#152 RETURN The PHOENIX
根源魔法 《皇之焔鳥》
皇之黒雷と同じ 魔力の根源より力を借りて繰り出す炎の魔法である。
その形は名前の通り炎で出来た巨大な鳥の姿を象る。
国王こと現役の騎士であったかつてのディルドーグは奥の手のしてそれを持ち、巷では《炎鳥の騎士》という異名を持っていた。一国の王の地位に就いた時に返上したが、現役の騎士であった当時を知る者達によってその異名は語り継がれている。
***
(あれが炎鳥………………!!!!)
サラでも把握していなかった元騎士の国王の異名の所以の魔法である根源魔法
その威力は誇張無しに里香をも消し炭にしてしまいそうな心強さがあった。
「………これがあの《炎鳥》!
確かに凄い火力だねぇ。直撃したらボクでも一溜りもないかも。
…………………だけど、」 「!!!?」
里香は炎の嘴が直撃する寸前のわずかな時間で両の手を嘴の下へと滑り込ませた。哲郎はその動きに見覚えがあった。
(あ、あれはまさか………………!!!)
「魚人武術 滑川
《粼》」 「!!!!!」
里香が脱力した状態で両手を振り上げると炎の鳥の起動が縦方向に変わった。嘴が天井に直撃して大爆発が起こる。
「ば、馬鹿な…………………!!!!」
「あれ?根源魔法を流されたのがそんなに信じられない? 魔法が武術やり優れてるって古臭い考えが性根に染み付いてたのかな?
まぁとにかくその剣はホントに使えなくなっちゃったね〜。」
「!!!」
里香の言っていることは正しかった。
国王の持っている剣は根源魔法の反動で完全に黒焦げになってしまった。そしてオルグダーグが砂で閉じ込めたこの空間では新しい剣は手に入れられない。
「国王様!お気を確かに!」
「! オルグ!」
オルグダーグが国王に声を掛けて気を戻させた。
『これから扉を塞いでいる砂を少し開けます。国王様はその隙に脱出してください。
あの人形の怪物は私の砂で拘束しています。
何とか私とテツロウ君で奴を撃退します。』
『そうか。 無理はしてくれるなよ。』
『はっ!』
オルグダーグの合図で国王 そして彼の付き添いの騎士数名が踵を返して走り出した。
「あのさー、小声でぼそぼそ話してるけど、全部聞こえてるんだよ?」
「!!!」
国王の前には上半身を二つ持つ人形の怪物が立ち塞がっていた。
「こ、此奴、あの砂の拘束を抜け出たというのか!!?」
「いえ、違います! こいつは別個体です!!!」
ザフマンと弓の騎士を素体とした人形は依然としてオルグダーグの砂に捕らわれている。
「そ!ここに来る時にいい素体があったから急拵えで作らせてもらったの。それを転移魔法でそこに送ったって訳!
ほらほら、そいつを何とかしないと国王サマを逃がせないよ〜?」
「…………………!!!」
騎士達が手を出せないでいる中、その人形の怪物に立ち向かう者がいた。
それは他でもない哲郎である。
「テツロウ君!!!」
「こいつは僕が相手をします!!
皆さんは国王様を早く案内してください!!! 大丈夫です!!こいつの弱点は知り尽くしています!!!」
哲郎の言葉に嘘は無かった。人形の怪物が飛びかかってくる瞬間に合わせて一気に距離を詰め、怪物の懐に潜り込む。
魚人波掌
波時雨 《渦》!!!!!
ドゴゴゴゴゴォン!!!!!
「!!!!! !!!!! !!!!! !!!!! !!!!!」
身体を回転させて人形の弱点に五発の掌底を一気に叩き込む。
人形の怪物は吹き飛び、そして地面に落ちる前には元の二人の騎士へと戻った。
「これで敵はいなくなりました!!!
さぁ早く!! 逃げて下さい!!!」
大広間から出ようとする国王の背中を守るようにして哲郎は再び里香の前へと立ちはだかった。今度こそ国王の役に立つと固く決心しての事だ。
「よくそんな会って間もない国王サマの為に身体なんか張れるね?」
「……………!!」
里香は依然として自信満々の表情を崩さないが、哲郎は全く意に介さない。
「ところで哲郎君、ボクさ、見つけちゃったんだよね。君から隙を作る方法。」
「?!」
「それはね、『今まで経験したことない攻撃を一気に撃ち込む』事だよ。」
「!?」
里香は再び人形の腕を展開して哲郎の方へと向けた。
「彼奴、何をしようとしているのだ!?」
「国王様! 奴はテツロウ君に任せて早くお逃げを!!!」
国王が大広間から出るまでの時間は5秒ほど。
その僅かな時間でそれは起こった。
「哲郎君、この大広間を全部吹き飛ばすくらいの攻撃をここでやったらどうなると思う?」
「!!!!?」
人形の腕の掌から赤黒い魔法陣が浮かび上がった。
「ボクさ、物覚えが良いんだよね。
それじゃあね。
根源魔法 《皇之焔鳥》」
「!!!!!」
人形の掌から国王が撃ったものと全く同じ炎の鳥が発射された。