#115 Squirting Blaster
人間にとって最大の急所の一つ 【眼球】を狙った攻撃を上半身を限界まで反らせて躱す。
(! これでも入れ替えねぇのか?!)
ミゲルにとって哲郎はエクスのこれまでの作戦の全てを継ぐ人間であり、そして尚且つ自分が責任を持って守らなければならない存在である。そんな彼の身を庇って魔法を発動させると踏んでいたワードは突きを放った直後に後ろを警戒した。
「隙ありです!!!」
「!!!?」
ワードの伸ばした腕に哲郎が両足を絡ませて組み付いた。そして背中の筋肉を駆動させてワードの身体を宙に浮かせる。
「は、離せぇ!!!!」
空中で上下が反転した体勢で哲郎に向かって再び泥の剣を発射した。その鋒は哲郎の頬を掠め、顔に赤い筋を作る。
顔を切られた痛みに構うことなくワードを投げ落とした。空中で何度も回転しながら地面へと急降下する。
地面に激突する直前、地面を泥状化させて受け身を取った。
「……………あのガキ………………!!!
すぐにそっちに戻ってやるぜ!!!!」
「させん!!!!」 「!!!?」
ミゲルの声の方を向くと、彼が自分に向かって何かを投げていた。
(!!!? まさか!!!) 「!!!」
ワードに向かって投げた物がミゲルと入れ替わり、一気に距離が詰まった。
その距離を利用してワードの顎に懇親の蹴りを見舞う。
「ぐっ………………!!!!」
(ここまでだ!! もうお前に手番は回ってこないぞ!!!!)
咄嗟に顎を固めた泥で防御したが、それでも無視できないダメージが脳へと刻まれる。そしてミゲルをどう対処するかも問題だった。
下手に入れ替える対象を増やす泥の分身は彼には使えない。
「!!」
後方上空から哲郎も接近していた。今 ミゲルと哲郎の連撃に飲まれると一気に押し切られそうな予感がした。
(……!! しょうがねぇ!!)
《泥聖剣》!!!
『!!?』
両手に持っていた二本に加えて背中から泥の触手に握られた剣を展開した。
《泥塵旋風》!!!!!
『!!!?』
両手と背中の触手に握った剣を一斉に振り上げて向かってくる哲郎とミゲルを迎撃した。
ミゲルは横に、哲郎は斜め上空へと吹き飛ぶ。
「そこだ!!!」 「!!?」
空中に足場として展開していた泥を哲郎の両手両足に絡ませ、水分を抜いて固定した。
「……………テメェは後だ。作戦変更だ。
まずはテメェだ ミゲル!!!!!」
「!!!!」
「入れ替わる必要もねぇくらい近づいてやるぜ!!!!」
両手に剣を構えてミゲルに接近する。ミゲルは限界まで近づいた瞬間に魔法を発動させて自分とワードの位置を入れ替えた。
「バレバレだよ!!!」 「!!!」
位置が入れ替わった瞬間、ワードの剣が横方向からミゲルに襲いかかった。ミゲルは身体を横方向に回転させて剣を躱す。
空いた距離を一瞬で詰めて四方八方から剣を振るう。
(………もう魔力が少ねぇ……………!!
このまま押し切らせて貰うぜ!!!)
最後の一撃を放つ為に手に魔法陣を展開した状態でミゲルの腹へと向けた。
《泥刺突》!!!!
「!!!!?」
魔法陣から放たれた泥の触手の一撃がミゲルの鳩尾を襲った。伸びる触手に押されて吹き飛んで地面を転がる。
「………………!!!!」
「こいつで終わらせてやる!!!!!」
腹を抑えて立ち上がるミゲルに対してワードは最後の一撃を撃つ魔法陣を展開した。
「《泥之百連装聖剣》
《聖剣大葬陣》!!!!!」
「!!!!!」
魔法陣から大量の泥が刃となってミゲルへと襲いかかった。入れ替わった瞬間を狙って止めを刺すために剣を構える━━━━━━━━
「!!!!?」 「グッ……………………!!!!」
ワードの予想は外れ、ミゲルは入れ替わって逃れる事をしなかった。彼の身体には大量の刃が突き刺さり、大量の血が吹き出す。
「バ、バカな………………!!!」
「……………残念だったなワード・ウェドマンド………………………
お前を倒すのは俺じゃない。俺は【囮】だ……………!!!!」
「!!!!?
!!!!!」
足元に危険な気配を感じて見下ろすとそこには哲郎が身体を屈めていた。そしてその腕は掌底を発射する構えになっている。
(こ、こいつ、地面に置いた泥の破片とガキを入れ替えたのか………………!!!!?)
(ミゲルさん、あなたがくれたこのチャンスは無駄にはしません!!!!!)
「決めろ!!!! テツロウ君!!!!!
「はいっ!!!!!」
「!!!!!」
魚人波掌
《岩礁瀑波》!!!!!
「!!!!!」
哲郎の全身の筋肉を使った渾身の掌底がワードの顎に直撃した。