#107 Iron fist gatling
今のガリウムの心はしっかりとした背骨に支えられて、付け入る隙は全く無い。
自分の主に敵対する彼を完璧に倒すには力でねじ伏せるしか方法は無いと理解した。
「………そうか。
ならばこいつを喰らえ!!!!」
魔法陣を展開し、そこから大量の刃物をガリウムに向けて射出する。
しかし彼は微動だにしない。
ガガガガガガガッ!!!!
「!!!?」
ナイクの見間違いでなければガリウムは両手の拳を打ち出して飛んでくる刃物を全て叩き落とした。
「………………!!!」
「どうした?もうハサミはおしまいか?」
「!!!」
自分の魔法から作られる刃物を《ハサミ》呼ばわりされてナイクの冷静さは一瞬 消失した。
「━━━━━━━━━舐めるなッ!!!!!」
ナイクは腕をガリウムの方へ伸し、巨大な魔法陣を展開した。
《凶刃大砲》!!!!!
魔法陣からナイフを超えた《剣》が打ち出された。狙いは再びガリウムの心臓部に定められ、超高速で飛んでくる。
「 フンッ!!!」
「!?」
ガリウムは飛んでくる剣を半身で避け、持ち手を掴んだ。そしてそのまま身体を回転させて剣の直線運動を反転させ、スピードをそのまま乗せてナイクへと投げつける。
「!!!?」
かろうじて反応したナイクは魔法陣から刃物を横方向に顕現させて飛んでくる剣先を受け止める。
バキンッ!!!! 「!!!!」
剣先がナイクの魔法陣を破壊した。
それでも速度の落ちていた剣を既のところで躱す。
なんとか体勢を立て直してガリウムの追撃に備える。
「………………………!!?」
しかし ガリウムは隙を見せていたナイクを攻撃する素振りを見せなかった。
両の拳を顔面へと持っていき、ナイクヘ向けて狙いを定めている。
(………次に繰り出す攻撃に全てを賭けるつもりでいるのか……………!!!
ならば、私もそうしよう!!!!)
ナイクも大量に刃物を作り続けて残りの魔力は底を尽きかけている。
彼もガリウムに倣って残りの魔力を全て使って彼を倒す決意を固めた。
両手を広げて構えて魔法陣を生み出し、持てる魔力を全て使い輪状の刃物を生み出す。
「私を倒したくばこれを防いでみせろ!!!!
触れれば防ぐ暇もなく身体は断ち切れる!!!!!」
両手を振るい、二つのチャクラムをガリウムに向けて一直線に打ち出す。下手に策を弄するより、最短距離を最速で投げつけたほうが確実だと判断した。
ガリウムは飛んでくるチャクラムに対し一直線に駆け出す。その拳は依然として顔面のそばで発車の時を待ち続けていた。
しかし、ナイクにはそのチャクラムが拳で防げる代物では無いという確信があった。
(防げるものならやるがいい!!!
使える魔法の乏しいお前に何が出来る!!?)
ガリウムは既にこのチャクラムに対する策を既に導き出していた。
「!!!!? ば、馬鹿な!!!!」
ガリウムは本来ありえない方法でチャクラムを回避した。
一つ目の刃を身を屈めて躱し、二つ目の刃を飛び越えて躱したのだ。ナイクの考えではそれは絶対に出来るはずが無かった。
自分のチャクラムのスピードは万全の状態ならいざ知らず、限界寸前の彼には到底見切れる代物ではなかったからだ。
(ま、まさか━━━━━━━━━━━!!!!!)
ガリウムが間合いを詰める僅かな時間でナイクは一つの結論を導き出した。
ラドラが積極的に拉致監禁した【肉体強化魔法】を得意とする女子生徒達がガリウムに魔法を付与し、それをガリウムが視力強化に使ったという結論だ。
それは当たっていたが、それが正解だと知るまでにナイクは意識を手放した。
***
「━━━━━━━━━━喰らえ、これは女子生徒達が俺にくれた攻撃だ!!!!!」
《機関銃拳》!!!!!
「!!!!!」
ミリア達が託した残りの肉体強化魔法を全て両の拳に付与し、高速の拳をナイクの顔面に叩き込んだ。
さらに両の肩を高速回転させて強化された拳を一発一発 全力で撃ち込む。
「 !!!!! !!!!! !!!!! !!!!! !!!!! !!!!! !!!!! !!!!! !!!!! !!!!! !!!!! 」
ズドズドという衝撃音と共にナイクの意識はどんどんと薄れて行った。その最中 彼は『どうして一度ラドラに負けた男に自分が負けるんだ』という疑問を浮かべていたが、その答えを出すことは叶わなかった。
(見ていてください エクス寮長!!!!!)
ガリウムはナイクを倒すことで今までの失態を帳消しにして欲しい などと図々しいことを考えていた訳では決して無かった。
ただ 彼の為に戦いたい という純粋な思いを胸に最後の一撃を叩き込んだ。
「ぬああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
「!!!!!」
拳を振るい、ナイクの身体は吹き飛んで奥の壁へと激突した。
「や、やった……………………………………!!!!」
ガリウムは体力を使い果たし、遂に膝を付いた。その時の彼の頭は『エクスの為に戦い抜けた』嬉しさで一杯になっていた。