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異世界に適応する少年  作者: Yuukiaway
魔界コロシアム 編
13/392

#13 I have a weapon

「武器……だと……!!!?」


哲郎は確かに自分に武器(・・)を使うと言った。しかし、それはありえない。彼の両腕は今、根源魔法で麻痺しているからだ。

もっとも、麻痺で済むはずのない攻撃だったが。


『武器を使うと言いました!テツロウ選手!!

彼の体は既に満身創痍!!!

遂に決着の時か!!!?』


アナウンサーの声に応じるように、観客の熱狂も再び最高潮を迎えた。


哲郎が何を考えているかは分からないが、それをやらせる訳にはいかない。

根源魔法を使った反動は大きく、全身を激痛が走っているが、魔界公爵家の名にかけて、こんな所で不覚を取る訳には行かない。


そのことは、彼の身体をさらに動かした。


「終わりだ!! 《白雷(ハイヴェン)》!!!!」

「!!!?」


『こ、これは 何という光景でしょうか!!!


レオル選手、両手で白雷(ハイヴェン)の乱射を始めた!!!

これは決定打になるのか!!!?』



何故だ…………!!!!

何故この下等種族(・・・・)は倒れない…………!!!!!


レオルの口から、腕から、手からどくどくと血が吹き出した。根源魔法を使った身体は限界を迎えているのだ。


両腕を動かせない哲郎の身体に、白雷(ハイヴェン)は確実に当たっている。しかし、彼が倒れる気配も自分が勝つ予想も全くしなかった。



倒れろ!!!

倒れろ!!!!

倒れろ!!!!!


レオルの虚ろな意識は、その一つに集中していた。しかし、それも終わりを告げる。


「……タイムリミットだ」 「!!!?」


哲郎の意識と腕が、完全に復活した。


『テ、テツロウ選手、走り出しました!!

ここから何を見せる!!?』


哲郎が一瞬でレオルとの距離を詰めた。そして空高く飛び上がった。


そこからは一瞬だった。



「ッッ!!!? 貴様……ッッ!!!!」

「終わりです。」



ズダァン!!!!!

「!!!!!」



哲郎が落ちる反動を乗せてレオルの首に組み付いた。そのまま一回転して全体重をレオルの首にかける。


レオルは後頭部から地面に叩きつけられ、辺りに血飛沫が舞い、レオルは完全に動かなくなった。



哲郎以外の全員、何が起こったのか分からなかった。



哲郎の体力も尽き、その場に仰向けに倒れた。それが場内に決着を告げた。



「しょ、勝負あり!!!!!」

『決着ゥゥゥーーーーーーーー!!!!!

テツロウ・タナカ ゼースに続きレオル・イギアを打ち破ったァァァーーーーー!!!!!

彼の言う武器とは、この武道場の地面のことだったのです!!!


イギア家の血筋を退けてテツロウ・タナカ

遂に準決勝に駒を進めたのです!!!!!』



アナウンサーと観客達が熱狂に包まれる中、哲郎はよろけながら立ち上がった。


そして、


『こ、これはどうしたことでしょう!!?

テツロウ選手、レオル選手を抱えました!!』


哲郎はレオルを抱え、レフェリーの元に歩いて言った。


「彼を早く医務室へ!!」

『これは驚きました!! 齢11 テツロウ・タナカ!!なんとレオル選手の身体を気遣っています!!! なんと美しい光景!!相手の健闘を称え、敬意を表す これもまた魔界コロシアムのあるべき姿と言えましょう!!!!』


アナウンサーの言葉により、観客席の熱狂は次第に拍手に変わっていった。

その観客席に一礼し、哲郎は去っていく。

その姿に命を軽んじたレオルへの怒りは微塵も無かった。



***



(……これは どういうことなのだ…………)


ベッドの上でレオルは思考を巡らせていた。

自分が負けた事はすぐに理解出来た。

そして、ここが医務室だということも。


両手両足はベッドの端に縛られており、口には枷がつけられている。何より分からないのは、魔法を使えないようにされていることだ。


「兄者!!!」


医務室に男が入ってきた。レオルの実弟 ゼース・イギアである。


「返事はしなくていい。ただ、ある奴(・・・)から伝言を預かってんだ!!」

(伝言?)


この状況で言う事のある人間は1人しかいない。



まず、自分をこうするように指示したのは哲郎だった。

きっと目を覚ましたら、自害しようとする筈だから、それをさせないように両手両足の自由を奪うように と。

それから、舌を噛み切ることもないように、口に枷もつけて欲しいとも言ったそうだ。


レオルの顔は苦痛に歪んだ。それは肉体ではなく、敵に情け(・・)をかけられた故だ。


「それからもう2つ、伝言があんだ。」

まだ何かあるのか とレオルは意識を向けた。


「まず1つは、自分の"完全決着の定義"は、あなたとは違い、『相手の思うことを1つもさせずに倒す』ことだと。


それから、これは情けではなく、あなたという誇り高い戦士への敬意のためだ と。


あいつはそう言ってたぜ。」


「………!!!!!」



レオルはその言葉でハッとした。

自分の考えを、あんな子供に見透かされていたのか と。

そして 瞼から一筋の涙が零れた。

叶うことなら、「完全に私の負けだ」と声に出して言いたかった。



***



息を切らしながら、哲郎は廊下を歩いていた。


「テツロウ選手、準決勝を戦えますか!!?」

「……休めば 何とかなります…………。」


レフェリーに哲郎は息を切らしながら返答した。彼はレオルへの怒りを完全に断ち、意識を準決勝にだけ 集中させていた。

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