#104 Grimlock titan
止血を成功させた。
その事実が体力が残り少ないファンに重くのしかかった。
「………どうした…………!!? 今の技で万策尽きたか………!!!?
僕はまだ立っているぞ!!!!」
「……………!!!!」
エドソンは口から血を垂れ流しながらもそう叫んでファンの心を揺さぶった。
事実、この一発で終わらせるつもりで撃った騎士之盾 《擲》だ。
そしてエドソンが2度も同じ手が通じない程の実力者である事も理解していた。
自身の魔法でできることは全て使い果たしてしまった彼に残された勝利の方法は一つしかない。
(この戦いの中で騎士之盾の新しい攻撃を編み出して、それで勝つしかない!!!!)
自分で言っておきながら笑える程に雲を掴むような話だった。しかしそれでも勝つ方法はそれ一つしかない。覚悟を決めてエドソンと対峙する。
「今度はこっちから行くぞ!!!!!
《岩石傀儡》!!!!!」
「!!!!?」
エドソンが手を合わせると石造りの床が変形して巨大な岩石の塊が現れた。
そしてそれはどんどんと形を変えて頭や手足が作られていく。
気がついた時にはエドソンの背後に巨大な石造りの巨人が顕現していた。
「こいつを喰らえ!!!!」
「!!!!」
エドソンが大振りの拳を振ると岩石の巨人もそれに合わせてファンに拳を振るった。
ファンはそれを必要最低限の大きさ、そして最高の硬さの騎士之盾で迎撃する。
ガァン!!!!! 「!!!!!」
巨人の拳が障壁に激突した。
ファンの障壁とエドソンの巨人の拳の両方に亀裂が走る。
「 おりゃアッ!!!!!」 「!!!?」
ファンが障壁を押し上げ、巨人の腕が粉々に割れた。
しかしエドソンは動揺することなく次の魔法を展開し、石を巨人の腕の付け根に漂わせると、あっという間に新しい腕が巨人に作られた。
ファンはその光景に気圧されそうになるのを堪える。
「行けっ!!!」 「!!!!?」
エドソンの一喝で石の巨人が地面を蹴り飛ばして 地面と垂直となった体勢でファンに強襲した。
ファンの目にその姿は巨大な岩石が弾丸となって突き進んでくるように見えた。
(!!!! あの大きさでなんて速さだ!!!!
魔法を使う暇がない!!!!)
残された時間でファンは咄嗟に魔法無しでこの攻撃を凌ぐ作戦を出した。
向かってくる巨人の突進を身を屈めて躱し、その顎と首の付け根を掴んで身体を捻った。
「うりゃアッ!!!!!」 『!!!!?』
向かってくる速度がそのまま補助となって巨人が宙を舞って地面に激突した。
かろうじて出来た一瞬の隙をついてエドソンに攻撃しようと構えを取る。
「ッ!!!?」
背後に気配を感じた直後、岩の柱が背中を襲った。 ファンはそれを間一髪で躱す。
体勢を立て直して見てみると、巨人が自分に向かって蹴りを放っている様子が見えた。
「ウッ!!」 「!?」
エドソンが負った脇腹の傷口から一筋の血が吹き出た。
自分がかろうじて勝ち星を取ったグス・オーガンより遥かに大きい岩の巨人
それを操るには身体に大きな負担がかかるのだと結論づけた。
自分も何回も岩石の攻撃を身体に受けて満身創痍だが、エドソンの身体も限界が近い。
両者ともにあと一発でも攻撃を受ければ決着が着く状態なのだ。
「行けェッ!!!!!」
岩の巨人が体勢を直してファンに強襲してくる。その間にもエドソンの鼻や目からは血が吹きでている。
たとえ自分が倒れたとしてもラドラのために戦うという決意が見て取れた。
「グッ!!!」
かろうじて魔法の展開が間に合い、巨人の拳を障壁で受け止める。
ガァン!!!!! 「うおぉッ!!!!?」
巨人の拳が障壁の上から強引にファンを吹き飛ばした。 空中を舞う最中に体勢を立て直して壁に着地を取り、激突するのを避ける。
激突を避けたのと同時に図らずもエドソンと距離ができた。
(《撃》で攻撃する気か!!?
来るなら来い ガードしてやる!!!)
エドソンは騎士之盾 撃が来るのを警戒した。
しかし何も飛んでこない。
(……それとも接近戦で来るつもりか!!?
この巨人を突破できるものならやってみろ!!!)
ファンは地面に着地してから動きを見せない。こんな絶好の機会を逃すとは到底考えられない。
(………まさか 止めを刺す機会を伺っているのか…………!!!?)
エドソンの予感は当たっていた。
ファンはたった今 エドソンに勝つための方法を思いついたのだ。
エドソンに向かって構えを取る。
それは棒状の物を掴んでいるように見えた。
「………ま、まさか………………!!!!」
「そうだ。 見せてやる。
これが本当の聖騎士の剣だ!!!!!
騎士之盾 《聖剣》!!!!!」
「……………………!!!!?」
構えていた手が光り、障壁が変形していく。
そして出来たのは紛れもない《剣》だった。