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異世界に適応する少年  作者: Yuukiaway
ラドラ寮 全面衝突 編 第二幕
116/422

#116 Triumph

『お前は兄さんを見習ってひたすらに上を目指せ』


ワードが彼の父親から言い聞かされていた言葉である。


彼はその高い実力を遺憾無く発揮してパリム学園に入学し、そしてラドラ寮に入った。そこで彼は今まで出会ったことの無い【ライバル】と呼べる存在に出会う。




***




(【ライバル】なんて言葉は俺には一生縁のない物だと思ってた。

強いて言うなら兄貴 だがそれも正確には【目標】と呼ぶべきだ。 レイザーだ。


あいつに勝ってラドラ様の右腕になることが出来れば兄貴に追いつく事も夢じゃなくなると思ってた。そのためにアイツに勝ったっていうガキの首を持って帰ればレイザーも負けを認めてくれるだろうと そう思った。


それなのに━━━━━━━━━━━━━)



この戦いでミゲル(エクスの右腕)哲郎(レイザーに勝ったガキ)の二人を倒すことが出来れば自分の目標へと近づくことができると確信していた。しかし、考えが甘かった。



「!!!!!」


哲郎の渾身の掌底がワードの顎を一閃する。地面が脆く崩れ去って頭が重力に引っ張られる。

薄れゆく意識の中でワードは理解した。レイザーから白星を奪ったのは哲郎の強さではなく、その強い決意と覚悟なのだという事を。


ワードは地面に倒れ伏した。

ミゲルの自己犠牲の覚悟と哲郎のエクスの思いを継ぐという決意が身を結んだ運びだ。


「………………………………はーーーっっっ!!!!」


哲郎は口から息を吐いて地面に座り込んだ。

今まで練り固めていた緊張が解れ、足から力が抜けたのだ。

しかしいつまでも疲労に身を委ねてはいられない。疲れた身体に鞭を打って立ち上がると地下通路で拾った鎖を取り出してワードの両手と両足を縛った。


「…………テツロウ君…………………!!」

「! ミゲルさん………………!」


振り返るとミゲルの腰も抜けていた。

魔法を連発し、泥の刃を大量に受けた身体はとうに限界を迎えていた。


「…………君のおかげでラドラ達の一角を潰せた。心から礼を言うぞ……………。」

「気にする事はありませんよ。僕はただ一度受けた依頼を責任を持ってこなそうとしただけです。」

「……………そうか……………………。」


ミゲルは目を閉じてそう返した。

哲郎の謙虚さ そして冒険者としての心構えに感服した。


「………それからテツロウ君、 ひとつ頼みたい事があるんだ。

……見ての通り、俺はもう限界だ。子供の君に頼むのは本当に心苦しいが、」

「最後まで言う必要なんてありませんよ。

ラドラの陰謀は必ず僕が止めます。そしてこの学園の未来を守ってみせます!!」


ミゲルの目元から涙が零れた。目の前の少年に思いを託さなくてはならない心苦しさと不甲斐なさ、そしてこの少年になら確実に任せられるという安心感が込み上げてきた。


「とはいえ俺も寝てばかりいられないな。

ワードの身柄は俺が連行しよう。レイザーはどこにいる?」

「地下通路の壁が切られて穴が空いている場所があります。そこから出て少しした所に拘束してあります。」

「分かった。そいつも俺が連行する。」


レイザーが頷くと彼の懐の水晶が光った。


「はいもしもし ミゲルです。」

『ミゲルか 俺だ。

状況はどうなっている?』

「敵を、ラドラの手先のワード・ウェドマンドをたった今黙らせました。これからレイザー・マッハの身柄と一緒に連行します。

それから、テツロウ君に代わります。」


ミゲルは何も言わずに水晶を手渡した。


「……通話を代わりました 哲郎です。」

『テツロウ お前は大丈夫なのか?

拉致監禁されていた女子生徒たちは無事に保護した。そっちの状況はどうなっている?』

「……僕は大丈夫なんですが、ミゲルさんが負傷して戦える状態ではなくなりました。

それで提案なんですが、僕がラドラと1対1で戦うというのはどうでしょうか?」

「!

………勝算はあるのか?」

「……勝算はありませんが、少なくともチャンスは今しかないと思っています。

今ここで止めなければ必ずまずいことになるのは目に見えています。」

「………そうか。ならばお前に全てを託そう。必ず勝てとはいわない。だが、必ず無事に生きて帰れ!!」

「はいっ!!!」


哲郎はそれだけを伝えて通話を切った。




***




「…………ワードも敗れたか……………

期待していたんだが、まああの少年がそれ程だったという事だろうな。」


ラドラは地下のアジトで一人 そう呟いた。


「既にここに向かっているか………。

見せてもらおうか テツロウ・タナカ。魔王ノアが認めた(・・・・・・・・)その実力を。」


壁一面に並んだ人形がケタケタと不気味な笑い声を上げる中、ラドラの口元が微かに緩んだ。

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