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異世界に適応する少年  作者: Yuukiaway
新興宗教 編
160/422

#160 Parasite the filone 5 (Lonely Flower)

「さぁ着いたわ。 ここが私達の花園よ。

これでも自慢のお花達よ。」

「……………!!」


マリナに連れられて温室に入った彩奈を待っていたのは両の壁に一面に咲いた無数の花だった。


「私達の主な仕事はお花を育てる事よ。このお花を売ったお金で私達は生活しているの。


? どうかしたの?」

「あ、いや、 それにしては働いてる人が少ないように感じまして。」


彩奈の言う通り、温室で花の世話をしていたのは数人程度だった。


「ああ。それは他に仕事を請け負ってるからよ。」

「仕事?」

「ええ。 実は外の世界で有名な人を偲ぶ会が開かれる事になったんだけど、そこが急に使えなくなっちゃってここの一階を会場として一日だけ貸す事になったのよ。

それがもう明日に迫ってるからみんなそっちに忙しくしてるの。」

「そ、そうなんですか。 それは大変ですね。」


彩奈は予め知っている事を悟られないように初めて知ったような反応を示した。その一方で哲郎とエクスは『よし、上手く本題を引き出した』と喝采した。

そして間髪入れずにエクスが彩奈に指示を飛ばす。


『アヤナ、『自分は料理ができるから給仕の仕事を手伝わせてくれ』 と言え!!』

「(はい! 分かりました!)

あ、あ、あのっ!」 「ん?」

「そのお仕事、私にも手伝わせて欲しいです!

私、こう見えてもお料理は出来ますし、 その 給仕のお仕事なら出来ますから!」

「そう言っても…………… いいわ 分かった。

なら明日 お願いしようかしら。」

『『(よしっ!!)』』


「だけどそんなに焦らなくてもいいのよ?

まだここに来て少ししか経ってないんだから。今日はここの案内をして、その後はゆっくり休みなさい。 分かった?」

「は、はい すみません。

今まで誰にも必要とされてなかったからみんなの役に立ちたくて…………」


焦りを見せる演技(フリ)をする彩奈の肩にマリナが優しく手を置いた。



「……それで、マリナ様、」

「ん? どうかしたの?」

「その、早速で申し訳ないんですが、先に給仕場(?)があったら見せて欲しいんですけど。」

「厨房の事ね?。分かったわ。」




***




「ここが厨房よ。」


彩奈が案内されて最初に抱いた感想は『給食センターにそっくりだ』という事だ。

そこでは温室より多くの人がせっせと作業をしていた。


「給仕といっても本来の会場から料理や材料は送られてだいたい出来上がっているからやって欲しい事といえば盛り付けとか最低限のおもてなしとか それも会場の人達がやるのを手伝ってくれればいいわ。

だけど粗相だけはしないでね。明日は()の中でも偉い人達がたくさん来るから。」

「は、はい。 分かりました。」


マリナは急に険しい表情になり、そしてその顔には一筋の汗が浮かんでいた。主人(エクス)の関係者が出席するような大規模な会に関与するなら当然だろう と納得する。


「その、少しだけ中の様子を見てみても良いですか? 明日の仕事をやりやすくしたいので。」

「そういう事なら別にいいわよ。 でも今から出来る事はあまり無いと思うけど。」


マリナの言葉に首を縦に軽く振って彩奈は厨房に足を運んだ。目的は部屋の把握ではなく哲郎への食料を確保するためだ。


(……………あった!

水は空になったって報告は無かったからこれで…………)


皆の死角になる場所に籠に入れられたパンを二個見つけた。隠し持っていた水晶で哲郎の位置を把握し、その場所に《転送》で送り届ける。


***


『テツロウ、たった今 アヤナがそっちに食料を送った。確認しろ。オーバー。』

『はい。 二個のパン、問題なく受け取りました。オーバー。』

『それが朝飯という事だろうが、それで足りるか?水はまだ空になっていなかった筈だが。 オーバー。』

『大丈夫です。あまり動いていないのでこれだけあれば何とかなります。』


***



『アヤナ、テツロウは問題なく食料を受け取った。引き続き事を進めろ。』


心の中で「はい。」と答えた彩奈は厨房を見て回った。そして彼女は予想だにしない物を目にする。


「『ッ!!?』」

『!? エクスさん、彩奈さん、どうかしましたか!? オーバー!? 応答して下さい!!!』

『……喜べテツロウ。事は思ったより早く進みそうだぞ。 件のアリナが見つかった!!!』

『!!?』


彩奈の目の前に立っていたのは写真で見たアリナだった。彼女は彩奈に気を向ける事無くせっせと厨房で明日の為の作業をしている。


『アヤナ、分かっているだろうが勇者パーティーの件は伏せろ。そしてあくまでも新入りとして『初めまして』とでも言って慎重に距離を縮めるんだ。』


返事の代わりは彩奈の足音だった。

音しか聞こえず、彩奈の周囲の状況が分からない哲郎にも言うまでもなく、明日に向けて準備が着々と進んでいる事が理解出来た。

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