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異世界に適応する少年  作者: Yuukiaway
ラドラ寮 全面衝突 編 第二幕
105/422

#105 Shining dragon fang Part2 ~The Wrath~

たった今ファンが創り出した物に名前をつけるならばそれ以外に最適な物は無かった。


「な、なんだ それは………………!!!!」

「たった今言ったはずだろ。

これが僕にとっての最高の聖騎士(パラディン)の剣なんだ!!!!」


先程 彼は障壁を薄く、そして硬くする事でそこに【切れ味】を生み出し、自分に決定的な一撃を見舞った。

それだけでも遥かに程凄いことなのに、あまつさえファンは【盾】から【剣】を創り出して見せたのだ。


「…………?!!」


そしてファンは奇妙な行動を取った。

剣を構えて身体を屈め、剣を持っている手を後ろに引いてエドソンと向き合った。

エドソン、そしてパリム学園に通う者全員がその構えを知っていた。


それは、エクス・レインが得意とする聖騎士(パラディン)の構えだ。


「…………何のつもりだ………!!?」

「付け焼き刃だよ。

ただし、最高に鍛え上げられた(・・・・・・・・・・)物だけどね。」

(………今まで剣なんてろくに握ってこなかったけど、それでもこれだけは断言出来る。

お兄様の剣技を一番見てきたのは、この僕だ!!!!)


ファンの構えから『この一撃で終わらせる』という決意が見て取れた。

エドソン自身 体力は残り少ない。決着の時が刻一刻と迫ってきているのだ。


「………分かったよ。だったら一思いに叩き潰してあげよう!!!!!」


エドソンが指を振り上げ、岩の巨人も拳を構えた。狙いはファン一人。

人一人丸々入ってしまいそうな程 大きな拳が発射する時を今か今かと待ちわびているように見えた。


岩石正拳大砲ヒガンテ・ピータム・トムメンタ》!!!!!


足首の関節の動きを腰へ 腰の関節の動きを肩へ 肩の関節の動きを拳へ乗せ、巨大な岩石の塊が最高速でファンに襲いかかった。


しかしファンは微動だにしない。

巨人の拳が自分の剣の射程距離に入るのを待っているのだ。


(………お兄様。僕は皆を守れる盾で居られれば構わないつもりでした。

だけど今は違います。こんな僕でもみんなの為に戦いたい!!戦える()が欲しい!!!

だから僕に力を貸して下さい!!!!)


拳がファンの眼前に迫り、完全に剣の射程距離に入った。

その瞬間 身体を反応させて全身の筋肉を稼働させる。


(…………………!!!!

馬鹿な!!! あの動きは…………!!!!)


その時間は数字にして一瞬だった。

しかしエドソンの目にはその瞬間がまるでスローモーションのように映り、ファンの動きの一挙一動を完全に捉えていた。


(お兄様 行きます!!!!!)


聖騎士 抜刀術

神龍之牙(セイグリド・チザン)》!!!!!

「!!!!?」


ファンの手に握られた剣が弧を描き、巨人の拳を切りつけた。そしてその衝撃は腕、そして胸へと迸り、巨人の身体を胸から真っ二つに切り裂く。


当時のファンは知らなかった事だが、エドソンが生み出した岩の巨人は心臓部に動力源となる特殊な石を内蔵している。

そして奇しくもファンの居合はその動力源である石を切り裂いていた。


岩の巨人は動力源を失い、粉々になって瓦解する。


「……………………………………………………………!!!!!」


エドソンは一瞬の出来事に呆気に取られ、そして自分の奥の手が無惨にも敗れ去った事を理解した。


「ッ!!!」


気がつくとファンが既に剣を居合の体勢で構えていた。そして自分が窮地に立たされている事を理解した。


「………これで終わったと思うな!!」


エドソンは再び手を合わせ、残っている力全てを使って石造りの床を変形させる。そしてそれを腕に纏い、迎撃する構えを取る。


(向かってきたところを返り討ちにしてや


!!!!?)


迎え撃とうとしたその時には剣を構えたファンが鼻先に迫っていた。


(馬鹿な!!! この距離を一瞬で!!!!)

(そう。これもお兄様が教えてくれた技

膝抜き《(さざなみ)》だ!!!!)


ファンは魚人武術の技を使って距離を詰めた。

しかしエドソンにはその事を知る由も理解するための時間も無かった。


「…………終わりです。」

「!!!!!」


聖騎士(パラディン) 抜刀術



ガキィン!!!!! 「!!!!?」


ファンの腕から剣が放たれ、その衝撃でエドソンの両腕が宙に上がった。


神龍之逆鱗(セイグリド・ラース)》!!!!!

「!!!!!」


振り上げた剣を振り下ろし、エドソンの身体を袈裟斬りにした。

胸から大量の血を吹き出してうつ伏せに大の字に倒れる。


「グッ……………!」


ファンも力を使い果たし、その場に膝を付いた。息を切らしながら考えたのは聖騎士(実兄)の事だ。


(……………お兄様………………………

これで僕も少しはレインの血に見合う聖騎士(パラディン)に近づけたでしょうか……………。)


今 この瞬間からファン・レインはレインの血を継ぐ聖騎士(パラディン)としての第一歩を踏み出していた。

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