからよろしくね 《リネン》さん。」

「………………………!!」


自分は《朝倉彩奈》だという自覚は決して捨てていない。両親から貰った名前を捨ててまで宗教に縋る人の気持ちが分かる時は絶対に来ないのだろうと思った。



***



昼食と親睦会を終えて、彩奈は自分に宛てがわれた部屋に案内された。そこで渡された制服に袖を通す。異世界に来てからしばらく給仕服以外の服を着ていたなかった為か少しばかり似合っていると思ってしまった。


怪しまれる事無く潜り込めたしアリナとも接触する事が出来た

初日にやりたい事は全てやり終えたから大丈夫だ と自分に言い聞かせる。


「!」


懐の中で水晶が光っているのに気が付いて手を伸ばす。


『彩奈さん 今は一人ですか? オーバー?』

「あ、哲郎さん。 はい 今は部屋で一人です。

さっきこっそり転送(おく)ったお昼ご飯、ちゃんと食べられましたか? オーバー。」

『はい。問題ありません。

それから今日も動かずにここで過ごします。合流は明日にしましょう。』


彩奈にはもうこれからの予定は無い。

後は明日に備えて身体を休めるだけだ。

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